信じられない力
仲仁へび(旧:離久)
第1話
デートして町を歩いていた時、その不幸な出来事が起きた。
事故で制御不能になった車がこっちにつっこんできて、近くにあった太い電灯の柱にぶつかった。
その影響で柱がぐらりと傾いて、倒れてきた。
僕は少し離れていたから、彼女にかけよれなかった。
あの時ほど、近くにいなかったことを後悔した事はないよ。
結果、つきあっている大事な彼女が、重い柱の下敷きになってしまった。
それを見た時、できるかどうか考えるよりも前に、体が動いていたんだ。
「今、助ける。大丈夫、絶対助けるからっ!」
とにかく必死だった。
彼女を助けなければ、とそれしか考えていなかった。
声をかけて、励まし続けながら、僕は手を動かす。
柱を手で支えて、精いっぱい持ち上げようと歯をくいしばった。
後から聞いた柱の重さは信じられなかったよ。
でも、できた。
持ち上げる事が出来た。
柱をどかして、下敷きになった彼女を助ける事ができたのだ。
事故を見ていた周りの人が、彼女の体を移動させてくれたから、僕はすぐに手を離してしまったけどね。
僕、実はあんまり体が強くなくて、重たい物を持つなんてそんなにした事なかったんだよな。
でも、事故が起きた時は緊急時だっから、体のリミッターみたいなのが外れたのかな。
人間は危機的状況に面した時、火事場の馬鹿力っていうのが出せるみたい。
確かに、あの時は信じられないくらい力が出ていたな。
きっと彼女を助けたい一心だったからだ。
愛の力がなした奇跡だよ。
なんて言ったら、退院した彼女は「その言い方は、恥ずかしいよ」と照れていたけど。
そして「もうあんな奇跡は起きないね」と彼女はいったけど、そんな事はない。
だって僕は彼女が好きだから。
君の危機なら何度だって、信じられないくらいの力を出せるはずだ。
もちろん危機なんて、ないに越したことはないけど。
信じられない力 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます