悔哀凛戦

星色輝吏っ💤

プロローグ

 ……やられるわけにはいかねえ。あと少しだ――――6秒。


「5」叫ぶ。駆けて、そして跳ぶ。



 ダッ——‼ ……空中戦になるか。


「4」もちろんスキルで体力を底上げしているが、それにしてもむごいな。グロさ全開だ。



「3」バタリ。倒れていく人々を見つめる。見えざる魔物。スキルではない。全てアイツの魔法が関係している。



「2」走れ。――俺は普通だったんだ。



 前世の記憶を生かせば、この世界も容易いと思っていた自分が許せない。


 回復ポーションを正面に投擲。唇を噛み締め、ただ走り、ただ跳び、ただ避ける。飛んでくる短剣も魔法も今の俺には、無意味だ。



「1」――つまり、この数字が意味することとは。



 あと1秒。1/10×10秒。短いように感じるが、意外と長い。速度が上がっているとはいえ、棒高跳びの世界記録なんかゆうに超す高さを飛び、足を振り上げる。


 ブウンッ。――あと0.002秒。刹那の時間だが、これもまだ長い。まだ動ける。そして。


 カチ。時が止まったように感じた。そして、やっと……俺は奴の頸を斬った――いや、そう錯覚したのだった。



 俺は…………心臓を貫かれて殺されていた。

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