第2話 吾輩と三夜
この三夜という娘について少し話しておこう
歳の頃、35歳
私が生きていた頃ならともかく、現代では女盛りと言っても過言ではないであろうに意中の相手がいないという始末・・・
あぁ何と嘆かわしい
命短し恋せよ乙女とはいうものの三夜はその命をぞんざいに扱っているのではないかと心苦しくなる
しかし、見目が悪いわけではない
むしろ飛び抜けてというわけではないが比較的整った可愛らしい顔をしている
外に出ない時はまぁそれはそれとして、着飾り化粧をこしらえれば振り向く男もおるであろうに
三夜は女性の割に長身で痩せすぎず、太り過ぎずの体型にすっきりした顔立ちをしており黒く短めの髪を少し横からわけ顔にかからないようにしている
鼻はそこまで高くなく、何より印象的なのは目だ
くるっと丸い大きな目に長いまつ毛が揺れている
決して美人とまではいかずとも可愛らしい顔立ちをしていて言い寄ってくる男も男も居ることはいたが、本人はそういう男に興味がないようだ
風変わりな娘であるのは否めないだろう
飾り気のない三夜だが首には金の指輪を通したネックレスをしている
他に装飾をしないせいかその指輪は一際、存在感を強く放ち三夜の一つとなっている
そして三夜はよく笑う娘だった
三夜が笑うと私も心が暖かくなるのを感じる
そんな娘だ
『夏目〜聞いてる??
このあとどうしよう?』
そしてこの夏目三夜の職業は“小説家”である
しかも今ではかなり有名になったようで出した本は二作のみだが初作は朝ドラに起用され、2作目は2時間ドラマになったそうだ
今をときめく文豪というわけだ
しかし・・・
『ねー!夏目ってば!!夏目が話してくれないと何も描けないじゃない
次はどうなるの?』
実際のところ、小説を書いているのは三夜だがそれは書いて字の通り、書くことだけの話である
内容は全て私、夏目漱石が考え伝えた内容だ
従ってこの娘はゴーストライターに夏目漱石を持つ“偽者文豪”と言うことだ
『せんせーい』
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