第34話
二人で洞窟に入り、座る。
みまは泣いていた。
正也はみまを優しく抱きしめた。
みまは正也に抱かれながらもずっと泣いていた。
目覚めた。
いつの間に眠っていたのだろう。
正也が目覚めた時、みまはもう起きていた。
目をはらしたままで。
二人、なにも言わない。
そこには重い事実だけがある。
はるみが化け物に喰われてしまったのだ。
正也が座っていると、みまがすぐ横に座った。
正也がみまの肩を抱くと、みまが頭を正也にゆだねた。
そのまま動かない。
時折、みまの目から涙が流れるのが見える。
二人は動くこともなく、口を開くこともなかった。
そしてそのうちにあたりが暗くなってきた。
二人して横になる。
今日も朝がやって来た。
正也が起きると、みまが先に起きていた。
やはりなにも語らない。
そして動かない。
その日は二人、向かい合って過ごした
。一言も口を開かないままに。
そして夜になる。
その後、数日間、二人で洞窟で過ごした。
なにもせず、何も語らないままに。
そして最初に口を開いたのはみまだった。
「お寺に行って、はるみさんをともらってもらいましょう」
「そうだな。それがいいな」
正也が答え、二人で寺に向かう。
はるみはどうしてもともらって欲しい人間だ。
異論はない。
なぜ今で思いつかなかったのか。
それだけはるみの死は、衝撃も悲しみも大きかったのだろう。
二人洞窟を出て歩いた。
寺について呼ぶと、住職が出てきた。
住職は二人を見た。
そしてその顔を。
住職が何も言わないでいると、みまが言った。
「はるみさんが化け物に喰われてしまいまして。どうかともらってやってください」
「そうですか。二人しかいないし、その表情。もしやと思ったのですが。まことに悲しいことです。わかりました。はるみさんをともらってやりましょう。私にできることと言えば、それくらいしかありませんから」
「よろしくお願いします」
「わかりました」
頭を下げ、二人で寺を後にする。
そして洞窟に帰る。
そのままなにもしない。
やがて夜が来た。
朝。
起きる。
二人。
静寂。
それ以外はなにもない。
その日は洞窟から出ることはなかった。
再び朝が来る。
目覚める。
二人の間に少しの会話があったが、それはあいさつに毛の生えた程度のもので終わった。
二人の会話は続かないし、無理に続けようと言う気もない。
そして夜。
眠りにつく時間だ。
また朝。
昨日よりは少しはしゃべった。
沈黙の間にたまにあるだけの、重く短い会話を数回。
それだけで夜になった。
起きた時、正也は思った。
もう何日洞窟にこもっているだろうか。
外は危険だ。
それは間違いない。
しかしここにこもっていても、事態はまるで進展しない。
それにこの洞窟に化け物が来ないと言う保証はないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます