クソゲー転生譚

@nagi7412

第1話

「ありがとうございましたー」


商店街にあるゲームショップで中古ゲームを買った俺は上機嫌で店を出た。


2年前からずっと探していたが生産数が少ないせいもあってか、

ネットでも全く出回らなかったゲームソフトが奇跡的に入荷された事を知って学校が終わったと同時にダッシュで向かった。


学校にいる間は買われていないかとずっと落ち着かなかったが無事買う事が出来て満足だ。


早く遊びたくて俺は早歩きで帰路に向かっていたその時…


「え?」


信号が点滅中に渡っていた時トラックが猛スピードで走ってきて

俺は衝突する直前で意識を失った。



「…て…」


…誰だ…声が聞こえる…


「…きて…」


しかもこの声…どこかで聞いたような…


「…早く起きなさーい!!」


バシンッ!


「痛ッ!?」


横顔に痛みが走りだし俺は飛び起きた。


「…」


目を開けると見たことのない部屋


右にはムスッとした顔の外人女性が立っていた


「ホラ!今日は試験の日でしょ!外で待ってるから急いでね!」


そう言うと女は部屋を出て行った。


試験?何言ってるんだ?でも何かデジャヴ感を感じる


「…」


取りあえず行くか…


俺はベットから起きて壁に掛けてある上着を着て部屋を出た。


居間を通って外を出るとどうやらここは山の中のようだ。


「ようやく来たわね」


声のした方を見るとさっきの女が立っていた。


「じゃあ早速きましょうか」


そして女は遠くに見える街に向かって歩きだした。


「…」


取りあえず…ついて行くか、何か思い出すかもしれない


俺は女の後を付いていった。



歩き出して1時間…ようやく街に着いた。


そして俺は歩く道中で何のゲームか思い出した。


タイトルは思い出せないが有名シリーズのゲームだ。


先月遊んで遊んだばかりなのに何で忘れたんだか…


でもこのゲーム…結構だれるんだよな…


一日5時間遊んでクリアするのに20日もかかってマジで疲れた


キャラクターは良いんだけどストーリーが長いわストーリー中で闘う敵が強いわでめんどくさかった。


元の世界に帰るにはクリアしないといけないのか?


こういうときステータスとか言ったら目の前に何か出るかと思ったが何も出なかったしどうすればいいんだ…


「フィーン!何してるのー!」


考え事をしていたせいか気づかない内にあの女…エリスと離れてしまっていた


彼女は主人公である俺フィン・ランドールの幼馴染でパーティの役割は補助担当だった


一応ヒロイン枠だからか成長すると優秀なヒーラーに成長する


「あー今行くー」


俺は小走りでエリスの所まで向かい横並びで街に向かった


門番に軽い挨拶をして街に入ると大いに賑わっていた。


奥にある城を見ると多くの人間が集まっているのが見えた。


「もう受付が始まってるわ!急ぎましょ!」


エリスは俺の手首を掴んで走り出した。


はぁ…ゲームじゃここで暗転してお城前まで行けるんだが一体どれくらいかかるんだか…


俺はやれやれと思いつつエリスに引っ張られる形でお城に向かった。



走り出して数十分


人混みを掻き分けてようやく城門に着いたが誰もいなかった。


「あれ?門番の人がいない…」


エリスは辺りをキョロキョロ見回して誰かいないかを探した。


まぁこれもゲームのイベント通りだから俺は特に驚く事は分かった。


この後はたしか後から来た兵士に締め切りだと言われて落ち込みながら帰る事になる。


(後は兵士の人が来るのを待つだけ何だが…)


おかしい…本来ならもう来るんだが一向に来ない…


エリスは周囲を何度も見渡しているし一体いつ来るんだ…


「…エリス、もう締め切りみたいだから帰ろうぜ」


後俺を掴んでる手を離してくれ…


「そんな…せっかくチャンスが来たのに試験も受けられないなんてイヤ!!!」


そう言うと掴んでる手を強く握りっだした。


とは言ってもなぁ…受ける事が出来ないのは決められた運命だし何て言えばいいのやら…


そんな感じで立ち往生していると門番の横にある小さい扉から兵士が出てきた。


兵士を確認したエリスは兵士に向かって走りだした。


「すいません!」


「ん?」


「あの…騎士団の入団テストに参加したいんですけど…」


「入団テスト?ああ…それならもう終わったよ」


「え!?」


「実は今さっき予定人数が埋まってしまってな。」


「そ、そんな…」


終わった事を告げられエリスが膝から崩れ落ちた。


エリスは農村の娘で独学で魔法を習得した天才とか言われてたな。


だから騎士団に入って両親を安心させたい…とかあったけど、

そこまで拘る事かね…?


当時はそんな風に思ってたがリアルで見てしまうと気の毒に思うな…


「エリス…もう帰ろう」


俺はエリスを介抱しながら帰路に向かった。


明日は筋肉痛かもなぁ…はぁ…


そして翌日…


案の定足が筋痛になった俺はベットの上でマッサージしながら今後の事を考えていた。


この後はまた街に行って冒険者ギルドに行って登録をしてレベル上げだったな


特定のレベルまで到達したら緊急の依頼が発生すると…


まぁゲーム中でも感じていたけどありきたりな内容だよなぁ


取りあえず痛みが引いたらエリスの所に行くか


「…あ、そういえば」


確か家の裏に宝箱があったよな…


本来はストーリークリア後にか行けないけどもしかして…


俺は痛みが引いたのを確認し家を出た。


そして裏に回りこむと普通に宝箱が裏庭の真ん中に置いてあった。


ってか普通に裏庭に回りこめるんかいっ!


本来は木々で裏庭が見えないようになって家の中にある扉から入らないといけないのに…


しかも柵も跨って越えられる高さだしこれ普通に取れるよな?


