進展しない僕と先輩の関係

オオキ ユーヒ

5月

1.これで後輩くんは焼け死ぬんだよ

「タロット占いってこうやって使うんじゃないと思いますが……」


 僕と先輩がやっているのは、タロット占い……ではなく、カードの絵柄を使ったカードバトルだった。


 ルールは単純。


 1.相手の出したカードよりも強いと思ったものを出す。

 2.強いと思う根拠を言って、相手を納得させる。

 3.納得させられた場合は連続して次のカードを出すことができる。


 つまり、カードの絵柄からどれだけ強いエピソードを想像して納得させられるか。

 先にカードがなくなった方が勝ちだ。

 ルールは先輩が5分くらいで勝手に考えた。


 先輩の手札は残り1枚。僕の手札も残り1枚。


「どうした。後輩くん?」


 先輩は僕の顔を覗き込んでくる。


 先輩の出したカードは、「棒」のカード。

 タロットでは「火」の性質を持ち、「燃え上がる情熱」「直観」「創造性」「強い感情」という意味だった気がする。


「これで後輩くんは焼け死ぬんだよ」


 火は最強だと宣いながら先輩は高笑いしている。

 僕が出せるカードがなければ先輩の勝利だからだろう。


「ジュース1本奢ってもらえる〜♪」


 鼻歌なんか歌ってご機嫌だ。もう勝ったつもりでいるらしい。


「最強のカードを出しますよ」

「へ……?」


 そう言って僕が出したのは「死神」。

 最後の1枚であり、最強の1枚。

 不気味なガイコツが描かれているカードだ。


「先輩の業火に焼き尽くされて僕は死ぬ。そして死神になって先輩を呪い殺します」


 僕は先輩の火を受け入れることにした。


「そ、そんっ……な」


 先輩は膝から崩れ落ちた。


 先輩に手札はないだろう。なんてったって僕は死んでしまうのだから。

 蘇生できるような絵柄のカードはなかったはずだから、僕の勝利だ。


「先輩。ジュース。お願いしますね?」


 僕は勝者の笑みで先輩にたかる。


「く、くそぉ……。次は負けないからな。後輩くんっ!」


 先輩は涙目になりながら鞄から財布を取り出した。


「ほら、早く行こう」


 そう言って僕の手を引っ張る。


 いつも通り、はいはいと言いながら僕はされるがまま先輩の隣を歩く。


 そんな放課後だった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今回の題目は「ガイコツ、焼け死ぬ タロット占い」でした。

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