第34話 食事
「ちょっと足を上げてくれなんだぜ。
おっきい足だなー、なんだぜ」
靴のサイズは26.5。大きい方ではあるが、成人男性としてそこまで極端にデッカイ訳じゃ無いやい。
俺の足元で、足の裏にメジャーらしき物をあててる
小さいけど、女性である。オーバーオールの前掛けを押し上げる膨らみ。横からむにっと見えてる柔らかそうな物体。間違いようが無い。
なんだぜ、と言う言葉使いにスポーティーなポニーテールの髪、少しボーイッシュな外見。なんだけど、顔は可愛らしいしスタイルはボンキュッボーンだったりして。
俺が上から彼女の作業を覗き込むと、胸の谷間が目についてしまう。
イカン!
ダメだってば。トモダチとして紹介されたんだから。そーゆー目で見るんじゃない、俺。
なんか俺、最近やらしくなってないか。うーむ、仕方ないか。30歳を越えた出雲働の意識こそ持っているモノの、俺の身体は17歳。
17歳のオトコと言ったら……アオハル。
クラスメイトの制服の後ろから透けて見えるブラの色とか、スカートの下から見える生足とかが気になっちゃって気になっちゃって、たまらない時期だった。そんなアオい衝動が抑えきれない時期なんだよー。
とは言う物の、こんなコトではせっかく紹介してくれた
注意してエロい意識を追い出さねば。
俺がそんなろくでもない葛藤を繰り広げてるとも知らずに、
「とにかくなんでもかんでもデカイなんだぜ。
こりゃ、作るのに骨が折れそうなんだぜ」
そうか。
「手間をかけてすまないな。
出来そうか?」
「ああ、任せとけなんだぜ。
手間が掛かる方がやりがいがあるってモンなんだぜ」
ニッと大きく笑う
「岩山を歩けるような頑丈なのって注文なんだぜ?
俺はチラリと
「あまり高くない方がいいな。
造りはあーゆー頑丈そうなので、くるぶし程度まで。
出来るか?」
「誰に訊いてるんだぜ。
靴職人にお任せなんだぜ」
分かった。任せたなんだぜ。
そして俺は労働者達が眠る宿舎へと帰って来る。その前に野山を駆けまわって
ああっ、毛布が温かい。丸くなって寝ている金髪の美少年。
良いな、こーゆーの。仕事を終えて帰って来ると誰か待っていて、温かい寝床がある。
なんとなく幸せな気持ちに包まれて、俺はセタントと同じ毛布に入っていく。
静かな寝息をさせているセタント。まだ出会って二日目だと言うのに、俺はスッカリ一緒に寝るのがアタリマエみたいな気分になっている。
「んんん、寒い」
と寝言を言いながら金髪の子がくっついて来るので、俺が抱きしめるようなカッコウになってしまう。
温かくて、それ以上に柔らかい身体。
いや、だから!
男の子ですから!
いくら睫毛が長かろうが、唇がピンク色してようが。
オトコ。
胸をトゥンクットゥンクッさせるんじゃない、俺!
そうだ。これもアレだ。身体が17歳の男子高校生だから。
身体は子供、頭脳は30ウン歳童貞オッサンな俺!
少し可愛らしい顔が横に寝てれば、興奮するのもアタリマエ!
……そうかぁ?
相手は男の子だぞ。
もしかして気が着いていなかったが、俺にはそんな趣味嗜好があったのでは……
違う、違うーーー!!!
そんなコトは無い。絶対無い。断じて無い。無いったら無いんだ。
そんな事を考えながらも、いつの間にか俺は眠っていた。
「ここの朝食は……
もしかすると毎日同じなのか」
「そうだな。
他のメニューを見た記憶は無い」
「………………」
不満そうにパンとスープを眺める金髪の子。俺はセタントに問いかける。
「なんだ、足りないのか?
俺のパンを分けてやろうか」
「いいよ、キミだって足りていないだろう。
粗食に耐えるのもいいか、と思ったけど。
毎日これじゃ、明らかに栄養が足りていない」
確かにひどいメシではあるんだが。俺は既に慣れてしまったんだよな。なんの憤慨も感じず、スープに浸したパンを口の中へ放り込む。
うん。まずい。
と言うかほとんど味はしない。
栄養に関して言えば、間違いなく足りていないだろう。ただ俺は夜ヤキトリ食べてるからな。それで何とかなってるし。
しかしセタントは育ちざかりなのだ。このパンと野菜クズだけのスープでは身体の成長に問題が起きるかもしれんな。
夜手に入れたトリニクを分けても良いのだが、まだ俺はあのヤキトリは妖精のマントに入れた事が無い。
食べ物だし、あの妖精のマントもかなりな謎アイテムだし、あそこに入れて取り出したモノ食べて平気なんかなー。
しかしいきなりヤキトリを渡したら、セタントに不審に思われるかもしれない。
「んー、今日も俺は仕事終わりに売店に行く予定だ。
キミも来るか?
そこで食事も買えるかもしれんぞ」
「そうだね、一度は見ておきたいし。
元気が残ってたらだね」
こう言っておけば、売店で手に入れたと言う事に出来るだろう。
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