魔法国家
剣『ここで、ちょっと重要なことなんですが、実は魔法国家ほど、ツリマ人に寛容でないと言いましたが、よく考えるとおかしくないですか?』
チ「確かにおかしいんだにゃあ。魔法国家は古くからツリマ人と共生していてもおかしくないんだにゃあ」
剣『実は理由があって、『片方が魔族』と呼ばれていたからです』
チ「片方と言うのは何かにゃあ?」
剣『カタン人の場合はツリマ人を魔族と言い、ツリマ人はカタン人を魔族と呼んでいたんです』
チ「にゃあ……それってもしかして……」
剣『はいその通りです。魔法国家には常に『魔王と魔族を殲滅した』という伝承が残っています。それはすなわち相手の人種を滅亡させていたんです』
チ「人類は過ちを繰り返すんだにゃあ!」
剣『そんな理由があるので、元々血みどろの争いをしてきた彼らなので、相手に対して良い感情を抱かないんです。それ故に魔法国家は片方だけの政府を作っていることが多く、これだけ発展しても受け入れには消極的なんです』
チ「根深い問題にゃあ!」
剣『そして、問題はそれだけではありません。魔法国家は科学自体を嫌います』
チ「それは何故かにゃあ?」
剣『科学を邪道として見ており、自分たちの魔法こそが正しい世界の法則だと思っているからです』
チ「頭が固いんだにゃあ」
剣『実はこれには魔法技術の特性に起因しております』
チ「何かにゃ?」
剣『魔法技術はアウルの運用に関しては科学の何倍も上手いんですが、これは言い方を変えると『職人気質』でもあるんです』
チ「そう言えば、さっきも熟練が云々という話がでてきたようにゃ……」
剣『言うなれば直感的な操作に頼る傾向があるんです。兵器も職人の手作りが良いとか、クォリティ自体は高いんですが、使用者の腕に左右されやすい傾向があるんです』
チ「困った話しだにゃあ」
剣『そのため、精神論が横行しがちで、古いやり方にしがみつきやすい。技術革新があっても足を引っ張りがちの傾向があります』
チ「困った人達だにゃあ!」
剣『それはプラスにもなるしマイナスにもなるんですけど、閉鎖的な考えに繋がっているのはこれが原因ですね』
チ「あんまり良くないんだにゃあ」
剣『それから、実はコンピューター技術は逆に科学の方が有利です』
チ「にゃあ? なぜにゃ?」
剣『熟練の技術に頼りがちゆえに、そんなにコンピューター技術を必要としなかったんです』
チ「????」
剣『例えば、小さい模様を掘る技術が必要だったとしましょう』
チ「にゃあ」
剣『これは言うなればICチップとか集積回路を作るのに必要な技術ですね?』
チ「そうだにゃあ。あの小さなチップの中に恐ろしく複雑な回路が組み込まれているんだにゃあ」
剣『ところがそれを作るのにもICチップの技術が必要になりますよね?』
チ「にゃあ?」
剣『だって、そこまで細かい模様を掘る技術は人間の手では無理ですから』
チ「確かにそうだにゃあ……でもどうやって作ったのかにゃあ?」
剣『簡単です。最初は手作業で出来る回路を作り、それを使ってより細かい回路を作れる機械を作り、それを使って更に細かい回路を作る。これを繰り返してあんなに小さい回路を作れるようになったんです』
チ「気が遠くなるんだにゃあ!」
剣『これをやるのに何が大事かわかりますか?』
チ「……根気?」
剣『確かに根気も必要ですけど、答えは『経済活動』です』
チ「???? どういうことかにゃ?」
剣『つまり、最初は手作りの回路で細かい模様を掘る機械を作るでしょう?』
チ「作るんだにゃ」
剣『それを売ったお金と機械で更に細かい模様を掘る機械を開発するんです』
チ「にゃあ……」
剣『そして、そのお金で更に細かい模様を掘る機械を作る……勿論、他の会社も負けてはいられません。同じように切磋琢磨しますよね?』
チ「にゃあ! つまりは競争してドンドン小さくなっていったんだにゃ!」
剣『その通りです。ここで困ったアクシデントが起きます』
チ「何かにゃ?」
剣『魔法技術は頑張ればコンピューター無しでも宇宙まで行けるんです』
チ「凄い技術だにゃ!」
剣『アウルエンジンの特性に『回すほど浮力が発生する』と言うのは宇宙までの距離を極めて短くします。それ故に古い技術でもあっさり宇宙まで行けるんです』
チ「凄いんだにゃ!」
剣『どれぐらいで行けるのかと言われると、地球に換算すると1600年ぐらいで宇宙まで行けちゃうんです』
チ「徳川家康が宇宙に行けるんだにゃ!」
剣『ところが、ここからが長い。宇宙空間では空気が無いんですけど、その空気を溜めたり、清浄化したりを常に行わないといけません』
チ「確かにそうだにゃ」
剣『ですが、コンピューターが無いので、人が寝てしまうと止まってしまうんです』
チ「死んじゃうんだにゃ!」
剣『地球に換算して2000年ぐらいで既に火星ぐらいの距離の惑星に行けたりはするんですが、この問題が中々解決できずにいたんです』
チ「その程度で行っちゃダメな距離だにゃ!」
剣『そして、これが一番大きい。回路の小型化をかなり長い間職人の腕に頼っていたんです』
チ「とんでもない技術だにゃ!」
剣『というのも、よほど回路を小型化しないと熟練の腕の方が上なんです。何しろ魔法で作ると言うのは小さいマジックハンドを作ることに技術競争が偏っていたんです』
チ「にゃあ! マジックハンドぉ!!」
剣『そうです。魔法はアウルで物を動かせます。となれば、手を小さくする方が楽に小さい物が作れるでしょう?』
チ「い、言われてみれば……」
剣『しかもそっちにばかり競争していると、固定概念にとらわれがちです。さっきも言いましたが魔法は職人技術に頼るんです。さて問題です。こういう状況の場合、技術者にどういう命令をするでしょう?』
チ「えーと……もっと小さいマジックハンド作れ!……かにゃ?」
剣『正解です。だから開発が遅れたんです』
チ「便利な技術だと思ったけど、意外な弱点があったんだにゃぁ……」
剣『便利な物だからこそ頼ってしまうと言うのは多々あるんですよ。そして、これも重要なんですが、有利な物を持っているとそれが完全に無効になるまで持ち続けてしまうのが人間なんですよ』
チ「いつの時代も大変だにゃあ」
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