(試作)願いを叶える代償に悪魔に魂を売ったら異世界に連れて行かれた。金貨と物理でぶんなぐる異世界無双!!

仇桜

第1話プロローグ

ランプの魔神然り、猿の手然り、願い事を叶えてくれると言う存在に頼るとろくな目に合わない話が多い。


それでも願ってしまうのはやはりそれだけ自分の願いを叶えてくれると言う存在は魅力的だからだろう。


流れ星とか宝くじとかそういったモノも同じだ。


どうせ結局一等なんて当たらない。でも当たった時を想像したら買ってしまう、割と真剣に願ってしまう、そんな感じだ。まあ少し違うかもしれないが。


とにかく楽に願いを叶えるというのは抗えないモノがある。


まして不幸になる可能性があったとしても願いが必ず叶うならそれに手を出してしまうのは当然のことだ。


それはただの馬鹿だと断ずる事は出来ないだろう。


うん、出来ないはずだ、多分。


目の前にそんな希望があったら誰だって手を伸ばすだろうがこのやろう!


だから俺は仕方がなかった、そういうことだ。


ああ、そういうことだ、俺は悪魔と取り引きしてしまった。


願いを三つ叶えるから魂をよこせとか言われてどうせ死んだ後の事だろうとたかをくくった俺は願いを言った。


即答だった。


迷いはなかった。


たまに友達とそんな馬鹿話をしていたから何を願うかなんて決まっていた。


そして俺が答えたその瞬間、俺は闇の中にいた。


「それで、俺はこれからどうなる?」


もう文句を言う気は起こらなかった。


そう言う存在だと理解した上で楽観的に考えた自分が悪い。


ただ単に俺が浅はかだっただけだ。愚かだっただけだ。


がっかりはしたが別に怒りは湧かなかった。


諦めモード全開だった。


すでに諦めモード全開の俺はもう口を開くのをやめた。


「ではお元気で」


それだけ言うと悪魔は俺にむけて手をかざし俺の意識が遠のいた。


目を覚ますとそこはなぜか壊れかけた教会だった。


「悪魔が教会に召喚するとか神に対する皮肉にしか思えねぇな。」


そういえば悪魔は天使が堕落したモノだと聞いた記憶がある。あながちおかしくはないのか?


「まあいいや、それにしてもやり取りがあっというまだったな。異世界ならステータスとか、唱えれば......」


ウタカタ ムゲン


レベル1


スキル

超能力テレポーテーションMAX、無限の財レベルMAX、アイテムボックスレベルMAX



なんでかほんとに出た。


レベルとスキルしかわからないが表示されたおかげで分かった事がある。


「あの悪魔いちおう願いはきちんと叶えてくれたんだな。」


俺は悪魔に三つ願いを聞かれたとき「生きている間は一生遊べる金」と「ゲームみたいなアイテムボックス」と「転移の超能力」と答えた。


まず金は言わなくてもわかるだろう。


なんてたってほとんどの人間が人生を金を稼ぐために時間を奪われる。


正直、俺は大半の人間を金の奴隷だと認識している。


金に支配され金に愛されたものが社会の勝ち組だ。


まあ世の中には仕事そのものが楽しいと思えるような奇特な人間もいるがそこは例外だ。


まあ話を戻すと人間は金に縛られて生きている。


例外はあるが大抵のことは金で解決できるし大体の人間の悩みは人間関係と金この問題に尽きるだろう。


まあ正直人間関係はどうしようもないが片方を解決できるなら他の人間よりはかなり有利な環境だ。


さて次にアイテムボックスは買ったモノを全部入れるためだ。


常に手ぶらで出歩けるというのは実に快適だろう。


それに元のおくびょうな性格やら貧乏性な価値観から全財産安全な場所に持っておきたい。


買い直せばいい話かもしれないがなんか盗まれてたり家探しされてたりしたら怖いし気持ち悪い。


そして最後に転移の能力は危険から逃れるためだ。


シンプルに不老不死や無敵の体なんかの方が安全性は高いのかもしれないが老衰も出来なかったり何をしても死ねなかったりするのは俺には呪いにさえ感じてしまう。


時間を止めるとかそういう能力も良いと思ったが時間関係はあまり手を出したくなかった。


時間が止まっている間俺だけ歳が進むのかとかそもそも時間が止まったら物を動かしたときどう作用するのかとかあまり難しい事は考えたくなかったからだ。


まあそれは置いておくとしてそれが叶った事はいい事だが元の世界だからこそ金があったら最高の人生が送れるはずだった。


しかしここがどんな世界かわからない以上金があったとしても簡単に地獄のような事もしくはシンプルに死ぬという可能性がある。


それにまだアイテムボックスの使い方や金の出し方もわからないし日本円札とか出てきたら終わりだ。


転移もこの世界の場所はどこの情報もないのに出来るわけもない。


まあアイテムボックスだけでも使えれば有能な運び屋にはなれるかもしれないがどうなんだろう。


そもそも三つのどれか一つでもちゃんと使えたら人生楽に生きていけそうだ。


そんな事を考えならどうか使えますようにと悪魔に祈りを込めながら試しに100円分の金よ出てこいと念じると500円玉くらいの銅貨が出てきた。


「よし!」


思わず声が出るほどテンションが上がった。


金があれば大体のことはうまく行くはずだ。


多分。


金持ちだった事がないのでわからない。


まあそれはそれとして次はアイテムボックスだ。


試しに銅貨を10枚だしたあとアイテムボックスをイメージして入れる仕草をしてみた。


銅貨は透明な空間に消えていった。


腕を突っ込んで大丈夫か不安だったが入れても俺の腕は空間に入った瞬間透明になるだけで無くなったりしなかった。


安堵でのため息を深々と吐きしゃがみ込んだ。


他にも能力の検証をいろいろしてから多少落ち着きを取り戻した。


これで多少はなんとかなりそうだ。


しかしいまだにこの世界の情報はほとんど、いやなにもわかっていない。


ここは妥当に金の力に頼って情報収集から始めるとしよう。


そう思ってまず教会から出た俺が探したのはこういう話の世界にだいたいでてくる肉を串でやいている店だ。


だいたいこういう崩れかけた教会があるのはスラム地区とかとにかく金を持っていない人間の集まっている地域だろう。


だからさっさと離れて食物を売ってるようなちゃんと賑わっている人の目が多い安全な場所にいきたい。


まあそういう話の世界ってラノベとかでしか知らないのだけど。


そして物語では無用心に適当に街を歩いたりすると主人公は大抵危ない場所に行ってしまう。


そこで主人公がめちゃくちゃ強い場合は自力でなんとかできるが弱い場合は運命の出会いとかでなんとかなる。


しかし現状の俺は確かに物語みたいな展開だがそんな物語みたいに都合よく助けてくれる存在が現れてくれるとは俺には思えない。


楽観的に悪魔に魂を売ってしまった俺が言うとどうかとも思えるが俺は俺の人生の主人公とさえ思っているが

さすがに物語の主人公並みに自分を過大評価するほど能天気なお花畑の頭はしていない。と、思う。


だから俺は今、耳と鼻に全神経を集中させて串焼きの露店を探した。


深く目を閉じて意識を集中する事体感二時間。


結果、ちっともわからなかった。


しかし下手に移動して危険なめにも会いたくない。


そんなこんなで集中力も切れ途中から魔力的なものが感じれないかなという現実から目をそらし始めた頃声がかけられた。


「にぃちゃんさっきからなにしてんだ?」


目を開けてそちらの方に目を向けると一番上は10歳くらいに見えるやせ細った子供の集団がいた。


「魔力を感じる修行だ。」


俺は適当に子供達に嘘をついた。


やってみようかと考え始めてはいたが俺はまだやるまでにいたってはいなかった。


しかも修行とかカッコつけてしまった。


そもそもこの世界に魔力とかあるのかもわからない。


どうしよういつもの癖で適当な事を言ってしまったが相手はどう見てもストリートチルドレンというやつだ。


ストリートチルドレンはとても侮れない存在だ。


彼らは小さく若く弱いが生きるのに必死で生き残る術を学んでいる。


なにしろ彼らは彼らだけで生き残っている。


スラムの子供など雇ってくれる場所もない事だろう。


その汚れきったボロ布を身にまといやせ細った姿をみれば何者の庇護下にもない事がわかる。


つまり彼らは彼らだけで生きている。


大人でさえただ生きるって事は難しいのに、だ。


つまり彼らは現状俺より強い。


数の暴力でフルボッコという可能性も無くはない。


ましてや俺は今この世界ではだいぶ珍しい格好をしているだろう。


つまり金持ちに見られているはずだ。


やはりここはスラム地区か何かなのだろうか。


少しでも強く見せなければとは思うのだが特殊な呼吸法で強くなるみたいな設定の物語はあるしそれっぽくしとけばいけるほど子供達の目も節穴ではないだろう。


日本のテレビっ子たちなら面白がって乗ってくれるかもしれないが案の定不思議なものを見る目どころかつまらなそうにふーんと子供達の反応は適当だった。


その聞いておいて興味のないという反応に恐怖を感じた俺は深呼吸をして俺はさりげなさを装って口を開いた。


「さて、修行もそう注目されては集中もできねぇしちょうど腹減ったから飯にでもしたいんだがこの街には来たばかりでな。うまい飯屋案内してくれれば奢ってやるけど頼めるか?」


そう言うと彼らはキラキラと目を輝かせながら手を引っ張ってくる。


どうやら危機は脱することができたようだ。


ちなみに後になって冷静に考えてみるとそれこそいざって時は教会の中に転移で逃げればよかったのではと思い至ったのは子供たちに割と本気でビビっていたのだと自分のチキンハート具合に我ながら呆れてしまった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る