第24話
気合を入れなおしたからと言って、結果が出るとは限らない。
暗くなるまで探したのだが、なに一つ見つからなかった。
そもそも、一体なにをさがせばいいのかもわからないのだから。
帰る。
洞窟。
夜。
いつもの無言。
いつもの疲れ。
肉艇的なものはとうぜんだが、それ以上に精神的のものの方が強かった。
そろそろ寝ようかと考えていると、はるみが言った。
「もう一度、村の人に聞いてみたら、どうかしら。お寺のお坊さんのように、まともに話ができる人もいるかもしれないわ」
正也もみまも同意はした。
ただいつものように消極的な同意だった。
村人と全員話したとしても、なにか得るものがあるとはとても思えない。
可能性はゼロではないのだろうが、限りなくゼロに近いだろう。
しかし他にやるべきことが思いつかない。
可能性がゼロではないのなら、
それに賭けるしかないのだろう。
そういった希望の極めて薄い同意だった。
「それじゃあ明日やることは決まったわね。もう寝ましょうか」
はるみがそう言い、横になる。
正也とみまも横になった。
横になったからと言ってすぐに眠れるわけではない。
しかし今は休むこと以外することがないのだ。
そして正也はいつの間にか眠りについた。
その夜、正也は夢を見た。
真っ暗な空間でひたすらもがいている夢だ。
夢の中で正也は思った。
これはまるで今の現状じゃないのか。
どこかで自分は夢を見ていると意識をしていたのだ。
その夢は随分長く続いたと感じられたが、やがて終わった。
また朝がやってきた。
そして目覚める。
朝は毎日必ずやってくる。
もしかしたら、この村で唯一確実なものなのかもしれない。
三人が別々に目覚めた。
早く起きた者が誰かを起こすと言うことはしない。
最後に目覚めたのはみまだった。
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
いつものあいさつ。
いつもの声。
今日は村人に話を聞きに行く予定だ。
しかしいま一つ気が乗らない。
動く気になれない。
ただじっと座っていると、
そのうちにはるみが言った。
「今日は村人に話を聞くんだったわね。それじゃあそろそろ行きましょうか」
すっと立って歩き出す。
二人はその後をついて行った。
村に着いた。
一番近くの民家から始める。
「ごめんください」
出てきたのは初老の男性だった。
まるで生きた人間に見える幽霊だ。
この村を作り上げた四十八人の亡霊の一人。
はるみが聞く。
「すみません。この村から出たいんですけど、いったいどうしたらいいんですか?」
「この村から出たいんですか。この道は一本道だから、東か西へ行けば出られますよ」
相変わらず感情のない能面の顔で男が言った。
「いえでも、どちらに行っても一瞬で村に戻されるんですが」
「もし車がないのなら、一日一本バスが来ますよ。それに乗れば登りでも下りでも、村から出られますよ」
「バスですか。ここに来てからバスなんて見たことがないんですが」
「ここから少し歩けば、二体のお地蔵さんが並んでいるところがあります。そこのバス停の時刻表があるはずですが」
二体の地蔵。
いつも車が戻されるところだ。
しかし何度もそこに行く羽目になっているが、バス停の時刻表など、見たことがない。
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