第60話
ザーシュゲインのコクピットはシンプルだった。
一人用の手すり付きシートに手すりの先端にクリスタルのボールが付いているだけ。
ぼくがシートに座ると、背もたれの背後から肩の上から胸までを固定するバーが降りて来た。
両手をクリスタルのボールに添える。
ザーシュゲインが話しかけて来た。
《パイロット笹凪優。脳波リンクを開始。これより私と貴女は一つになります。私は貴女の新たな
「うん。言ってる事はさっぱりわかんないけど、リンクすれば全部わかるんでしょう?」
《その通りです》
「じゃあやって! とうまにあんな事した敵を・・・やっつけるんだ・・・!」
《パイロットの了承を確認。リンク開始》
眩暈がする。
額の内側に画面がついたみたいに、いろんな情報が流れ込んできた。
気持ち悪い・・・。でも、我慢する。
ああ・・・そうか・・・これがザーシュゲイン。
これが、スーパーロボット!
ぼくが・・・ぼくとして戦う!!
突如出現したスーパーロボットを正面に捉えて、戦隊長は面白そうに笑った。
【ひゃひゃひゃ、そうかいそうかい。完成してたんだなあ現地星人のスーパーロボット! 体格は俺のロトン・ロトンといっしょくれえか。だが・・・以前出て来た時より女っぽい身体つきしてんなあ。虐めがいがありそうだぜ!!】
ロトン・ロトンがグラウンドに向かって突撃し始めるや、地上からオクスタンの対空攻撃が上がってきて一旦後方に滑るように戻る。
レイラが各機に命令を飛ばしていた。
『あの機体を近付けさせるな! 撃て撃て撃て当てずっぽうで良い弾幕を絶やすな!!』
【チッ、鬱陶しいゴミ虫どもめ・・・。そんじゃあまず、テメェらから潰してやるよ!!】
ロトン・ロトンが地上に降りる。
射線が建物に遮られて、狼狽える二五式隊。
『円陣を組め! 外方に警戒、見えたら迷わず撃て!』
本庄の四一式が上がって来て柿崎の左隣に降り立った。
『おせーぞ本庄!』
『エレベーターがスーパーロボットに吹き飛ばされて! そんな簡単には!?』
『もっと早く来れたろうが!!』
『下は下で色々あったんだよ!!』
『黙れヒヨッコども! 周囲を警戒しろ!!』
言い合いをしていると、レイラに怒鳴られる。
全機が周囲を警戒する中、攻撃ヘリ部隊が上昇をかけつつ地上掃射を開始した。
市街地に炎が上がる。
猛烈なロケット弾の雨をすり抜けてロトン・ロトンがヘリ部隊の真下からシックルで斬り上げようと急上昇したところに、それを感知した優のザーシュゲインがほぼ真横に飛翔して飛び蹴りを横っ腹に喰らわせて吹き飛ばした。
【なにい!?】
「この・・・やろうー!!」
ザーシュゲイン・ツヴァイが腰の後ろからハンドガンを引き抜きビームを三斉射する。
ロトン・ロトンはそれを建物を盾に左右に滑るように飛んで回避し、ビームサブマシンガンで応戦して来た。
優が左前腕を胸の前に立てると、緑色の光のシールドが出現してビームを吸収するように無効化する。
ロトン・ロトンが軽くジャンプして頭上から踊りかかって来た。
【小賢しいなあ! 女ロボ!!】
「なんのおー!!」
空中に両脚を畳んで身体を縮こまらせて両肩のシックルを振り下ろして来たロトン・ロトンの攻撃を後ろに飛び退って躱すと、優のザーシュゲイン・ツヴァイはハンドガンの上部にビームサーベルを発現させて振り下ろし、一文字に薙ぎ払う。
ロトン・ロトンが仰け反り、バック転してそれを躱した。
レイラがローグキャットをスラスターでジャンプさせてアイングライツ戦技学校の屋上に降り立つと、ロングライフルを二機が戦う戦場に向けた。
優が奮戦する戦場を静かに狙い続ける。
ロトン・ロトンが笑った。
