殺され屋
ひなみ おおがい
第1章 とある浮気者への制裁
第1話
私の仕事
私は殺され屋。いつも通りコーヒーを飲みながらタワーマンションから外の景色を見てくつろいでいた。そこに1本の電話がかかってきた。「ボス、依頼です。すぐにこちらに来てください。」部下からそう伝えられた私はすぐに用意して事務所に向かった。
到着すると、そこには一人の泣いている女性がいた。今回の依頼者だ。「辛いのは承知でお願いしますが、今回のターゲットとその人とあなたの関係そして動機を教えていただけますか?」私は彼女に優しく尋ねた。女性は涙を袖でぬぐい話し始めた。「今回のターゲットは私の元彼です。私は彼を愛していました。それなのに彼は…」涙を堪えるのに必死だったのだろう、しばらく沈黙が続いた。私だって辛い思いをさせたくはない。だが、私が先程尋ねた内容だけはこちらも把握しておく必要がある。悲劇を繰り返さないためにも。涙を堪えられず静かに泣いていた。「ゆっくりでいいですよ。」私はそう声をかけると、彼女は「すみません。」と言って再び涙を袖でぬぐい頬を叩き気合を入れ直していた。そんな姿を見て私は少し心が痛くなった。「私、見ちゃったんです。彼が他の女性と歩いているところを。」彼女はそう言った。「証拠はそれだけですか?」私が質問すると、彼女は「それだけじゃありません。彼に内緒で彼のスマホを見てみると女性とのやりとりがあって、その女性が誰か尋ねてみると『もったいないことしたね、俺その子が本気で好きなんだよね。もし、気づかなかったら、ずっと一緒にいてあげたのに。もうおしまいだね。』そう言って私の元から去って行きました。」
(これは完全に黒だな)話を聞いてそう思った私は部下に首でそう伝えた。「300万円持ってきました。彼との結婚を考えて貯めていたお金です。これで彼に復讐してください。依頼はMAXでお願いします。」少し震えた声で彼女は言った。彼女の発言を聞いて、私は「わかりました。少し待っていてください。あなたを傷つけた彼を私たちが懲らしめてやりますから。」と伝えた。私の発言に安心したのか彼女は落ち着いた様子で「ありがとうございます。」と私たちに微笑んだ。その顔は先程まで泣いていたとは思えないほど澄んだ顔だった。
彼女が去っていったのを見て私は部下に「今回の前金、かなりの額だな。これならだいぶ痛めつけられそうだ。とりあえず、情報屋に話をつけておいてくれ。」と言い残し帰ることにした。
前金というのは依頼をこなすために使うお金のことである。依頼者が払うお金が高ければ高いほどできることは増え、より大きなことができる。私たちはもらったお金を使って、できる限りターゲットを痛めつけられるようにしている。それが依頼者の望みだからだ。もちろん、依頼者が望めばやりすぎないように手を抜く。(今までそんな依頼をする人はいなかったが。)今回の依頼はMAX、つまりできる限り痛めつけて欲しいということだ。
帰り道、私は(待っていろよ愚か者。地獄でせいぜい自分のやったことの罪深さを考えるんだな。)そう意気込みながら、指をポキポキと鳴らした。
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