24.「宇宙が滅びても、あなたを愛してる」

 波瀬市から高速に乗って、北へ約40分。


 今日は、カイトの車で紫市内の大型遊園地、ゆかりアミューズメントパークに遊びにきていた。もちろんリョウや真夏、優雅も一緒。フリーパスは購入済みだ。


 この遊園地、花島県一の大きさの観覧車で有名だが、他にも迫力満点のジェットコースターや夏季限定のプールなど、楽しいものが充実している。一同はエンジョイしまくっていた。


 普段は大人しそうな印象の菜々だが、実は絶叫系大好き。優雅は菜々に付き合って……いや、付き合わされて園内のジェットコースターのほとんどすべてに乗らされている。


「菜々ちゃんまだ乗るの……?」

「だってまだコンプリートしてないですもん!!あ、次はこれ乗りましょ!ここから近いですよ!」


 マップを指差しながら、菜々は楽しそうだ。そんな菜々の笑顔に、はいはい、と苦笑する優雅。

 真夏はそんなふたりの様子を隠し撮りながらニヤニヤしていた。


「君達さぁ、さっきから思ってたんだけどさぁ?側から見てたらあれだよ、恋人同s……」

「「違う!!!」」


 菜々と優雅の声が被った。全く仲がいいなぁ、と思う。

 それにしてもこのカップルには萌える……見ていて微笑ましいというか、綺麗。純粋だ。優雅が菜々のために新しいマジックを練習していることも、菜々が今日着ているワンピースは少し前に優雅に似合うと言ってもらったものだということも、真夏は知っている。中2と大学3年生の間の年の差はかなり大きいが、応援するつもりだ。


「じゃあ玲香ちゃんたちのコーヒーカップが終わったら移動しよっか」

「うんっ!」


 ちらり、とコーヒーカップの方を見やると、明らかに凄い勢いで回っているカップがひとつ。他と比べるとかなり目立っている。


「あれ、回してるの玲香ちゃんだよな……」

「カイトとリョウも一緒に乗ってるぜ」

「玲香ちゃんの手にかかれば、コーヒーカップも絶叫マシンと化すんですね!さすが玲香ちゃん、最高ですっ!」


 少しして、音楽とカップの回転がゆっくりと止まった。

 菜々たちの姿を見つけるなり、走ってくる玲香。


「あー楽しかった!!!」

「玲香ちゃん回しすぎだろ……でもあれはあれで楽しかったかも!」

「そだね!コーヒーカップの新しい乗り方を発見したというか」

「おいおいお前ら嘘だろ!?」


 カイトもリョウもすっかり玲香ペースである。真夏と優雅は耳を疑った。しかし、菜々は違った。


「めっちゃ楽しそう!!私もやりたい!」

「よしきたっ!!ちょっと私ら行ってきます!」


 ふたりで駆けていく玲香と菜々。


「本当仲良いよな……あの二人」

「チャットでも仲良いよねー」

「……なんか、もっと前から知り合ってたような気がするんだよな」

「それ、俺も思った!ついさっきリョウと玲香ちゃんともそんな話したばかりだよ」


 コーヒーカップの中から手を振る玲香と菜々に応える。

 音楽が始まった。カップが動き出す。


「もしかして、運命だったりしてね」



 運命。



 ––––運命?



 ぐるぐるぐる。廻る廻る。

 当たり前のようで、当たり前じゃない日常。

 隣には大切な人がいる。誰よりも大好きな人がいる。


 ……ねぇ、私はあなたと離れ離れになった世界を知っている。

 ずっと後悔し続けた。一方で、心の片隅ではずっと夢を見ていた。

 あなたと離れた現実が嫌で、あなたの夢を見ていた。物語を描いていた。


 きっとあなたは気づいていない。それでもいいの。

 幸せなら、それでいい。

 あなたの幸せが、私の幸せだから。


 何にも知らないふりをしながら、今日も私はあなたの隣で生きていく。



 この存在し得ない永久の世界の中で。






「宇宙が滅びても、あなたを愛してる」

「うん……、同じく」




 私、決めたんだ。

 貴女のためなら私、繰り返すから。

 貴女のためだけに私、繰り返すから。

 他の何を失ったっていい。

 何度でも、何度でも、繰り返すから、待ってて。


 あの夜の桜吹雪の中で。

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