それで言い訳?

 二学期になった。なったけど……なんか学校に行き辛い。

(夏休みの間に停学が二人か。皆どんな反応するんだろ?) 

 停学になったのは、沖田君と百合崎さんの二人。百合崎さんは短期だけど、沖田君はかなり長めで留年になるらしい。

しかも、どっちも織田君グループに所属していた。普段から仲間やダチとか言っている陽キャの皆様は納得出来ないと思う。

 でも、徹や竜也に絡んで行ったらしっぺ返し……どころじゃなく、ガチ制裁を受けてしまう訳で。

 僕が一番ターゲットになる気がします。そうなったら、一人で暴走せず、きちんと周囲に相談しよう。


 ……僕の覚悟を返して欲しい。


「なんか平常運転過ぎない?もっと騒ぎになっていると思ったんだけど」

 教室にはいつも通り織田君ハーレムが出来ていた。でも、誰も沖田君や百合崎さんの心配をしていない。

 流石に薄情過ぎないか?


「むしろライバルが減って喜んでいそうだよな。おーい、竜也、大丈夫か?」

 徹はハーレム軍団より、机に突っ伏しているアイドルが心配らしい。


「大丈夫だよ。ちょっと疲れているだけだし」

 確か昨日は大阪でコンサートだったんだよな。全力でコンサートをして、次の日は通常営業なんだから、芸能人って大変だよね。


「そうは見えないけど、休んだ方が良かったんじゃないの?身体は大事にしなきゃ」

 僕はいつもの面子で話せるから嬉しいけど、流石に心配になってしまう。


「信吾、それブーメランだぞ。竜也も、お前にだけは言われたくないと思うぜ」

 確かに、それはそうだけども……良く考えたら、クラスの人達から怪我の事を何も聞かれていない。僕、影が薄すぎない?


「確かにそうだね。信吾君、それで秋吉さんと進展はあったの?……流石にあったよね?一週間も一緒にいたんだし」

 竜也、地雷を踏んじゃった様な顔になるのは止めて下さい。僕が哀しくなります。


「なんもねーよ。ったく、パートの人も呆れていたみたいぞ。皆『信吾君だもんね』って言ってたらしいぞ」

 らしいって言うか、それ確定情報だよね。情報源は夏空かのじょさんなんだし。


「無理だって!家には家族もいるんだし。それに……」

 横目で織田君ハーレムを見る。そこには笑顔の秋吉さんも混じっている訳で。


「言い訳は禁止な。信吾、お前は振られるのが怖くて、織田を言い訳にしているだろ?それで自分の気持ちから逃げている。違うか?」

 徹のやつ、前まではこっちサイドだった癖に……彼女が出来たたら強気になりやがって。

(織田君を理由にして、自分の気持ちから逃げているか……その通りだよ!)

 事実だけに反論出来ません。だって織田君を好きじゃないからって、僕を好きって事にはならないんだし。


「竜也、徹がいじめる!リア充なった途端、強気になりやがって。僕に、そんな度胸があると思うか?」

 スペックやランクの話は持ち出さない。

だって、徹はマーチャントグループの事を隠しながら、ランクSSな夏空さんと恋人になったんだし。

 むしろマイナスポイントだったんだよな。


「そう言えばランチ会っていつになるの?出来たら、コンサート中にして欲しいな。また体重が減ったんだよね」

 コンサートの動画を見たけど、二時間全力で歌って踊って物凄いカロリーを消費していると思う。

 つまり、今回はあまりカロリーを気にしなくて良いと。


「桃瀬さんの予定も確認をしたし、夜にでも伝えるよ。信吾、今回はうちの店で食材を買ってくれ」

 桃瀬さんの話が出た途端、竜也の頬が少し赤くなった。

 人気アイドルと美少女アスリート……僕と秋吉さんより、はるかに釣り合っているけど。

 色んなしがらみがあるから、違う意味でハードルが高そうです。

(アイドルのユウじゃなく、竜也自信を好きになってくれる可能性か)

 桃瀬さんが普通の女の子だったら、可能性もあるんだけど。


「分かった。他に条件とかある?」

 マーチャントスーパーの品揃えは充実しているから、厳しい条件にはならないと思う。

 でも、自由テーマってかえって難しいんだよね

 今までは“桃瀬さんの食欲が湧く物”とか“イタリアンの賄い”みたいに縛りがあった。。

 今回は強いて言えば、コンサート中の竜也にパワーを付けてもらうなんだけど、大っぴらには出来ないし。


「それならテーマは“秋”だ。お前の料理は賄いが基礎になっているから、作りやすくてレシピが好評なんだよ」

 ちゃっかりと言うか、徹は僕が作った料理のレシピをマーチャントスーパーに置いているらしい。


 バイトに復帰、イコール秋吉さんの送りも復帰なのです。


「信吾君、なんか嬉しそうだね」

 ここで秋吉さんと送れるが楽しいって言ったら……引かれるか。勇気も大事だけど、現実直視はもっと大事。


「うん。やっぱり厨房で動いていると充実感が違うんだよ」

 忙しくて大変だけど、料理をしているんだって実感が湧いてくる。

 僕の居場所は厨房なんだと改めて実感しました。


「お部屋にいた時から、ウズウズしてたもんね。ランチ会のメニューは決まったの?」

 いや、ウズウズよりドキドキの方が強かったです。


「まだだよ。条件は食材をマーチャントスーパーで買う事と、秋をテーマにする事。漠然とし過ぎているんだよね」

 今は九月。いくらマーチャントスーパーとはいえ、秋の食材はまだ少ないと思う。


「陽菜と紅葉達も参加も呼ぶんだよね?……信吾君が皆に食べてもらいたい物で良いんじゃないかな?」

 僕が皆に食べてもらいたい料理か。色々考えてみよう。


「そうだ!忘れていた。徹がスリーハーツのチケットを手配出来たから、見に行けるか聞いておいてくれって」

 もう完売に近い状態だったらしいけど、スポンサーと事務所の力で五枚ゲット出来たらしい。まあ、竜也はどうやっても見に来れないし。


「行くっ!そうだ。信吾君、帰りゴンドラに乘ろう!紅葉がロマンティックで素敵だったって自慢されたんだよね」

 確か探も言っていたよな。夜景が綺麗だったって。

 これはチャンスなんでしょうか?

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