第4話

病院で彗耶に全て話してから私は手術の準備もあり入院することになった

彗耶は毎日大学の後に病室に来てくれた


「いいわね亜紗美ちゃんは」

「え?」

「毎日あんなにかっこよくて優しい彼氏がお見舞いに来てくれるんだもの」

同室の洋子さんが言った


「私も信じられないんです。こんなに幸せでいいのかなって」

「いいんだよ。今まずっと1人で耐えてきたんだから」

入り口から声が聞こえた


「彗耶」

私は彗耶に向かって微笑んだ


「屋上行かないか?」

「行く」

即答した私を見て洋子さんがクスクス笑っていた


「笑わないでくださいよ洋子さん」

「馬鹿にしてるんじゃないのよ。亜紗美ちゃんの素直なところ私大好きだもの」

「ありがと。じゃぁ行って来ます」

「行ってらっしゃい」

洋子さんに見送られて私たちは屋上に上がった


「ほら」

彗耶は屋上に出るなり上着をかけてくれた


「ありがと」

さりげないそんな優しさに照れくささを感じながらも喜びは隠せない


「どうかしたの?」

「え?」

「何かいつもと違うから」

私はそう言ってベンチに腰掛けた


「…手出して」

「手?はい」

私は首をかしげながら両手を前に出した


彗耶は私の左手をとると薬指に指輪をはめた


「これ…」

私はそのリングを見つめていた


「ずっと一緒にいような」

「彗耶…」

私の目からは涙がこぼれた


「泣くなよ」

「だってぇ…」

うれし泣きする私を彗耶が抱きしめてくれた

私も彗耶の背に手を回した


「来月亜紗美の誕生日に籍入れよう」

「彗耶…ありがと…」

涙がどんどんあふれてくる


「亜紗美」

突然誰かに呼ばれた


「由紀子…どうして?」

あの日以来会うことも無かった由紀子が照れくさそうに立っていた


「彗耶君から全部聞いた」

「…」

私は無言で彗耶を見た


「このままじゃいけないだろ?」

「…ありがと」

「俺下でタバコ吸ってっからゆっくり話せよ?」

彗耶の言葉に頷く


「じゃぁな」

彗耶はそういうと屋上から降りていった


「…ごめんね。黙ってて」

「ううん。多分同じ立場なら私もそうしたと思うから」

由紀子は苦笑した


「彗耶君とカナダ行くんでしょ?」

「多分ね」

「多分?」

由紀子が首をかしげる


「…ねぇ由紀子お願いがあるの」

「何?」

「もし手術が失敗したり、それまでに私が死ぬことになったらこれを彗耶に渡して欲しいの」

「何言って…」

由紀子の表情が険しくなった

それでも私は続けた


「私最近長い時間立ってるのがつらいんだよね。さすがに2年以上余分に生きてるだけに…」

「やめてよ!手術受けて元気になるんでしょ?そんな弱気でどうするのよ!?」

そう叫ぶように行った由紀子の目から涙がこぼれだす


「ごめんね。でもこんなこと由紀子にしか頼めないから…」

私はそう言って由紀子に手紙を渡した


「ちょっと疲れたから部屋に戻るね。由紀子に謝れてよかった」

私はそう言って微笑むと屋上を後にした

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