2.僕の気持ちをぶつけてやる

西日の差し込む教室で、僕は頭を抱える。


「どうしてこうなってしまったんだ……」


 悩んでも仕方がない。結果は結果だ。

 そうは思っても、心は納得しない。


「あ♪ 後輩くん〜」


 扉が開けられ、やってきたのはご機嫌な先輩だった。

 僕はその人をジッと睨む。


「え、え……っと。なに、かな?」


 先輩は急にモジモジとして落ち着かなくなった。


「そ、そんなに見つめられると、えへへ。照れるなぁ……」


 ムードメーカーを通り越して猪突猛進が過ぎる先輩は、普段の賑やかさは鳴りを潜めて恥ずかしげに小声で呟いてるけど、聞こえない。


 そんなもの知ったことか、僕の気持ちをぶつけてやる。


「先輩!」


「ひ、ひゃいっ!」


 先輩ににじり寄り、壁に手をつく。俗に言う壁ドンというやつだ。


「これ」


 僕は手にしていたバインダーを先輩の眼前へと突きつけた。


「え?」


 先輩は何が何やらという様子だ。可愛い顔でとぼけても無駄だ。


「先輩の意味不明な同好会の件ですよ」

「あ、後輩くん、生徒会の会計だったっけぇ……?」

「しらばっくれないでください」

「えっとぉ〜。ちょっとぉ〜。……あはは。使いすぎちゃったみたいだから、お金欲しいなあ、って……」

「そんな上目遣いをしてねだっても無理ですよ」


 可愛すぎる、と思ったのは内緒だ。


 今の本題を逸らされないように僕は負けじと先輩の目を射抜いた。

 すると先輩は驚いて、また頬を赤らめて様子がおかしくなる。


 ……なんの反応なんだこれは。風邪か? 


 放課後の教室。ふたりきり。けれど甘い空気なんてないはずだ。……ないよね?


 先輩が口を開かないので僕も少し焦り始めたころ、教室の扉がバンッと強い音を立てて開かれた。


 僕と先輩は同時にその方向を見る。


「……あ」


 声を出したのは僕だ。


 その子は、僕と同じクラスの女の子だった。

 いわば同クラさんだ。

 そんな慌てた様子でどうしたんだろう。普段は大人しい雰囲気なのに。


「み、みんなで一緒に駅前の小籠包専門店に……い、行こう!!」


 同クラさんは噛みながらそう言った。


 終始よくわからなかったけれど、僕たちは三人仲良く小籠包を食べた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今回の題目は「バインダー、ムードメーカー、小籠包」でした。

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