第8話 妖精の服
本日も
「ツルハシで地面を掘る重労働のなにが楽しいのよさ?」
「何を言ってるんだ。
額に汗して働く喜び。
俺は生きてるんだー。
ってカンジがするだろ」
「……やっぱ、アンタ変なのだわさ」
身長20センチくらいのちみっちゃい少女だ。外見は凄く可愛らしいのだが、言動は今一つ可愛くないな。
俺は固い岩盤にツルハシを叩き落す。
俺が取り出したのは黄色の魔法石。
俺は唱えて、再度ツルハシを振るう。
岩肌に阻まれていたツルハシが、今度は一撃で岩を砕く。
ザクザクと下に向かって岩盤を崩していく。
何か動くモノの気配を感じる。俺の方へ近づいてくる大きい物音。
いつもの
あれ、いつもより大きい。
何度か戦っている
現在俺の前に姿を現したのは5メートル近いんじゃないか。
人間のサイズとしてはどれだけ探し回っても在り得ないシロモノ。
「これは……
大物なんだわさ。
大丈夫なのよ?」
よし、ならば。
俺はヘルメットをかぶり直し、ツルハシを振り上げる。
身体に漲る、
ついでだ。
俺は
強化された俺の腕の力はツルハシで
叩かれても気にせず
俺はそのブットイ腕を容易く避ける。
その空振りした腕を俺は足で蹴ってみる。
アイタタ!
やっぱり金属を蹴るとこっちの足も痛いな。
俺は靴を履いているが、木のサンダルなのである。木の板に布で足の甲にくっつける。便所サンダルの様ないい加減なシロモノ。こんなもので普段は重労働をさせられてるのである。日本にある安全靴が欲しーよ。せめて登山用シューズとか。
ツルハシでぶっ叩いた腕もシビレているのである。
俺の足を痛めた甲斐が有って、腕を蹴り上げられた
こっちも疲れちゃうな。
やっぱり
俺は赤く輝きだしたツルハシを振るう。
ツルハシが当たっただけで、
これ、素材はなんなんだろう。
石だったら融点は確か800度から1000度。
鉄がおよそ1500度。
銅なら1000度弱、鉛は300度強で溶けだすため、加工がしやすい。
そんな前世の記憶を少しばかり思い出す。
以前、
真っ赤にはなったが、溶けだすまでは行かなかったハズだ。
すると
こんな知識思い出したトコロでこの世界ではあまり役に立ちそうに無いな。
だけど、
鉄ってヤツは熱処理をして冷やして鍛えられたりするのである。時代劇なんかで見たコトが無いだろうか。
鍛冶師が炭火の竈で赤くなった剣を打って、水に入れて冷やす。アレだ。熱して柔らかくなった鉄を打つことで、余計な不純物を取り除く。更には炭素と合体する事で鉄は鋼になるのだ。
そんなワケで金属製の巨人を熱して冷やしたトコロで、鍛えられてしまいそう。フツーの
考えは無いが、俺はとりあえず
まぁ力ずくで倒すしか無いかな。
筋力の強化が重ねがけして効果が上がるのか、確証は無かったのだが。
どうやら重ねて使う意味はあるらしい。
氷づけになった
「なんとかやったな」
あたりには一回り小さい
現在の俺は、
コバエを蹴散らす。
「やったのだわさー。
やったのだわさー」
これはコバエと呼ぶのはかわいそうだな。
美しい蝶の様と呼んであげよう。
あれ。今日の
「
「ん……服のコト?
そうなのよ。
今日は黄色を選んだんだわさ」
「……服着替えるんだな……」
「どーゆー意味なのだわさ。
着替えくらいするに決まってるでしょなのよ」
「ああ、すまん。
ええと、そんな小さな服作るのは大変だろうと思っただけだ」
「
俺は
身長こそ20センチ程しかないが……身体はちゃんとバランスの良い肢体をしている。
服は透け感のあるヴェールの様なドレス。
柔らかそうで身体にピッタリしたドレス。
つつましやかではあるが、胸の膨らみもハッキリわかる。ひざ丈のドレスの下からは形の良い足が見えていて。足には靴。ブーツの様な膝下まである物。
ミニスカにブーツと言うのがなかなかオシャレ。
そうか、あの服脱げるのか。
……服の下も人間と同じだろうか……
俺は服の下を想像しそうになり、慌てて頭を振って妄想を追っ払う。
仕方ないだろ。17歳の男子なんだってば。少しばかり興味を持ってしまっても、健全だよな。
うー。
そんな事ばかり考えていると作業が進まない。
気持よく働こうじゃないか。
俺はまたツルハシを持って、岩盤を打ち砕く。
周りを
「ガンバレなのよー!
ガンバレだわさー!」
とりあえず、胸や足は見ないようにしよう。
顔なら良いよな。
顔立ちもカワイイのだ。
少し驚いた様に見開かれた目。クルクルと動く瞳。表情豊かなちみっちゃい少女。ちみっちゃいので表情まではよーく観察しないと見えないんだけどな。
俺は
ありゃりゃ。
ツルハシの先端部位がすでに折れ曲がって使い物にならない。
新しいツルハシをコインと交換して貰ってこないと。
……やっぱりツルハシだけじゃなぁ。
砕いた小岩や邪魔な土を退ける道具、シャベルやらなんやら無いと不便だな。
明日はツルハシ売ってる道具屋に行って見よう。
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