ANCIENT FISH
monco
第一章 目覚め不能症候群 <第一話>
―ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ…―
ボクは、毎朝朧げな頭の中で、ある仮説を立てるのである。もしかして、《目覚め不能症候群》という、まだ医学会にも発表されていないような不思議な奇病があって、無理に起きてしまったりなんかすると、そのまま息絶えて死んでしまうのではないかという場面を勝手に想像するのである。
そして、きっとこの世界のどこかで、この奇病で運悪く死んでしまった人が、一人ぐらいは絶対いるのではないかと真面目に考えながら、結局今朝も死んでしまうこともなく、恐る恐るベッドから這い出すようにしては、目覚まし時計の置かれたテーブルまで、無事に辿り着けるのである。
「おはよう…」
ボクは、部屋の真ん中に置かれた大型水槽の住人である《彼》に声を掛ける。彼は、学名をポリプテルス・エンドリケリーと呼ばれる、主にアフリカ大陸の河川や湖沼などに生息する淡水産の魚類で、その数種いる中でも体長は七〇センチ程にも成長する大型種である。
その姿は、まるで太古の恐竜を想わせ、祖先はあのシーラカンスの親戚だったらしく、その末裔にあたる彼らも、生物学的知見から身体の構造や性質などの要素において、似つかわしい部分が数多く残されており、所々にその大きな特徴が受け継がれている古代魚なのである。
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