第19話

 十月になって少し空気が冷たくなってきた。秋晴れの気持ちのよい日が続いている。

 姉が「考えてみる」と言ってから半月ほど経過した。状況は相変わらずで、兄と真理子はモジモジ状態を続けている。みんなのイライラは募るばかり。そんな中姉は、意外にも落ち着いている。あきらめたのだろうか。そんなはずは無い。姉はそんなタマじゃない。

 午後十時。店の仕事を終えて、兄と祖父が居間でくつろいでいる。一緒に私もテレビをだらだら見ていた。宿題をやらなければならないのだが腰が重い。部活の後に店の手伝いもして、まぶたも重い。

 姉が居間にやって来た。何食わぬ顔で椅子に腰をおろす。お茶飲む? と兄に訊かれたが、無言で右手を上げ、首を振って断った。……何かが始まる。私は眠いのだが。

「問題。十月十日は何の日でしょう」

 唐突に姉が言った。

「体育の日。あ、でも祝日はスライドするのか」

 兄が平和ボケしたような顔で言った。

「ああ、真理子の誕生日」

 私は思い出して言った。すっかり忘れていた。私の誕生日にはプレゼントをもらったのに。我ながらヒドイな。

「はい、佐奈正解。十月十日は真理子の誕生日なのよ健ちゃん?」

 姉が兄の顔を真っ直ぐ見据えて言った。

「あ、うん。そうか」

 兄が慌てて口ごもる。

「あ、うん、そうか、ですって?」

 姉がお怒りだ。これは計画的なお怒りだろう。

「いや、みんなでお祝いしようよ。店でパーティをやるのもいいかもね」

 ぎこちない感じで兄が言う。なかなか面白くなってきたので私は目が覚めてきた。

「健ちゃん。真理子はお金持ちのお嬢なのよ? 誕生パーティはホテルで、大々的に開かれる事になってるわよ。汚い喫茶店でジジババに囲まれてる時間は無いのよ」

 姉がひどい事を言う。まあ続きを聞こう。

「じゃあ、プレゼントだけでも用意しないとね」

 兄がさびしげに笑って言った。それを訊いて姉がわざとらしく大きなため息をついた。居間に緊張が走る。祖父だけは何故か楽しそうな顔をしている。姉がリモコンをハッシと掴み、勢いよくピッとテレビを消した。

「真理子はさあ、ウチの従業員じゃないのよ? そもそもお嬢様の趣味で手伝ってくれてるわけ。だけど健ちゃんもご存知の通り、真理子の働きぶりは大したモンよね? もしこれがアルバイトだったとして、どれだけの対価を払わなければならないか。想像もつかないわね? どうよ健ちゃん」

 姉がふんぞり返って言う。私は笑いをこらえるので必死だ。

「そうだね。真理子さんのおかげでだいぶ助かってる。店もいい感じで回ってる。確かに、感謝してもしきれないよ」

 兄が真面目に答えた。

「感謝? 健ちゃんまだそんな言葉を使うの? ちょっと佐奈、どう思う?」

 姉の意図がまだ完全に読めないが、流れは把握した。

「兄さん、私は真理子が少しかわいそうだと思う。家族も、お客さんもみんな分かってるんだから。後は兄さんの気持ち次第じゃない。兄さんの優しさは分かるし、とても素敵だとは思うよ。でもお願い。インドの時みたいに、思い切って動く必要もあるんじゃない? ここは日本だけどさ」

 私は精一杯気持ちを込めて言った。姉が私を指差して「いい事言った!」というジェスチャーをした。なんだか姉と役割分担してるみたいになっている。

 兄が口をつぐんだ。お茶を片手に、テーブルをじっと見詰めて……長い。そんなに考える必要があるのだろうか。確かにこの慎重さが兄の真骨頂だ。インドのさわやか兄さんは素敵だったけど、やはりアレはあくまで例外だ。しかし今回も例外にしていただきたい。沈黙を破ったのは意外にも祖父だった。

「健一。そんなに深く考えなくてもいいんじゃないかね。健一と真理子さんを店で見ていて、とても息があっていると私は思っているよ」

 今までずっと傍にいながら、決して口を挟まなかった祖父がついに介入してきた。これは兄にとって大きな影響があるだろう。そう思って兄を見たら顔が真っ赤になっていた。繊細だなあ。これ以上押すのは危険じゃないか? 私は心配になって姉の顔を見る。姉の顔は生き生きしている。まだまだ攻める気らしい。大丈夫か。

「と言うわけで健ちゃん。真理子の誕生日パーティに出席しようね? 招待も正式に受けてるのよ。店の方はみんなに任せておいて。段取りもすべて済んでいるから。ね? いいよね健ちゃん?」

 姉が粘っこく兄に迫る。兄が大きく息を吸った。

「……うん」

 兄が観念した顔で頷いた。今の「うん」は何を意味したのか。パーティへの出席だけを了解したのか。それだけだったらさすがに私も泣くぞ。

「プレゼントもそれなりのモノを用意したいじゃない? ねえ健ちゃん」

 姉がウキウキした感じで言う。

「うん」

 兄がすべてを受け入れるような感じになっている。本当に大丈夫か。

「明日の午後、店が混む前に私と銀座に買い物に行こう。もう目星はつけてあるんだ。軍資金もじいちゃんにバッチリもらってあるから。いいわね健ちゃん」

「うん」

 姉はもうノリノリだ。兄はまるで今から切腹しそうだ。心配だなあ。しかしサイは投げられた。もう後戻りはできない。サジが投げられたんじゃないといいけどな……。


 次の日の午後。姉が兄を引っ張るようにしてプレゼントの買い物に出かけて行った。

数分後、姉からメールが来た。目的地が変わったとのこと。銀座へ行く予定だったのが、急遽上野へ変更になったという。なぜ上野なのか。アメ横で食材を買うわけじゃないだろうが。まさかプレゼントは食べ物?

 ちょうど入れ替わりで真理子が店にやって来た。今日は土曜日。真理子は昼食を自分の家で取ってから、少し遅めに出勤して来た。

「あら? 健一さんは?」

 真理子が店内をきょろきょろと見回して言った。

「アメ横に……食材を買いに行った。なんか料理に試したいものがあるんだって!」

 言い訳を考えていなかった私はとっさに下手な嘘を付いてしまった。いや、ほとんど嘘じゃない。姉は上野に行くと言ってたのだから。

「まあ。じゃあまた新しいメニューが増えるのかしら。楽しみですね」

 手馴れた感じでエプロンを着けながら、微笑んで真理子が言った。たぶんウチの店を手伝うまでは、エプロンなんてほとんど着けたこともなかったはず。真理子がコーヒーのポットを抱えてすばやく仕事に取り掛かる。お客さんにあいさつしながら、コーヒーのお代わりを注いで回っている。好きこそ物の、とは言うけれど、真理子の進歩は驚異的だ。

 午後六時頃、姉から電話がある。

「ゴメン。ちょっと買い物長引きそう。最悪、閉店まで戻れないかも」

 姉の口調に疲労感が漂っている。

「どうしたの。何かあったの?」

「いや、健ちゃんが迷いだして……」

 うんざりしたような声で姉が言う。

「え、プレゼント買わないの?」

 私は驚いて訊いた。

「違う違う。プレゼントは確定。もう私は決めてたのよね。指輪なんだけどさ。お店に入って健ちゃんに見せて、後はお会計というとっても簡単な話だったんだけど。うっかりしてたわ。健ちゃん、買い物の時に延々と迷う事があるじゃない? モノが高いとなおさら」

 姉が言った。そう、兄は買い物に時間をかける。後悔しないように慎重に選ぶ。事前調査も怠らない。きっと指輪を目の前にして、兄の厳しい審査が始まってしまったのだろう。

「この前テレビ選ぶ時、確か二ヶ月くらいかかったよね」

 私は言った。

「そうそう。しかも電気屋に何回も足を運んで。結局ネットで買ったのよね」

 姉がため息をつく。

「でもまあいいじゃない今回は。じっくり選んでもらった方がそれだけ愛情がこもる感じがするし。兄さんの気持ちも、指輪のおかげで盛り上がってきてるんじゃない?」

 私は少し笑って言った。

「そうね。そうだといいんだけど。私の読みだと、少なくともあと二時間は粘るわね。店はどう? 大丈夫そう?」

 姉が言った。

「うん。真理子が来てくれてるし。土曜日だからなんとかなるよ。せっかくだからたっぷり時間かけて、いい物を選んで来てよ」

 私は言った。

「結局『今日は買わない』とか言わないでしょうね……」

 じゃあよろしく、と言って姉が電話を切った。真理子の誕生日パーティは来週だ。テレビの時みたいに際限なく迷うことは出来ない。兄は今頃、ショーウィンドーの中の指輪達を険しい目で睨みつけている事だろう。家族が無駄遣いしても決して文句は言わないのに、自分が選ぶ立場になると恐ろしく厳しくなる。そう言えばその姿は、兄が旅の間に見せていた「さわやかさ」に通じるものがある。これはいい流れかもしれない。


 店は午後九時に閉店する。お客さんが粘って、実際の閉店は九時半ぐらいになることもある。今日は比較的お客さんが少なく、きっかり九時で店を閉める事が出来た。真理子は兄の顔を一目見たかったようだが、九時に片山さんの車が迎えに来ている。少し残念そうな顔で「また明日ね」と言って真理子が店を出て行った。そして時計は現在午後九時半。遅い。だいたい貴金属店はそんなに遅くまでやっているモノだろうか。

 十時を少し過ぎた頃、ようやく二人が帰ってきた。意外にも兄は晴れ晴れとした顔をしている。満足の行く買い物が出来たらしい。予想通り姉は、げっそりとした表情をしていた。私は笑った。

「ちょっと聞いてよ! この人、指輪の値段を値切るのに二時間もかけたのよ!」

 姉が椅子に体当たりするように腰掛け、カウンターに上半身を投げ出して言った。きびしい視線が兄に向けられている。

「こういう物は掛け値が大きいんだよ。だから例え日本のお店でも、値切りの交渉をしていいはずなんだ」

 兄がさわやかに言った。おお、久しぶりに「さわやか兄さん」が帰ってきている。

「でもお店の人もビックリしてたじゃない。あんまり粘るから奥の部屋に通されてさ、お茶まで出されて。冷や汗が出たわよ」

 姉がカウンターに頭をのせたまま言った。よっぽど疲れたのだろう。

「それで? どうだったの買い物は」

 私は何となくわくわくしてきた。

「……凄いわよ。さすがとしかいいようが無いわ」

 姉が少し笑顔を取り戻して言った。兄が口を開く。

「プレゼント用に包装してもらったからモノは見せられないけどね。けっこういい買い物だったと思うよ。真理子さん、喜んでくれるといいんだけど」

 この落ち着いた感じ。プレゼント会議の時の、あの重苦しい表情はなんだったのだろう。飄々としている。これは……吹っ切れたと見ていいのだろうか。

「で、いくらだったのよ」

 私は急かすように訊く。

「当初の予算が十万円。じいちゃんのポケットマネーでプラス五万円。母さんの実家マネーからプラス十万円。最終的に予算二十五万円でした」

 姉が淡々と説明する。に、二十五まんえん。お嬢様へのプレゼントだから、高すぎることはないんだろうけど……。

「なんで母さんの実家からそんなに出てるのよ」

 私は言った。

「それはそれ。私の手腕よ。細かい説明は佐奈、また今度ちゃんとしてあげるから。とにかく予算が二十五万円だったの。で、ここは予算もあるし、思い切ってダイヤの指輪にしようと決めたわけ。ブルガリのダイヤが欲しかったの。好きなのよわたし、ブルガリ。買えないけど」

 姉の趣味は訊いてない。

「ダイヤモンドかぁ。思い切ったねぇ」

 私はため息をつく。でもそれだと、まるで婚約指輪……。

「最初は銀座に行く予定だったのよ。ブルガリ。そしたら健ちゃんが、ブランド物はイヤだって言い出して。銀座に行く予定が上野に変更になっちゃったわけ」

 姉がため息をつく。兄がすかさず説明する。

「ブランドの名前にお金を払うのはちょっとね。ブランドにも価値はあると思うよ。でもあくまで、素材自体の価値を優先したかったんだ」

 まるで宝石のバイヤーのような発言。そこでスイッチが入ったのだな。兄のさわやかスイッチ。

「貴金属は上野が安いんだって。健ちゃんが一晩のうちにネットで調べまくってて、上野に行く事になったの。健ちゃんがヤル気になったんだから、いい事だろうと私も納得したわ。本当はブルガリが欲しかったんだけど」

 ブルガリ……。姉が続ける。

「上野に到着して、お店がたくさんあるんだけど、それもちゃんと調べてあるのね。店の目星がついてるって言うのよ。しかもダイヤモンドはやめようって言うから驚いたわ。わたしの計画はどうなるのよ」

 姉が憤慨して言った。

「ダイヤモンドは市場で価値がコントロールされすぎてるらしいんだ。石として純粋に美しいとは思うよ」

 兄が言った。え? 市場? よくわからん。というか兄は何故知っている。

「本人はもう決めてたみたい。プラチナの指輪が良いんだって。プラチナは金属としての価値が高いから、お金を払う意味があるとか言って。それで目当てのお店に入って、プラチナの指輪とにらめっこが始まったわけ。もうね、好きにしてくださいって感じ。その時点で」

「いや、本物を目の前にするとまた迷うね。プレゼントだし、デザインも慎重に選びたいし。加奈には悪い事をしたよ」

 ちっとも悪びれずに兄が言う。ノリノリだな。

「気になるお値段は!」

 イライラして私は叫んでしまう。通販番組じゃない。

「予算が二十五万でしょ? だけど健ちゃんが選んだのは十八万円のリングよ。でもこれが、なかなかいいのよ。ボリュームはあるし、細かく彫刻がしてあって。いいセンスしてると思ったわ。ブルガリにはかなわないけどね」

 ブルガリはもういい。

「十八万円か……」

 自分の理解を超えた世界なので、どう反応していいのか良く分からない。

「実際に払ったのは十五万だけどね」

 姉が言った。

「あ、交渉したんだっけ? すごいね。三万円も値引きしてもらったの?」

 恐るべき兄。

「お店の人泣いてたわよ。だけど交渉が上手いのなんのって。笑顔でズバズバ切り込む感じ? 店員がさばき切れなくなって、お店のご主人が出てきたんだけど。なんかアフリカの宝石の話題で盛り上がってたわ。わたしはほとんど意味が分からなかったけど。閉店時間になって、ご主人にほとんど卸値で譲ってもらったみたいよ」

 姉が目を見開いて言った。交渉を横で見ていた姉は、相当疲れただろう。兄が生き生きしている理由もなんとなく分かった。

「卸値はもっとずっと安いよ。たぶんね。貴金属はたいてい値切ってもいいんだよ」

 兄が笑顔で言って、姉にコーヒーを注いであげている。


 真理子の誕生パーティへは兄と姉が出席する。もちろん私もご招待いただいているが、店を閉めるわけにはいかない。当日は祖父と私が、大車輪の働きをしてどうにか乗り切る予定だ。両親はいまだバリ旅行中……。この前国際電話がかかってきたけれど、父は相変わらず能天気で、バリに移住したいとか言っていた。この際もう、移住でも永住でもしてもらってかまわないが、母がホームシックになりかけているらしい。年末には戻ってくるとのこと。ほんと遊び放題だな……。

 真理子の誕生パーティを前日に控えた日。当初はやらない予定だったが急遽、店内でささやかな誕生祝をする事になった。これは兄の発案である。さわやかスイッチが入ったとたんに、兄は急に積極的になって来た。喜ぶべき事だが、あまりの急激な変化に私は不安の方が先に立つ。ようするに私は心配性なのだ。どう転んでも不安の種が尽きない。

 私は本番の誕生パーティに出席できないので、店でお祝いできるのは嬉しかった。店の常連さん達も、パーティで活躍できる面々ではない。招待はされているみたいだが、体力的に出席は無理だろう。真理子は、商店街のオヤジどもも招待しそうな勢いだったので私が全力で止めておいた。結婚式とか葬式で、酒を飲んで暴れるタイプが何人もいる。そんな人材をセレブのパーティに送り込む事はできない。町内会の恥だ。

 お昼の忙しい時間帯が過ぎて、店内はほぼ常連さんだけになった。厨房から兄が、小さいケーキに蝋燭を一本立てて店内に運んできた。すかさず私は電気を消す。姉がハッピーバースデイの歌を歌いだし、他の人もそれに合わせて大合唱になった。真理子はお店の真ん中で目をつむり、両手を組み合わせて立ち尽くしている。

 歌が終わると同時に、兄が真理子の目の前にケーキを差し出した。真理子が蝋燭を吹き消す。みんなが拍手をして、口々に真理子にお祝いの言葉を述べた。真理子は一人一人にお礼を言いながらとても嬉しそうにしている。美しい光景だ。

「真理子さんおめでとう。真理子さんのおかげで、この店はとても楽しい場所になりました。これからもどうぞよろしくお願いします」

 兄が言って、真理子が微笑む。常連さん達がもう一度大きく拍手をした。

 その後、お客さんの全員に、兄の特製ケーキが振舞われた。真理子の大好物、チョコケーキ。物凄く美味しい。真理子はみんなに囲まれながら、おいしそうにフォークを使って食べている。常連さんの中には真理子にプレゼントを渡している人もいた。もはやこれは真理子ファンクラブと言っても過言じゃないだろう。

「これはお店から。プレゼントとはちょっと違うんだけど」

 兄が真理子に、小さな封筒を手渡した。不思議そうに真理子がそれを受け取る。兄が「開けてみて下さい」と真理子に言った。

「あら、お金!」

 真理子が驚いた顔をしている。私も驚いた。恐らく十万円ぐらいか。封筒から出てきたのは数枚の一万円札だ。

「真理子さん、がんばって働いてくれてるから。少なくて申し訳ないんだけど。アルバイト代」

 兄が言った。お金持ちにお金をあげるとは。この発想は無かった。

「とっても嬉しいです。ありがとうございます。頂きます」

 素直に受け取る所が真理子らしい。私なら一応遠慮して……後で自分の部屋で密かに大喜びするパターンだ。私も十万円欲しいなあ。真理子にはハシタ金だろう。でもこの場合意味が違う。お嬢様の真理子が、生まれて初めて貰うバイト代だ。なかなか有り得ないイベントだ。

「バイト代出すのって、姉さんの入れ知恵じゃないよね」

 私は姉に訊いた。

「もちろん知らないわよ。恐らく健ちゃんは、プレゼントの予算を聞いた時に決めてたんでしょうね。真理子にバイト代をあげる事。それを考えると交渉に熱が入ってた意味も分かるわ。憎いことやるわね」

 姉が悔しそうな顔をして言った。自分の計画通りに事が進んでいないのが気に食わないのだろう。しかし姉の力も上手く働いていると思う。

「本番の誕生パーティでも、何かたくらんでるわけ?」

 私は訊いた。

「まあね。どこまで上手く行くか分からないけど。健ちゃんがこういうテンションになった以上、凶と出るか吉と出るか。どちらにせよ、予測不可能になってきたわ。でも計画は遂行するわよ」

 姉が気合の入った表情で言った。大丈夫か。もう怖いから内容は訊かない事にしよう……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る