第7章魔物退治
第113話 クー将軍
「女王様、お怒りは分かりますが…………
その怒りは今夜、私の体に向けていただければ」
「ほほう、良いだろう。
手加減せぬぞ、徹底して責め苛んでくれる」
「女王様、望むところでございます」
「ふふふ、死なずのザムドに死んだ方が良かった、と思わせてやろう」
…………まぁそんな訳でフェルガさんの怒りは他所へと向かった。良く分からないがとりあえず、ホッポ・ザムド所長に感謝をしたい。
とゆーことでなんだか色々あったのだが。
エメルさんとコンラさんが率いて来た5千人の兵士は鉱山に訪れた。
仮の宿舎は……困った時の妖精さん頼み。
毛むくじゃら妖精さんになんとかしてもらった。今回は5階建ての建物。
「ぐるぐるぐぐぐるるるるるる」【本来木製が好きなのだが……強度のためやむをえまい。イズモ様、多少金属を貰えるか】
「えーと、妖精は鉄がニガテなんだっけ。
んじゃ銅がいいね」
「ぐっぐるっぐるるるるるるるるぐるぐるーるる」【なんと、これは
理想の妖精銅、オリハルコン。
以前に聞いた事のある名称。俺は大量の金属鉱石を妖精のマントにしまっていた。
そこは常若の国につながっていると言う。妖精の国のプネウマにずっとさらされていた銅の鉱石は
丈夫で加工しやすいのにも関わらず頑丈なフシギアイテム。
「えっ? 俺らが隊長になるんですか?
やってもええですけど……兵士の指揮なんてした経験ありまへんよ」
「ほっほう、俺の好き勝手に命令下してええんやろな。
生かすも殺すも自由やな」
「ローフさん、殺さない程度にお願いします」
フェルディアッドさんとローフさん。この二人の
俺とクーがいない間の留守番を頼んでいて、そのままスリーブドナードの魔物を倒してもらっていた。
「ってゆーか、俺のこと忘れてたやろ?」
「帰って来たってのに、挨拶も来なかったやんか」
「もちろん、覚えていたし、土産も持って来たんだが、ばたばたと忙しくて」
二人にも兵を預けた。
それはフォロー程度の別動隊で、本隊はこちら。
「皆さん。クー・クラインです。
わたしが若い女性なので驚いた方も多いかと思う。
まずはこれを見て欲しい」
兵士たちは一瞬静まり返った。それもその筈、壇上に現れた若い女性、それもとびっきりの美少女が上半身の服を脱いだのである。
残念ながら女性は胸部に白い布を巻いていた。女性が後ろを向いて、背中が見える。
「ありゃぁ……なんだ?」
「
「だけど、力強い」
「力強くて美しい」
「見てるだけで、力が湧いてくるみたいだ…………」
「まさか、アレが」
「
壇上の女性が衣服を整えて、背中を食い入るように見ていた男たちはハっとする。
「見ての通り
スァルタム・クラインにも認めてもらっている。
だから、これから行う魔物との戦いにおいては全幅の信頼を置いてもらって構わない。
ただ…………自分は若いし、皆さんに指示を出すのには慣れていない。
正直言うと、部下に命令した経験じたいほとんど無いんだ。
だから、そこは迷惑かけるかもしれない。
気になる点があればリーダー格の方は注意して欲しい」
横に別の男が現れる。コンラである。この軍勢の副将代理としてすでに全員に顔を覚えられている。
「ようっ、こいつ俺の母が育てた、兄弟同然の女なんだよ。
女のくせに生意気だ、と思うヤツもいるかもしれねぇが……対魔騎士の訓練だけはどの男よりも熱心だった。
それは俺が保証するぜ。
ただよ、今の発言でも分かったと思うが生真面目で融通が利かねぇんだ。
その辺は俺がフォローする。
よろしくしてやってくれ」
兵士が湧く。
「うるせー、余計だぞ」
「俺らもうクー将軍が気に入ってんだよ」
「美女で将軍、最高じゃねぇか」
兵士が笑い声を上げ、コンラも笑っている。
頼りになるのかと思われもしたコンラだが、兵士たちは無事に目的地に着いている。その間の領地持ちの貴族との面倒くさいやり取りや、食料寝床に大きな支障が無く進んだのはコンラのおかげなのだ。その事はすでに兵士たちに知れわたっていた。
「そりゃぁ、失礼したな」
コンラが軽くクーの肩を叩く。
「ずいぶんと兵たちに慕われているみたいじゃないか」
「そりゃよ、ここまで苦労してきたもん。
ちっとは評価してもらわねぇとやってらんねぇよ」
コンラにしてみれば。数千の兵士の寝床や食料を用意すべく、貴族と交渉する。同行者に王女のエメルがいるから無下に拒否はされないものの、そう簡単な話でも無い。どう考えても若い10人隊長でしかない俺がやる仕事じゃねぇだろ。と思いつつ駆けずり回って来たのだ。
「ではみんな向かうぞ」
コンラよりさらに若くおまけに美人の将軍が宣言する。
「スリーブドナードの魔物退治に」
兵士達も声を上げていた。
「おおうっ」
「やってやるぜ」
「
「クー将軍、万歳」
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