第4章
第31話 フィフスの日記
僕たちがモルガンと分かれて学び舎の国を出てから6カ月が経った。
メモリアと語らいながらその日を暮らす毎日。
そうそう。僕はモルガンに日記をもらった。
旅の途中で起こった出来事を忘れないように日記に記してみてはどうかと、彼女にすすめてもらったんだ。
そんなわけで僕は夜明けに日記をつけている。
え? 日記は就寝前につけるものじゃないかって?
まあいいじゃないか。その辺りは僕の勝手さ。
さてと。
今朝も晴れ……明日には北の山脈の中腹にたどり着く……
岩肌ばかりのゴツゴツした山を歩くのは疲れるね。
ふと見渡せば植物が少ない。ずいぶんと高い場所に来たのだと思える。
獰猛な飛竜が住まう山脈だというから、飛竜の群れに襲われてしまったらどうしようかと心配していたけれど……実際にはそんなことはなくて、道中で見かけた飛竜たちはみな、僕たちのことなんて気に留めずに悠々と空を飛んでいた。
カッコいいね。僕にも翼が欲しかったよ。
最初は飛竜の存在を警戒していたメモリアもすっかり慣れたみたいだ。
道半ばで行き違った行商人が、もう少し進めば村があると教えてくれた。
飛竜と暮らし、飛竜を駆る“竜の騎士”たちが住まう北の山脈の隠れ里だという。
竜と暮らして竜と共に生きる人々はどんな生活をしているんだろうね。
険しい山の中で飛竜の爪牙さえ恐れずに切磋琢磨する竜の騎士……
僕とメモリアは彼らの強い生き方に触れて多くのことを知るだろう。
僕はそれを望む。なによりも成長を求めるメモリアが彼らとの出会いを望んでいる。
そして竜。この場所では竜のことを知ることができるかもしれない。
千年前の歴史。ハンドレッドのこと。竜石のこと。
勇者と悪魔と、その狭間で時代に消えた竜のこと。
ひょっとしたら僕自身のことも……
楽しみだ。
……よしっと、今日の日記はこんなものかな。
今頃、モルガンはなにをしているのかな。
僕は大切な人のことを想いながら日記を閉じた。
さあて、そろそろ日が昇る。もう行かなくっちゃね。
新しい出会いはもうすぐだ。
僕たちの新しい旅が、また始まる。
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