第31話 巨人狩人

巨人狩人ゴーレムハンターって称号があるなのよ」


 妖精少女パックが俺を見て言う。

 それってどんななんだ。


「知らないけど、多分石の巨人ゴーレムをたっくさん倒すと与えられる称号なんだわさ。

 コレがあれば石の巨人ゴーレムを簡単に倒せるハズなのよね」


 知らないのにちみっちゃい少女は自信有り気に言う。

 うーん。妖精少女コイツホントに大丈夫か。悪い少女じゃ無いとは思うんだけど、何処まで信じて良いのかな。今度ヒンデル老人にも聞いてみよう。

 そんな内心の思いは置いておいて、応える。


「そうなのか、やったな。

 これで作業もより楽になるぞ」

「よーし、ジャマ者が減ったのよ~。

 やったなのよー

 やったんだわさー」


 ルンルンと俺の周りを妖精少女パックが飛び回る。透き通る羽を上下させて楽しそう。

 嬉しそうなちみっちゃい少女を見ると、それだけで俺も嬉しくなる。


 その後も固い地面を掘り返す単純作業を続ける俺。

 石の巨人ゴーレムが湧いたり、金属の巨人メタルゴーレムがたまに出現したりもしたのだが。石の巨人コバエは俺を襲うどころか、コソコソと隠れて逃げて行った。逃げるコバエを追う程ヒマじゃないので、放置しておく。


多分巨人狩人ゴーレムハンターのおかげなんだわさ。

 石の巨人ゴーレムから見たら、アンタが天敵みたく感じてるんじゃないかしらなのよ」


 金属の巨人ゴキブリはさすがにコソコソ逃げたりはしない。俺の方を窺って、戦おうかなやめようかな、と逡巡してるフンイキ。2、3体の金属の巨人メタルゴーレムが集まると襲ってくる。そのタイミングに乗じてコソコソしていた石の巨人コバエまで群がってきたりする。

 そいつらに俺は無双する。

 石の巨人ゴーレムなんかラクショー。腹をぶっ叩いて、魔法石を奪えば良いだけ。ザコがアッサリ石の瓦礫と化したところで、お次は金属の巨人ゴキブリ


 金属の巨人メタルゴーレムはさすがに固い。鉄のツルハシでもってしても簡単に砕けはしない。

 瞬間冷凍フリージング

 まずは足止め。凍り付いてほぼ動けなくなった金属の巨人ゴキブリ

 地獄の炎ヘルファイヤ

 胴体を溶かしてと。


「あのさー、溶けた金属の巨人ゴキブリの体から魔法石取ったら、俺もヤケドしそう」

「ヤケドしたら、治せばいいんじゃないのだわさ」


 イヤだよ。熱いし、イタいじゃんか。


妖精少女パック、俺を瞬間移動させるみたいにさ。

 あの魔法石取り出せないか?」

「ん-ーー。

 もう少し周辺を溶かして欲しいなのよ。

 妖精にとって鉄はニガテなんだわさ。

 あの金属の巨人メタルゴーレムも鉄が少しだけ混じってるなのよ」


 フーン、鉄は少しだけ。するとアレは銅やら他の金属で出来ているのか。確かに金属の巨人ゴキブリは色合いがシルバーメタリックな鉄を多く含んだ合金の色じゃ無い。少し鈍い金色、10円玉の色合い。

 エイッと地獄の炎ヘルファイヤをかけたツルハシで、胸から腹にかけてぶっ叩く。


「これでどうだ?」

「やってみるだわよ。

 えいっ!

 重い、おもいおもい、重いーーー!」


 飛んでいた妖精少女パックが魔法石の重さで下へと落ちそうになっている。ちみっちゃい両手に魔法石を抱えて、引きずられているのである。

 俺はその身体を捕まえて、魔法石を受け止める。これは金剛魔石ダイヤモンド黄魔石トパーズ


「どうよ、やったんだわさ」

「えらい、えらいぞ。

 ちみっちゃいのに大したモンだ」


 ドヤ顔で勝ち誇る妖精少女パック。俺はそのちっちゃい頭を人差し指で軽く撫でてやる。


「ちみっちゃい言うな、なのよー!」

 

 と言いながら、にひひっと笑顔を浮かべる妖精少女パック

 へへへー。トモダチっぽくなってきたよな、俺達。これが妖精の友人フェアリーフレンズってコトだな。


 見ると地面には金属の塊。動かなくなった金属の巨人メタルゴーレムの成れの果てだ。

 とりあえず俺は妖精のマントに仕舞っておく。何かに使えるかは分からないが、このまま放置すれば、また金属の巨人ゴキブリが湧くかもしれないのである。そんな危険物を地面に散らかして置けるか。

 石の巨人コバエの材料の石だって同じなのだけど、石なんだぜ石。そんなの仕舞ってられないよ。そこら中、坑道の周辺の壁だって全部石や岩なのだ。

 

「よーし、ジャマモノがいなくなったコトだし。

 ドンドン掘り進めて行ってだわさ。

 妖精女王ティターニア様を助け出すなのよー」

「あいよー。

 にしてもさ、妖精少女パック

 俺ガンバッテ掘り進めてるつもりなんだけど、後どの位下まで掘れば良いんだ?」


「んんん-ーー」


 ちみっちゃい少女は胸の前で腕を組んで難しい顔。そんなポーズ取ると少し膨らんだ胸が強調されちゃうんですが…………

 前世で見たグラビアアイドルの様におっきくは無いけど、ちゃんと女性らしい膨らみ。胸元の開いた服からは谷間が見えちゃう。

 いや、そーゆー目で見ちゃダメ。

 妖精少女パックはトモダチ。

 友人になったんだった。

 トモダチをエロい目で見ちゃイカンだろう。


「……良く分かんない」

「なんだよ!

 考え込んだ末、それか」


「この下の地面がさらに鉄を多く含んでるんだわさ。

 だから良く分かんないなのよ」


 そうか、そう言えばそう言っていた。鉄を多く含む岩。だから妖精なのに逃げ出せない。そんな場所に妖精女王ティターニアは閉じ込められている。

 つまり、下に掘り進めれば掘り進めるほど、鉄を多く含んでるってコトかな。

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