「…」


俺は石ころを拾って柵に向かって投げて見ると弾かれること無く裏庭にある植木鉢の中に入った。


「…マジか」


入れることを確信した俺は柵に跨り裏庭に入り宝箱の前に立った。


「…あ」


そう言えばコレ鍵がかかってるんだった…


そしてその鍵の入手条件が鬼畜だったのも思い出した。


おかげで獲る気が失せて箱の中身も知らないし


ってか攻略本でも載ってないって一体何の冗談だよ…


まぁこれは順々に達成していくしかないか


とりあえず今はエリスの所に行って冒険者登録に行かないとな…


俺は気を取り直してエリスの家に向かった。



「おーい!エリース!」


俺はエリスの家の外から叫んで読んだ


しかし反応が無い


さっき農作業中のエリスの両親に聞いたら家で寝込んでると言ったからいるはずなんだがもしかしていないのか?


待ってるのも何だし俺だけで登録して資金集めでもするかね…


俺は振り返り街に向かった。



「ハア…やっと着いた…」


俺は数時間歩いてようやく冒険者ギルドに着いた。


ゲームだと移動はやたら長いムービーだけだから楽だと思っていたが実際歩くと大変だ


そりゃゲームじゃないし直接ワープできる装置なんて無いのは分かるけどこれをクエストクリアして帰ってきての往復を繰り返すとなると何か月もかかるな…


取りあえず登録しておくかと俺は冒険者ギルド入り口のドアを開け中に入った。


「おお…」


中に入ると多くの冒険者たちが集まっていて、

酒場も経営しており昼間なのに飲み潰れている冒険者も何人もいる。


ゲームで何度も見た光景だから何だか懐かしく感じる。


っとまぁ思い出に浸ってる場合じゃない。


俺は奥にいる受付嬢に向かって歩き出した。


「こんにちは!ようこそ!冒険者ギルドへ!」


受付嬢は元気よく大きな声であいさつをしてきた。

このセリフもゲーム中でイヤと言うほど聞いた


「すいません…冒険者登録したいんですが…」


「登録ですね!ではこちらの紙に氏名をお願いします!」


そう言って渡された紙に今の自分の名前フィン・ランドールと記入し受付嬢に渡した。


「ハイ!ではこちらのライセンスカードをお受け取りください!」


渡された青色のカードを見ると【Fランク】と表記されていた。


Fランクは一番下のランクで上に行くにはクエストをこなして行かないといけない。


ランクカードは青→黄→緑→白→銀→金の順で更新されランクアップ対象のクエストをクリアしたと同時にカードが上のランクに自動で切り替わる。


ゲームだとショートムービーだったけどリアルだとどういう感じに変化するのんだろうか?


そこはゲームでも思っていたから実はちょっと楽しみだったりする。


よし!じゃあ早速クエストを開始するかな。


俺は右側の壁に貼られているクエストを見てみた。


クエストは討伐・採取・運搬・特殊に分けられている。


特殊はランクアップのクエストで受付嬢に直接教えて貰う形になるからここに貼られてる事は無い。


レベル上げをするなら討伐系のクエストが良いんだが一人だと回復アイテムを持ち込まないといけないし出費がかさむんだよな…


運搬は他の国が解放されないと受けられないから今は無理だし後は採取クエスト。


今は貼りだされているクエストは…お!あったあった


俺は目的の依頼紙を剥がして受付嬢の所に向かった。


「すいません、このクエストを受けたいんですが…」


俺はさっき剥がした紙を受付嬢に渡した。


「えーっと…アカダケの納品依頼ですね!かしこまりました!」


「あと聞きたいことがあるんですがいいですか?」


俺はゲームで遊んでいた事を思い出した。

あの時はかなり苦労したがそれはゲームの設定上仕方が無かった


「ハイ!何でしょうか!」


さて…果たしていけるかどうか…


「依頼で書かれている必要数以上の数持ってきた場合はどうなるんでしょうか?」


「必要数以上ですか?」


やっぱり無理か?


「そうですね…この依頼の場合だとアカダケ20個なのでもし100個納品された場合はクエスト5回分の報酬が貰えます!」


「…そうですか!ありがとうございます!」


「ハイ!ではよろしくお願いします!」


俺は軽く会釈してギルドを後にした。


でもまさか行けるとはな…ゲームだと必要数までしかは持てなかったから余計な往復を繰り返してたから面倒だったんだよな…


だが今はリアルの世界…体力は使うが台車とか使えば限界まで持ち込む事が出来る。


後はアカダケをひたすら採取するのみ…採取場所もゲームで覚えてるから楽勝だ。


それにしてもアカダケが何であそこにたくさん生えているのか…


アカダケは回復薬の調合に使う薬草


このゲームは回復薬がやたら高くて中々手が出せないおかげで、

回復魔法か調合を駆使しないといけない

だが調合も大分先にある調合レシピを入手しないと調合も出来ない


まぁ薬剤師が居ない時点で調合もへったくれも無いんだけどね


今思えば人気シリーズだがこの作品だけやたらク〇ゲー扱いされたのは7割方コレが原因なんだろうな…


だから序盤で回復魔法を使えるエリスの存在は無くてならない存在だ。


…そういえばエリスは今どこにいるんだ?


本来は二人で冒険者登録して討伐クエストをクリアするってのが本来の流れだったが寝込んでいるのか返事も無かった。


そういえば昨日送った時も騎士団子のことばかり言っていた。


でもなぁ…後々のことを考えると入団しない方が良いんだけど言ったところで信じてもらえないだろうしどうしたもんか…


「…」


…取りあえず採取を終わらせてからだな


俺はアカダケ採取の準備の為に家に向かって歩き出した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る