第20話 7日目 2022年5月20日(金)  

 寝る前に薬を飲むとどうも喉に閊え、仕方なく水を飲んだり吐いたりして喉の閊えを直している間に薬の大部分を吐き出してしまっているような気がする。そこで昨日の夜分の薬と就寝前の薬は水に溶かして腸瘻から体内に注入した。それが良かったのか喉の閊えも体の痛みも少なく、昨晩は10時半就寝で1時半に一度目が覚めたが、4時半まで眠れた。


 体温は35.9°血圧は132/64脈拍は64。血圧は高めであるがそのほかは正常である。

 「ごはんですよ」でご飯を一杯、それに昨日の残りのナスと茗荷の味噌汁を一杯頂く。海藻は食物繊維が多いから一応要注意の食物なのだが、この程度なら問題ないはず。海苔の佃煮はいろいろあるけれどやっぱり「ごはんですよ」が一番おいしく感じるのはなんでだろう。慣れという物であろうか?この慣れというのは意外に手強い物で、文学でも音楽でも普段見聞きしている物の方が心地よく感じてしまう。


 平日は連れ合いが出勤してから腸瘻を始めるのでどうしても開始時間が9時前後になる。これだとお昼過ぎまでかかってしまうので、シャワーもその間浴びれないしいろいろと不便であり、見直す必要があるかもしれない。

 腸瘻の間グレングールドのベートーベンのコンチェルトを聴いてみる。グールドについては「ピアニストに恋をして」というエッセイを書き始め、その途中で筆が止まった原因のピアニストでとにかくいろいろな意味で厄介なピアニストである。一番好きなピアニストと聞かれたらそうではないし、一番上手なピアニストかと問われればそうでもないし、でも一番気になるピアニストなのである。そして私の持っているピアノ演奏のCDの中で一番枚数が多いのはこの人で、それもダントツに多い。

 まあ、その中でさほど癖の強くない(はずの)ベートーベンの協奏曲の1番と4番を聞き流すようにして聞いてみる。1番はゴルシュマンという指揮者がコロンビア交響楽団を指揮したもので、あまり聞き慣れない指揮者のものであるが、ピアノ演奏を含めてさらさらとした耳に心地よい演奏である。ベートーベンもこの協奏曲あたりではモーツアルトやその時代の影響を強く受けていて曲そのものの個性も主張も強くはない。

 続く4番はバーンスタイン指揮のニューヨークフィル。美しい音色を聴きながらふと、ん?と思う。カデンツァ・・・長くない?誰のカデンツァ?CDケースを持ってきて見て調べるとベートーベンのカデンツァとなっている。いや、そうか?こう考えさせるのがグールドの曲者たる所以ゆえんであって一挙にもやもやしてしまうのだ。

 概してグールドはテンポの取り方で聴衆を惑わせる。とりわけ聞き慣れているのより遅いテンポのことが多い。だがこのカデンツァはテンポが遅いというよりもなんだか長く感じる。いや・・・なぜ?と思っているうちに第2楽章が始まり疑問は疑問のまま残ってしまう。あとで調べると第1楽章に19'16"かけているグールドは明らかに遅い。ほかのピアニストは17分台が多い。だがそれが何に起因しているのかは聞き比べないと分からない。ああ・・・めんどくせい。となってしまうので、グールドに関してはなかなか筆も進まないのである。

*The Glenn Gould Edition Beethoven The 5 Piano Concertos by Sony Classical

Concerto for Piano and Orchestra No.1 C major, Op.15

Columbia Symphony Orchestra /Vladimir Golschmann

Concerto for Piano and Orchestra No.4 G major, Op.58

New York Philharmonic /Leonard Bernstein

SM3K 52 632より

昼は冷たいきつねうどん。冷やし中華は「中華麺」だからラーメンと一緒で食べられないのが残念だけど、冷製うどんもいいものだ。

散策は西小山まで足を延ばしてみる。最初は喫茶店に寄るつもりだったが、なんだか喉に違和感が出たのでやめにしておく。また戻したりして店員から注意されるのも癪だ。

 散歩と言えば、以前から楽天チェックというアプリを使っている。色々な施設に行ってチェックインをするとポイントがもらえるというものだがその中に公園でチェックインができるというものがある。これは20件チェックインした挙句、くじを引いて(最高100ポイント出る時もあるらしいが)1ポイントか下手すると0ポイントという代物である。散歩がてらにチェックインをして遊んでいるが、1ポイント貰っても公園一件訪問して一つ当たり5銭というとんでもない非効率な「ポイ活」である。しかし非効率ではあるが散歩を促進させてくれるという意味では有難いアプリであって、とりわけ恵比寿周辺や西小山周辺は公園が集積していて効率がいい。

 ただ、くじを引いて時折0ポイント(外れ)が出るとちょっと心が折れる。100ポイントは望まないのでせめて外れはなくしていただけないかとしみじみ思っている。16件ほど溜まっていたので西小山へ行く途中で公園を4か所寄ってくじを引いてみた。1ポイントである。一軒当たり5銭・・・。

 うんポイント獲得が目的じゃないんだよなぁ。(ちなみにこのサービスは2022年11月現在では停止されている)


 連れ合いが今日は退職者の慰安会で遅くなるというので夕食は自分の分だけ作ればいい。以前は良くそうした場合はパスタにしていたので今夜もスパゲッティにしてみる。ニンニクと唐辛子をたっぷり目のオリーブオイルで低温で炒めて味を引き出しそこに塩を振りベーコンとエリンギとナスを入れる。ナスとキノコは大量に油を吸うので上からも少しオリーブオイルを足し、火が通ったらトマトソース、トマトケチャップ、ウスターソースで味を調える、それに別にレンジで2分間温めたブロッコリーを付け合わせ一丁上がりである。

 だが三分の一程度食したところで喉に違和感を覚える。学んだことはそうした違和感を覚えたら、それ以上食事を続けるのを諦めること、であった。閊えているところに閊えるもとを送り込んでも何の解決にもならないばかりか悪化を招くばかりである。半分以上残っているが潔く諦め、タッパーに入れて冷蔵庫にしまう。栄養は十分足りているだろうし、空腹感もさほどない。

 テレビをつけてみる。最近やたらザッピングをするようになったのは私が歳をとったせいなのか、番組がつまらないためなのか、その両方なのか。昔はテレビに食い入るように見入った時期もあったような気がするが、今は全くそんなことはない。適当に作られたものを適当に観ている、テレビといつの間にかそんな関係になってしまったような気がする。なんだか互いに飽きた夫婦みたいだ。

 それでも最初から最後まで見る番組も数少ないけどあるにはある。例えばNHKの「ダーウィンが来た」とか日本テレビの「所さんの目がテン」とか。後者の「里山プロジェクト」は放映された最初の時から見ていてきわめて興味深いと思っている。時折24時間なんちゃらで放映されない週はどうしてこんないい番組を邪魔するのか、と編成に文句を言いたくなる。

 だが、ドラマはがっかりするものが多い。全般的にドラマがつまらなくなっているのは原作がつまらないからであって、奇をてらったり、やたらスピードを重視したり、若者のテレビ離れを食い止めようとして却って加速しているような気がする。見ないやつはみないで構わん、というくらいどっしりと腰を落ち着けた番組作りができないものかと感じる。


歩数は12,782歩。西小山まで歩くとだいぶ稼げる。夜の体温は35.9℃、血圧は106/66、脈は86であった。

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