異界物語 短編集

リアス

神のロボット

「おい、クソガキ!まちやがれ!」

「チッ裏路地に逃げやがった。次こそはとっ捕まえて警察に突き出してやる!」


僕は影で低い炭鉱夫達の声にビクビクしながら必死に走って、孤児院フェアリーホームに帰った


「こら!ゲイトまた人のご飯を盗んできたのね!それを神がお許しになると思ってるの!?」

「…じゃあさマザー、神の前では皆平等で同じような生活が出来るはずなのに、この町で1番神に祈ってる俺達は何でこんな苦しい思いをしているの?

だから俺は平等にする為に盗んだんだよ。」


マザーは答えられないようだ。言葉に詰まって何が言いたげだが言ってこない。


「マザー達フェアリーホームのみんなは何もしなくていい。俺だけが手を汚せばいいんだよ。」

「ちょっと、待ちなさい!ゲイト!」


俺はパンを置いて扉を開けて出ていく。

俺は目の前にある巨大な石炭山を見上げた。

壁の側面には小屋がいくつも立っており周りからは煙が出過ぎて空は黒く濁ってしまっている。ガシャンガシャンと機械が軋む音もする。オイル臭いし最悪だ。


しかしそんな暗い町のてっぺんに大きな屋敷がある。金と宝石で装飾された、豪邸に住むのはこの炭鉱の持ち主の一族だ。俺達の苦労も知らないでいいご身分だ。文字通り雲の上の存在だから神の一族と呼ばれている。


俺が裏路地を歩いているといつもは置いていない何かを見つけた。俺はそれを拾い上げた時に気づいた。


「これは?まさかロボットじゃ無いか!神の一族の持っている機械文明の最高傑作。何でこんな所に...」

すると急にロボットが動き出した。


「ガガガガ ピシャージジジ、ギガッ生体反応を確認。新しく持ち主を登録します。」


すると緑の光が出てきて、俺の顔を包む。

「ピッ持ち主を登録完了しました。」

「俺これの持ち主になったのか。ロボットって売れば孤児院なら数年は豊かに暮らせるぐらいの金が入ってくるはずだ。それなら残念だけど売るしかないか...」


すると急に叫び声が聞こえた

「おい!いたぞ!」

「うわっまたきたのか!」


俺は必死に逃げる。しかしやつの方が早く

奴に捕まってしまう。


「へへへ、今日こそ金を立て替えて貰うぞ。

ん?おいガキこれってまさかロボットか!丁度良い!これさえあるなら十分だ。頂いてくぞっと」


人型のロボットは首を掴まれて持っていかれる。


「まて!俺が盗んだ額よりそっちが多すぎるぞ!」

「へっ、警察に突き出さ無いだけありがたく思うんだな。」


そのまま奴にロボットを持って行かれてしまった。

「くそっ、あれさえあればみんなを、みんなを楽させられたのに...」


自分の犯した罪のせいでと後悔した。

俺はそのままフェアリーホームに帰った。


「もう!ほんとどこほっつき回ってたの!」


彼女の言葉が心に刺さる。

俺はマザーの服の裾をぎゅっと握る。


「ごめんっ、マザー俺もうちょっとでみんなをっ幸せに出来たのに、俺のせいでっ。」


そう言う俺の意味が分からないマザーは俺に何かあったのを感じ取ってくれてぎゅっと抱きしめてくれる。


「何があったのか、詳しく教えてくれる?」

「うんっ、さっきねロボットを見つけたんだよ。」

「えっ、ロボット?何でこの辺りにそんなのが」

「分かんない。でもさっきパン盗んできた所の奴に持ってかれちゃって。」

「そうだったのね。でも大丈夫。みんなは

今のままでも幸せよ。そうよね?」

そう聞くと周りのみんなはうんと頷いてくれた。


それでも自分のせいで運を逃してしまった事に罪悪感を感じていた。


一方空の上


「あの孤児院、お金が無さすぎてせっかく置いておいたロボットを料金の立て替えに持って行かれてるわね。」

「あの子も盗むのは悪いがロボットを自分の為ではなくみんなの為に使おうとしているのか。自己を犠牲にしてまでみんなを助ける心はあっぱれじゃな。」

「さて、ロボットは今から遠隔機能に切り替えて少年の所に戻るとしますか。」


そう言った彼らは遠隔操作に切り替えた。


これが彼らの遊びなのだ。ロボットを拾う人間を見て遊ぶ。これが上流階級の娯楽だった。


「いや〜ロボットを売りさえすれば店なんてとうぶんはしなくていいな。とりあえずここに置いとくか。」


そうして机の上にロボットを彼は起きっぱなしにした。

しかしロボットは動き出し、孤児院の方へと戻っていく。

「あっ!ロボットだ!帰ってきた!」

少年の喜ぶ声が聞こえる。カメラからは満面の笑みを浮かべているのが分かる。、


「良かったなぁ。この子も、」

「召使い達、この孤児院に寄付を、後あのパン屋の店主にも少し分けてあげなさい。」

「「了解致しました。」」


「そしてその後、神の一族から多額の寄付金を受け取った孤児院は豊かになり、そのロボットを見つけた少年のゲイトは、

後に石炭を燃やしてエネルギーを生み出し、その煙を酸素と炭素に分離する技術を発明し私達は永久的にエネルギーを生み出せるようになったのです。

それが今から150年前のフェアリーホームのお話です。」

「ねぇマザーあそこにあるのがゲイトって人のお墓なの?」

「そうです。あそこにある写真がその時に撮られたと言われている写真です。」


そこには笑いながらロボットを持っている

少年を囲って沢山の子ども達が笑っていた。


今でも彼の墓には古いロボットがいるそうです。


書いて欲しい話があれば書きますので、是非言ってくれると嬉しいです。


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