第17話  4日目 2022年5月17日(火)

 昨日の就寝時間は11時。2時半に一度目覚め、トイレに行きついでに口を湿らせたあと、起きたのは5時ちょうど。

 睡眠時間は6時間で、まあ手術前とほぼ変わらない。水の代わりにキリンの出している「世界のキッチンから」シリーズのソルティライチを一杯頂く。この商品はずいぶん前に出たもので、「世界のキッチンから」というシリーズはその後もいくつかの商品を出したが残っているのは最初の頃に出たこのソルティライチくらいではないだろうか。この商品が出た時比較的早い段階で買ったがとてつもなく美味しいと思った。今ではそれほどの感動はないが、やはりそれなりに美味しい。暑い時の水分補給にはもってこいである。

 娘が一時、カンボジアのクラチエという街に住んでいたことがあって、そこに訪ねて行った時に路上の市場でライチを買って食べたものだけど、ライチと言うのは美味しい果物だ。ブドウのような食感だあるが甘みの佇まいがぶどうとは全く違う。懐かしいなぁ。

 この飲み物はライチそのもののおいしさそのものには追い付かないけど、うまくそのおいしさを伝えてくれる逸品だと思う。長く残っていることに感謝するし、こういう製品は長く残ってほしいものだ。

 体温は36.5、血圧120/75脈拍72。


 朝食は昨日の残り物の味噌汁と予約で炊いた半合のごはんだが、あまり食欲がないので半分ずつにしておく。残りは三時間ほどたってから頂いた。

 昨日はほぼ終日雨だったが、今日の予報は曇り、ということで昼頃に買い物に出ようとして、玄関から外を覗くとしっかりと雨が降っていた。仕方なく傘をさして出かける。

 買い物の最中どこかふらふらとする感じがして、低血糖かと思って買い物ついでにブドウとチョコ菓子を買って家に戻って食べる。

 家に帰って少し落ち着いた感じがしたが、念のため血圧を測ると98/54。どうやら低血糖と言うより低血圧の方だったらしい。手術後、血圧がどうも不安定で最高が140を超えることもあれば110の時もあった。今日は格別に低い。その上体温も35.3°と低い。なんだかギリギリ生きているような数値である。

 仕方なく暫く家の中で過ごすことに決め、カラヤンの指揮した「ドン・キホーテ」と「ティルオイゲンシュピーゲルの悪戯」を聞く。ベルリンとの1986年録音盤だからこれがカラヤンのこの曲に関する最後の録音であろうか。カラヤンは毀誉褒貶の激しい指揮者であるが少なくともリヒャルトシュトラウスの曲に関しては右に出る者はいない。ウィーンフィルと一緒に録音した「ツァラトゥストラはかく語り」を初めて聞いた時からその意見は一つも変わらない。何というか・・・曲想と指揮のスタイルがこれほどマッチする組み合わせと言うのも少ない。ただ、とにかくカラヤンは同じ曲を何度も演奏し過ぎていて、その理由が時折不明で単に金儲けのためではないか、と思われる理由の一つであろう。この曲も13年ほど前に演奏されたものがあってそれが最高の演奏だとする人も少なくないようで、「再演奏」がどういう意図でなされたのかやはりしっかりと説明された方がいいような気がした。いまさら言っても仕方ないけど。ベートーベンの交響曲なんて数限りなく録音しているわけでその中で僕が最も好きなのは比較的初期にウィーンフィルと録音した7番なんだけど少なくともその後三回は録音し直している記憶があってそれがウィーンフィルとの録音を凌駕しているという印象がない。

 そう言うわけでモーツアルトとか、ベートーベンに関してはまあ、色々な意見もあるだろうがリヒャルトシュトラウスに関してはカラヤンの演奏に否定的な意見を言われると逆にそのコメントを発した人に対して懐疑的になってしまう。とにもかくにも全ての演奏に聴く価値がある。

 なんでもかんでもカラヤンが嫌いというのは解せない話だ。とりわけ「ティルオイゲンシュピーゲルの悪戯」は曲自体、お気に入りなので愛聴している。的確で丁寧な形の整った緻密な演奏はリヒャルトシュトラウスに欠かせないものでベルリンフィルの実力の凄さが良く分かる。なかなかほかのオーケストラではこうはいかないし、他の指揮者ではこの緻密さはでない。第一級の演奏であることは疑いない。ベームやケンペ、ケンペンなどの演奏も良いがカラヤンがあればまあだいたいリヒャルトシュトラウスの曲に関しては充分である。

*Richard Strauss Don Quixote op.35 / Till Eulenspigeles lustige Streich op.28

Berliner Philharmoniker Herbert von Karajan Polydor International GmbH

419 599-2


 雨は三時近くになっても止まない。今日は久しぶりに武蔵小山まで足を延ばそうかと考えていたが体調も今一つだし、雨も降っているしと思い悩む。

 四時頃になって漸く雨脚が途絶えた。じゃあ、やはり少し運動してみようかと決めた。武蔵小山は名前の通り山なので目黒川の近くからはそこそこ上り坂になる。病後の身には少しきついほどの坂で上っている坂のもう一つ先の坂はかむろ坂といって、名前に由来のある坂である。

 歌舞伎にもなった権八・小紫の恋愛で自死した小紫を迎えに行ったかむろが途中で男に乱暴されてこれも自死する、そのかむろを偲んで地名がつけられたそうだ。そもそも権八のような男に惚れ、自分を慕うかむろまで自死させた小紫は罪深い女のように思えるがここらへんの言い伝えには詳しくないのであまり迂闊なことは言えない。ともかくかむろが可哀そうだという事は確かだ。

 坂を上り終え、桐ケ谷通りの信号を渡る。この通りは道幅が狭く歩道も狭いうえに車を出すために傾斜を施したる部分が多く、その狭い道を自転車なども通ろうとするので危ない道である。時折歩道に車が乗りあげて駐車していたりするのでなるべく避けて、地下に潜った東急目黒線の上に作られた緑道を使って武蔵小山の方へと進む。


 商店街に入る前にマスクをつける。店や喫茶店に入って人と話す可能性があるからである。

 このマスクについてはいろいろと言いたいことがある。個人的にはCovit19の流行当初から外出しても歩いてるときはノーマスク・公共交通機関や会話を前提とした屋内やレストランではマスク着用という方針を貫いてきた。そもそも当初はマスク自体が世の中に払底していた時期もあるのだが、わずかなマスクの時もいくらでも買える今となっても同じ姿勢である。夏になるたびに医師会や厚労省の意見がその方針に近づいてくれるのは熱中症の責任を取りたくないだけのことだろうけど、まあ、その対策で問題ないな、と個人的には割り切っている。逆に連れ合いがなんらかも関係で持ち込んでしまったら逆にほぼ予防の手段はないな、とも割り切っている。

 そもそもマスク信者もマスク否定論者もどういう根拠でそれを主張しているのか僕にはよく分からない。普通に考えれば、どちらも正しいとは思えない。

 ウィルスの感染対策というのはその経路と感染メカニズムのおおもとが明確になってこそ対策の是非が確定するのに経路もメカニズムもさっぱり解明された感じがない。まあある程度解明はされたのだろうが何か不都合な事実があるのかもしれない。(それはそうだよね。訳も分からぬ状態でロックアウトやらマスクの増産やらやらかしちまった以上、本当のことが分かっても口を閉ざさざるを得ないだろう)

 しかし最初のうちはあらゆる可能性を考え対策を講じるのは良しとして3年たった今でも手洗い・マスクの励行などとだけ言っていて良いものだろうか?そこに怠慢はないのか?

 例えば、感染経路は①エアロゾル②飛沫③直接の三つ、ウィルスのメカニズムは一定量の口腔・耳鼻咽頭への曝露。①に関してはマスクの有無にかかわらず、一定量の曝露を避けるために会話は一言二言で終えること②はマスクが一定の効果を持つがなるべく距離をとって飛沫を避けること③はキスなどを避けること

 みたいな感染経路やメカニズムがはっきりしてこそ、どういう行動が正しいのか個人としても分かる。いまだにマスクをしていないとガンを飛ばしてくる人(これは意外と女性が多い)はいるが、いつまでもマスクって言ってるんじゃねぇよ、とガンを飛ばし返すし、一方で裁判にかけられても裁判所でマスクをしようとしない人間には馬鹿が拗れているなぁとしか思えない。

 マスクなどというものがこれほど脚光を浴びる国はそれほどないのではないか?いずれにしろマスクをめぐる議論はあまりにも未成熟で幼稚である。

それにしてもCovit19において日本はその問題解決にほとんど寄与していないというのが残念だ。結局、ワクチンも投与する薬も開発が後手をとっていたし、ウィルスそのものの研究に関してもリードをとっているとは言い難い。

 残念なのは理研で、なんだか、富岳を使って飛沫の経路などの研究をしていたが、研究テーマが間違っているのではないか?力学系にスーパーコンピューターが寄与するのは理解できるが、我々が期待しているのはウィルスそのものの分析や変異のプロセスの予測や、創薬や、そうしたものに使ってこそ価値があるので、飛沫の経路なんてあまり意味のない研究をしないでほしい。最近、どうも理研はやっていることがおかしいような気がしている。しっかりとしてほしいものだ。


 夜は豚肉の生姜焼き。生姜を擦りおろし、少しだけニンニクを加えるのがこつ。


 今日歩いた歩数は10152歩。このくらいがちょうどいい体調である。夜の体温は36.3℃、血圧は124/73、脈拍は77であった。


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