【ひはははは! 攻撃が直線的でわかりやすいなあ、小娘! テメェは八つ裂きにしたら中身をじっくり遊んでやるぜ。楽しみにしとけよ! なあ!?】
「ぼくは・・・負けない!!」
【一発もテメェの攻撃は当たらないんだがあ!?】
ビームサーベルの斬撃を後退しつつ躱してロトン・ロトンがビームサブマシンガンを乱射すると、優のザーシュゲインは左腕を立ててシールドを発生させて凌ぐ。
その隙を突いてロトン・ロトンがダッシュして前に出ると、それを狙っていたかのようにレイラのローグキャットからロングライフルの狙撃が撃ち込まれ、間一髪で身を翻して躱すロトン・ロトン。
ザーシュゲイン・ツヴァイが左脚を蹴り上げてビルの残骸のコンクリート片をロトン・ロトンに蹴り付けた。
コンクリートの礫を腕とシックルを閉じて防御するロトン・ロトン。
すかさず優はザーシュゲイン・ツヴァイのハンドガンモードでビームを放ち、ロトン・ロトンが左に身を捩って躱すと、ザーシュゲイン・ツヴァイが言った。
《シールドブーメランモードで追撃を》
「ブーメラン!? コレかあ!!」
左腕を立ててシールドを発生させると、大きく後ろに左腕を振りかぶって勢いよく前に振り出す。
「シールドブーメラン!!」
円形の光のシールドが、縁端部に丸ノコのような刃を発現させて高速回転しながらロトン・ロトンに向かっていく。
大きくジャンプして躱すロトン・ロトン。
レイラの狙撃がそこに襲い掛かり、さらに上昇して躱したロトン・ロトンの左脚に、回転しつつ追尾して来たシールドブーメランが飛来して膝から斬り飛ばした。
【チイッ、妙な攻撃をしやがって!】
トンボのように空を自在に飛び回り、真上から急降下攻撃を繰り出すロトン・ロトンに、二五式部隊の対空砲火と四一式のレーザー砲が襲い掛かって急降下攻撃を阻止した。
苛立たしげにローリングして回避したロトン・ロトンがビルに激突しそうになって軽く上昇した際、一瞬だが機動を停めて滑空状態になる。
ザーシュゲインが再び言った。
《ソウルインパクトショットを》
「よくわかんないけどそれだあ!!」
ザーシュゲイン・ツヴァイがハンドガンをかなぐり捨てて、両手を突き出して両手の平をロトン・ロトンに向けた。
手の平の前に緑色の輝く光の球が発現し、大きさを増していく。
【なんだ!? チィッ!!】
急上昇を図ろうと空中で身を縮めたロトン・ロトンに、
【ぐう!?】
一瞬で最大までチャージした緑色の光弾。
ザーシュゲイン・ツヴァイが右足をやや後ろに踏ん張って、
「いけえ! ソウルインパクトショットーーーーー!!」
優が魂を込めて叫び、光弾は直径20メートルにもなるビームの束と化して発射され、
【な、なんだと!? うおおおおお!! 俺がアアアアア!?】
ロトン・ロトンの全身を包み込んで空へと押し戻していった。
【アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?】
ビームの高熱に焼かれ、機体がバラバラに破壊されて行く。
頭部のコクピットを守る頭蓋を破壊されて、戦隊長は輝く光に飲まれて影と消滅した。
粒子レベルで分解されて、ロトン・ロトンの残骸はキラキラと風に流されて天高く舞っていく。
ザーシュゲイン・ツヴァイのコクピットの中で、笹凪優はシートにずしりと背中を預けて大きく呼吸をする。
「やったよ、とうま・・・。仇・・・討ったから、ね・・・?」
落ち着きが戻ってきて、急に涙が込み上げてくる。
大粒の涙が頬を伝って、優は声を出して泣いた。
じっと佇むザーシュゲイン・ツヴァイを守るように、攻撃ヘリが四方に展開して警戒を続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます