私の未来

かわき

私の未来、

自殺したい。私なんてどうでもいい、わたしがいたら、周りに迷惑だ。



私の未来はお先真っ暗。うまくできない私なんて、いる意味ないよね。



「自殺したい。この世から消えたい。私なんて生まれてこなければよかった」



私はこの一言を、なぜこうしたかったのか、分からずにツイッター上にツイートした。



私なんていらないんだ。



「助けを求めているんですよね、美玲さん、話聞きますよ」



返信が来た。意味が分からなかった、のはほんの一瞬。本当の自分を今理解できた気がした。



私は誰かに助けを求めていたのかもしれない。だから無意識にツイートした……。そういうことなの?



返信をくれたのはネット友達のクレアさん。男性だ。彼とは昔から交流がある一番仲のいいネッ友。



「クレアさん……、話聞いてくれるんですか?」



「もちろんです。困り船を一人乗り状態で出航させませんよ」



私はその後電話で彼に心にたまっていたものを吐いた。泣いた。言えばいうほど、軽くなる気はするのに、まだなにか重い。



「美玲さん、考え過ぎです。自分を責めないでください」



「でも……」



「自分はどうしようもないやつだなんて、そう思う手段しかないんですか? ため込んだりするのは心にどくろマークです。ベストなのは吐き出すこと、話したりすることです」



「それでも私、軽くなった気がしません。吐き出しても、まだ自分にまとわりついているような気がします」



「気がするだけだろう? 思っているから重く感じるんだ。だったら思わなければいい」



「……どうやって?」



「簡単さ。まずは想像してみてくれ。美玲さんは今一本道を歩いている。でも地面には大きさが異なる石がランダムに配置してある。美玲さんはその先にある『今自分がなりたいもの・目標』に向かって歩いている。ただ歩けばいいものを、美玲さんは、転ばないように足元にある石ばかりを見て歩いている。普段なら転ぶはずもない小石にも気を配りながら歩いている。一歩一歩慎重に歩いて、完璧に目標に向かおうとするからね。でもそれはほぼ不可能だ」



「どうして?」



「いつかぼろが出るからな。小石一つ一つにも気を配る美玲さんは、いずれ集中力が切れ、そして気づいた時には小石よりもやや大きい、つまずく程度の石に足元をすくわれ、転んでしまう。そして美玲さんはこう思うだろう。『私、なんでこんなことで転んだんだろう』こう思うのは自分が完璧であるというがためにした失敗が、あまりにもレベルの低いことだったからだ。この時の落ち込みは地面が二つに割れるほど大きい」



クレアさんの言う事に素直になっている私がいた。失礼ながら他人と相談した時は、その相談相手の言う事を否定して自分はそうじゃない、そう言い聞かせていたが、今は違う。クレアさんの言う事は全て私の的を抜いている。だから私は私自身を石の多い道に歩かせている。



「そして美玲さん、小石ばかりに気を配っていると何かを忘れてしまいそうだね。何だと思う?」



「……わからない」



「目標だよ。下を向きすぎていると今自分がどこを歩いているのかもわからなくなる。そして、小石のことばかり考えて目標のことを忘れてしまうんだ。だからどうすれば目標が見える?」



「上を向く?」



「そうだよ。上を向いて歩けば、今自分がどのあたりにいるかを把握できる」



「なるほど……でも」



「ん?」



「目標がすごい遠い場所にあったら、どうすればいいの?」



「いい質問だ。そう言う時はね、中間地点を設けるんだ。例えば、将来の夢は先生だ! っていう人がいるとするよ。先生になりたくてただ上を向いて歩いていたら、そのあまりにも遠くにある目標をみて絶望するだろう。でも上を向いている人は目標にたどり着くことが出来る。その先生になりたいひともね。どうしてだと思う?」



「なにがなんでも目標をみているから?」



「それも答えだよ。でもその前に一つ抜けているよ。それはね、中間地点を設けているからだ」



「あ……」



「目標にたどり着くために人は休憩場所を設けるんだ。例えば、先生になりたいからどこどこの大学に行ってこういう学びをするんだ。という進学先の目標(本物のための仮目標)をたてると。目標を達成するためにするべきことを達成するんだね」






「でも中間地点を設けている理由を忘れてはいけない。理由とは?美玲さん」



「目標を達成するために設けているから」



「素晴らしいよ美玲さん。だんだん前向きになってきているよ」



「私、前向きになってる?」



「なってるさ。今もこうして話を聞いてくれているだけで僕もうれしいし、美玲さんも前向きになれている。これはウィンウィンだね」



「そうだね笑」



「そして――」



「クレアさん、ありがとう。私話聞いて今までの自分がちっぽけに見えた。これからは広い世界が見えそう」



「それはよかったよ」



私はなんて小さな石に戸惑っていたのだろう。見るべきものはもっと大きくて、足元よりもずっと先にあるものだって。話を聞いたおかげで、私は自然と顔が上がった気がした。



「私、今の仕事辞めます」



「おおそうか、突然言うからびっくりしたよ。自分に合わないと思ったらやめていいと思うよ。あ、自分に合わないと言えば……」



「その話はまた今度ききますよ」



「そうしてくれ、もう寝る時間だからな、長話はよくないね」



「ですね」



「ところで美玲さん、今の仕事やめたら、どこに就こうと考えているんだい?」



「私、カウンセラーになるよ。私みたいに悩んでた人の顔を上げられるような、そんな人に」



「いいことだと思うよ。悩んでいる人のそばにいてあげてね。困り船は?」



「大丈夫ですよ。一人乗りなんてさせませんから」



クレアさんとの会話は終わり、時間を見ると約二時間半ほど経過していたことを知る。クレアさんには感謝しかない。





自殺なんてしたくない、私の人生に私は必要不可欠なんだから。私の力で誰かに寄り添いたい。



私の未来は虹がかかっているにちがいない。完璧じゃなくていい。ただ目標のために前を見るだけだ。



いつか、私の存在が必要であってほしいから。


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私の未来 かわき @kkkk_kazuya

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