*Ⅰ*
憐憫だと? 全ては終わりだ。
しかし、白と黒と……
いや、そんなことがあるだろうか?
そんな筈は、よもやあるまい。
出自? 本質? 血統? 証徴? 忌まわしい……
やはり、
そんなことが……
そもそも、この人生全てにおいて、騙され続けてきたのではないか?
まさか……
思えば、全ては先例の定めのままに、先例に無くば、スルナガンやタクユバン、その他の神事において、天壇の神官を通じて齎される託宣のままに――
これでは、
やはり、騙されているのではなかろうか?
ああ、騙されていたとすれば、このまま死ぬのは口惜しい。
何とか、
いやいや、ここから人に気付かれることなくどうやって外に出られる?
出られる筈はない。
いや、しかし……
このまま、何もせずに、時が来れば自らを処すなど莫迦げている。
そうだ……
今だ! 急げ!
――あの影は……
――ああ、やはり駄目なのか?
たしかに九人いる。
長い耳――
迂闊だった。何もかもが遅かった。
あまりにも迂闊過ぎた。何ということだろう……
騙されたまま
いや、諦めては駄目だ。死力を尽くさなければ……
そうだ! 裏に回ってムルグァナクの茂みに身を隠そう……
まごまごしてはいられない。
影がだんだんと近付いてくる……
<続>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます