偽者文豪の奇譚録

@nano_tsukiyono

第1話 吾輩は夏目である

吾輩は猫である


名前は“夏目”


どこで生まれたかとんと見当がつかぬ・・・


わけではないが 

なんでも薄暗いジメジメした所で にゃーにゃー鳴いていたことだけは記憶している


吾輩はここで初めて“夏目三夜(ナツメミツヤ)”という人間に出逢ったのだ・・・



・・・この文章は彼有名な“夏目漱石”の吾輩は猫であるの冒頭1ページ目の内容であるが少し違うのは私が吾輩ではなく、夏目という名の猫であるからだ


ここに一軒の平屋がある


そんなに新しくはなくボロくもなく味があるレトロな建物

それが私の横でパソコンを打っている娘“夏目 三夜”の家だ


日和がいい今日この頃、私は縁側で微睡んでいた

庭にはシロツメクサが無節操に咲き誇り白い花を風に揺らしている

猫は良い

寝たい時に寝

食べたい時に食べ

気ままに過ごす


そんな日常は頭が溶けてしまいそうだ・・・

暖かく薫風が鼻をかすめあと少しで眠りの世界へ落ちてゆく

ゆっくりゆっくり沈んでいく感じ

尻尾だけ少し揺らして

それももう止まる頃


『ねぇ夏目!!!!』


びくっ!!!!!

体が跳ね上がった

心の臓が大きく強く鼓動を上げている


何事だ?!?!


『もー何回も声かけてるのに〜

寝ないでよ〜私は仕事をしてるんだから〜』


三夜が私に声をかけていたらしいが、眠りにつくところで耳に入ってこなかったようだ


『聞いたところまで書いちゃったから続きの話してくれないともう書けないよー』


なにやら仕事が手詰まりだったようだ


『さて、どこまで話したか?』


『えーっとね、夏目の家が酒屋さんになってたっていうところまで』


この三夜という娘は頭がおかしいわけではない

いや、おかしいのかもしれないが、三夜は私と話すことができるのだ


そして、私は猫の夏目

この夏目は三夜の苗字が夏目な事もあるが、私の実名も夏目なのだ

実名?不思議なこと言うなと思われるやもしれませんが、改めて自己紹介させていただくとしよう


私の名は“夏目”

“夏目漱石”の意識を持つ猫である


そう、吾輩は“夏目漱石である”


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