第43話 ぶどう
俺は夜のハイキングも続けている。
山々を駆けめぐるのだが、あまり奥の方に行くのはヤメていた。山の奥にある湖に近付かない様に
「ネイ湖には女神が出るんだわさー!
滅びなる女神『灰色の女王モーリガン』
凶なる女神『赤きたてがみのマッハ』
病もたらす女神『黒き毒のバズヴ』
モーリガンは封印されたって言うから良いけどなのよ。
マッハあたりに見つかったらタイヘンなんだわさー。
ぜーーーったい近付いちゃダメ! なのよー!!」
湖の女神なんて言われたら……むしろ逢ってみたくなるのだが。
ここはガマンしておこう。
普段はバカみたいに明るいちみっちゃい少女なのだが、この話をする時はマジメに青くなってフルフルしているのである。
そんな訳で収容所から山のフモト方面に行ってみた俺。
そこで人間の町を見つけてしまっていた。
人間の住む町。在ったんだなぁ。アタリマエだけど。
だってこの俺の記憶をいくら探してみても、鉱山労働所の記憶だけでフツーの町で生活してた記憶が無いんだもの。
しかし、あの鉱山は強制収容所。国にとっての犯罪者が押し込められて働かされている場所。
とゆー事は労働者を捕まえた側の国だって在るし、フツーの暮らしをしてる人々だって居るハズなのだ。
鉱山では鉱石を掘り返し、何処かへ送っている。
一部はルピナスの所でツルハシなんかにも化けているみたいだが。おそらくそれはホンの一部。大多数の鉱石は他所へ持ち出されている。
ルピナスは大型高機能魔法炉なんて言っていたな。その持ち主の所へ送られているんだろう。
鉱山から町へは良く観察すると、整備された道路があった。日本の様にアスファルトで固められてはいないが、地面を平らにして、木や岩などの交通のジャマになる物は排除されている。山の斜面が急な場所には木で作った柵なども使われている。
距離は結構あると思う。人間が歩いたらまる1日は掛かるんじゃ無いか。多分馬車でも使って鉱石を運ぶための道なんだろう。
離れた山の斜面から見ると、町は大きい。ところどころに明かりが見える。令和日本のようにネオンが瞬いて、ギラギラと明るくは無い。
多分大通りだけ街灯が点いているのだろう。暗く見える建物は石造り。不揃いな建物が無数に建っている。
結構な人数が居るんじゃ無いかな。町ってどの位広いと町って呼ぶのかな、小さければ村だよな。
えーとなんかその昔、人口が5千人以上だと町と呼ぶ、と習った気がするぞ。なんとなくその位は住んでそうだよな。
その日は離れた場所から眺めて満足して帰った俺。
数日後には町の近くに行ってみた。やっぱ気になるよな。
町は石で出来た塀で覆われている。レンガの様な石を積み上げ城塞としている。
そりゃそうだ。この世界は
鉱山から続く道の先には門があった。
木で出来た巨大な門。
門の左右に松明が灯っている。その脇に詰所の様な小屋もある。おそらくそこに見張りの人間が居る。
俺は道を行かずに木々の影に隠れて歩いて来たのだが、ここは道の中央に出るしか無い。
ゆっくりと門に近づく。外側から詰め所を眺める。窓から明かりが漏れているな。
あっ!
人影が見えた!
俺はぴゅーっと走って木々の後ろに隠れる。
だって。
だってだって。
コワイじゃん。
しばらく見ていると詰所から人が出て来るのが見えた。
兵隊なのか手には槍を持っている。
鉱山の監視と同じ地味な色合いの制服。
兵隊は門の辺りを見回した後、また詰め所へと消えて行った。
うん、今日は帰ろう。
だって今は深夜だし。
深夜に一人で男が山から降りてきたら、不審人物と思われるかもしれないじゃん。
あの見張りの人、兵隊みたいだったし。
武装してたし。
不審者として捕まっちゃうかもしれないじゃん。
そんな訳で人の町は見つけたものの、まだ入ったり出来ずにいる俺なのだった。
しかし今回、さらに集落も見つけた。
町から少し離れた場所に人の家が集まってる場所があった。これが村ってヤツだな。
さすがに塀で囲われてたりはしない。
一応木の柵が立てられていて、害獣避けはしてるみたい。
だけど、
おジャマしますよー。
真夜中なので人の姿は無い。
家と家の間隔が広い。畑や果物がみえる。人の背くらいの高さに実が鈴なりに付いている。ブドウだな。
久しぶりに見る果物。味見してみたくなっちゃうけど、ガマン、ガマン。この村で栽培しているんだろう。農作物ドロボーは犯罪。
これを食べちゃったらモノホンの不審者で犯罪者。
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