蒸発する日本人
あしかや 与太郎
第1話
午前十時。鳴瀬は目が覚めた。布団から、だるそうに、上半身を起こす。カーテンの隙間から、陽が差し込んできた。
「眩しい……」
立ち上がり、鳴瀬はカーテンを閉めた。部屋の電気をつける。
テーブルに置いてある、スマホを確認。ロック画面にて、通知が来ていた。
十個ほどの新作ゲームが、すでにダウンロードされている。
ニュースアプリから二つほど、記事が投稿されていた。
「東京二十三区、すべての街灯に、監視カメラを設置。国民を守る為との説明」
あと、お店で使える百円引きのクーポンが数枚。
鳴瀬は、大きなあくびをした。
「後、一分か……」
鳴瀬は大学から支給されたタブレットを、100均で購入したスタンドに立てる。
アプリを開いた。指紋認証で、ログインをする。充電器を差し込んだ。
「あと一分で、講義が始まります」
画面いっぱいに、カウントダウンがされていく。
鳴瀬はあくびをしながら、冷蔵庫の中を確認。昨日、コンビニで買ったサンドイッチが入っていた。
「では、講義を始めます」
タブレットから、教授の声が聞こえた。鳴瀬は台所に行き、コップの中にコーンスープの素を入れ、沸かしておいた、ケトルのお湯を、入れていく。
「3×4の値は、このように、12になります」
スマホの着信音が鳴り出す。鳴瀬はびっくりして、画面を確認した。
そこには、重吾からのLINEだった。
どうした? こんなに朝早く
今、何している?
講義中
「次に、三角形の面積を求める式ですが……」
鳴瀬は、タブレットの音量を消していく。
上げる動画を確認してほしくてね。BANされたくないし。オレンジ色は警告だっけ?それになると、動画は見れるけれど、収益化でされないんだろ? 心配でさ
そう
コーンスープを飲む。教授は、ホワイトボードに数字を書いている。
今から見るよ。で、後でLINEする
ありがとう。鳴瀬の動画は大丈夫か?
彼女に頼んである
いいなぁ。俺もアプリで彼女見つけよ
今日の午後九時に、当時に動画を上げる予定でOK?
OK。夜、どこか飲みに行こう
今日、午後から、あいつと遊園地に行くんだ
ま、そうなるか。で、この話をしたかった
今更かよ
鳴瀬は画面越しに笑った。
写真だけど、げんぞうしてもらった
げんぞう?
そう、フィルムで撮った写真は、現像しなくちゃいけないんだって。知り合いに頼んでやってもらった。一枚二千円
結構な出費だね
郵便で送ったから。数日で届くよ
レトロだね。どこに届くの?
置き配もいいけど、直接届くようにしておいたわ
わかった。楽しみに待っている
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