ギャルゲオタクの俺に義妹と義姉のいちゃらぶハーレム生活はハード過ぎないですか?

星乃カナタ

本編

「えーと、そりゃあどういう意味すか」

「だ、だから……何度も言わせないでよ。言ってるでしょ、私はあんたが好きなんだって!」

「いや倫理的にも……」

「うっさいっ! 私が告白してあげたんだから、しっかし付き合いなさい! というかお兄ちゃんが好きなゲームではそういう関係な人、いっぱいいたじゃん!」



 という事で普通の高校二年生なオレこと『忽那くずな乃夜のや』は義妹であった忽那くずな卯月うづきと付き合う事になってしまった。



 ……いや、さ。ゲームと二次元は違うじゃん?



「だから乃夜。あんたはねっ、二次元ばかり……いかないで?」

「そりゃあ、無理だが。なにせ俺はギャルゲオタ─────くぅ! ビンタするのはやめてもらえないですかねぇ⁉」

「なんも聞こえなーい」



 彼女は、俺の父親が再婚して出来た義姉妹の内の一人。

 淡い桃色髪と桃色の瞳が特徴的……いや、胸に収納するびっくな巨乳が特徴的な美少女である。我ながら凄い妹を持ったと思う。


 だがな卯月、せめて俺のやり残したギャルゲーだけはやらせておくれよ……。



 切実な思いが通過する。



「あっ、今。お兄ちゃんが好きなゲームやる時のキモい顔が出てたっ! 隠れてやる気になったんでしょ」

「うぐ、ば、バレたか」

「ふふふーん。お兄ちゃんは心情が表情に出やすいんだよー」



 しかも俺の思考を読める系なラノベ主人公レベルのハイステータス野郎と来た。



「でもな卯月。……俺とお前が付き合うって、アイツにはスズナにはどう説明するんだよ」

「え? そりゃあ、もうノリで!」

「おかしい……おかしすぎる。これが、陽キャの力か」



 スズナ──それは卯月の姉兼、俺の姉貴だ。

 彼女も卯月と同様に、父親が再婚した時に出来た義姉妹の一人でもある。卯月の性格に優しさを全振りした所為か、スズナはかなり大人しくて塩対応が正義な性格だ。


 因みに俺もソチラ側……っと、違う。

 自分はただの陰キャなだけだったか。



「取り敢えず、私と付き合う事で決定ね!」



 あまりにも急展開だったが、どうやら俺は彼女と付き合うという事で決定してしまったらしい。



 ◇



「はぁ……なんでこんな事になったんだか」



 深夜。俺はリビングで佇んでいた。

 休日にも拘わらずギャルゲーを一度も触らなかった俺を褒めてほしい。……なんて冗談は置いておいて。


 ……三年前は義姉妹が出来るとは、ギャルゲみたい! と驚いていたってのに。


 ─────まさかその義妹と付き合う事になるなんて、予想出来るワケがない。どこのエロゲですか、教えてエ○イ人!


 俺は直面した現実に啞然としつつ、必死に飲み込もうと頑張ってみる。


 取り敢えず、彼女なんて出来た事が今までなかった俺は落ち着くために深夜コーヒーを嗜んでみようとソファーから立ち上がった。


 コーヒーといっても家にはコーヒーメーカーなどはないので、お湯に溶かす系な粉だけれども。

 俗に言うインスタントコーヒー。


 インスタントコーヒーの粉が入った瓶はリビング外の廊下にあるので取りに行こうとドアノブに手をかけ、腕を引く。


「はえ?」

「ん、何故ここにすずながいるんだ……」

「……っ、ふん。何でもないわ。ただ勉強の息抜きにコーヒーでも飲もうと思っただけ」

「そりゃ奇遇だな。俺も今、コーヒーを飲もうと思ってたワケだが」


 すると、ばったりと菘と相対してしまった。

 紛う事なきを清楚系なストレートな艶やのある黒髪に、宝玉のような透明感を持つ瞳。そして貧乳。ココダイジ。


 だがそれ以外を除けば、妹同様に完璧な美少女といえよう。

 というか『貧乳はステータス』と誰かが言ってたしな。つまり、そういう事だ。


 減点対象ではない。


「そう。ならコレあげるわ」

「おっ、持ってきてくれたのか」

「ええ、私が飲もうと思ったからね。……私の分も作りなさいよ?」

「まじ?」


 彼女は冷酷である。俺をなんだと思っているのだろうか。

 ……まぁ仕方がない。オレは菘姉が持ってきてくれたインスタントコーヒーの粉が入った瓶を持ち、キッチンへ向かった。


 キッチンに瓶を置き、電気ポットに水を入れて電源を付ける。


「な、弟?」

「なんだよ急に。菘姉?」

「相談したい事があるわ」


 そのセリフに疑問を抱く。


「菘姉が俺に相談したいこと? そんなのあるのかよ」

「恋愛相談よ」

「ぶぅ⁉」


 思わず、足を滑られてそのまま頭から落ちそうになった。……あぶねぇ。まさか俺の姉がそんな相談を持ち掛けてくるとは思いもよらないことである。

 その言葉を聞いてから数秒、硬直する事しか俺は許されなかった。


「ままままま、まぁ俺はギャルゲを制したといっても過言ではないからな。恋愛は得意分野だ」

「……」


 冗談を交えつつ、菘姉の表情を伺う。


「マジめに聞いている?」

「聞いてないっすね……」

「ダメじゃん⁉」


 というか、菘姉はこんな雰囲気の人じゃなかった気がするんだが。多少の違和感を覚えつつも、俺は彼女の瞳を見た。


「ま、おお……落ち着けよ」

「あんたもね?」

「おうおう。あんたの弟はいつでも冷静沈着な男だぜ?」

「はぁ。なんだかあんたを見てると、いつもの雰囲気が伝わってきて楽になれる気がするわ」


 俺はお湯が沸くのを待つ間、ソファに座る彼女の隣に歩み寄ってみたり陰キャなりに挑戦する。

 雰囲気は大事だ。

 それが、義姉とはいえ、姉の恋愛相談。


 マジめに乗らなければ、失礼にも程があるという話。


「……言っとくけど、菘姉。俺は恋愛とか、ゲーム以外ではしたことがないから。告白する為のアドバイスとかは出来ないんだ。悪いね」

「そ、そう。でもあの可愛い女の子が沢山出てくるゲームをいっぱいやってるんだから。少しぐらいは分かるん、じゃない?」

「んー、どうだろ」

「例えば……。じゃあ弟よ。あんたはどういう風に告白されたら嬉しいの?」


 え、俺の場合?

 俺は女の子に告白されるという事実があるならば、何されても嬉しいと思うけれど。違うのだろうか? ギャルゲばかりやっているとはいえ、女の子に対しての免疫が付くワケではないのだ。


 つまり、今の俺なんて……女の子に告白されたらイチコロだろう。


 まぁ、こんな俺がされるワケないけれど。─────って、そういうえば今朝、義妹に告白されたんだっけか。


 そういうえば、そうだった。


「どうだろうな。別にオレは誰から告白されても嬉しい、ぞ? まあ、俺が受け入れるかどうかは置いておいて。誰かにそれほど想われてるってのは、かなり嬉しい事だからな」

 あくまでも個人の意見を述べる。


「……ま、そこら辺は個人差があるから分からないな。どこかの主人公が言っていたぞ『相手を好きなだけじゃ、どうしようもないことがある』と」

「なるほどっ?」

「だけど菘姉ぐらいの超絶完璧美少女なレベルなら、どんな男もイチコロだと思う。なおボディーランゲージを仕掛ければ更にヨシだろ? だから菘姉は、なにも恐れる事はないんじゃないだろうか」

「そ、そうかなぁ」


 そんな会話を続けていると、お湯が沸き終わった。

 オレは立ち上がりキッチンに向かう。そこで二つ用意した耐熱性のコップにお湯と、インスタントコーヒーの粉を入れて手に持つ。


「出来上がったぞ。姉さん大好きなコーヒーがな」

「あ。っありがと」


 コーヒーの入ったコップを手渡しすると、直に姉さんの体温が伝わってきて胸がちょいと高鳴る。


 そして。


「ずずず……」

 と音を立てて、癖なのか頬を膨らませながらコーヒーを飲む可憐な彼女の姿に見惚れてしまった。弟でも、こりゃ確信する。


 もし彼女が勇気を出して誰かに告白したとしても、叶って当然だろうとな。


「って、苦⁉ もしかしてコレ、ミルク入れてない?」

「え? あ、まぁ、そうだけど。ブラックだからな」

「…………私、ブラック苦手なのよね」

「まじかよ。初耳です、お姉様」


 だが彼女がコーヒーを吹き出した事でその絵画が崩壊し、何とか我に返ったオレは呆れつつ彼女の痴態を微笑する。


「もう、口の中が苦いモノだらけ」

「はいはい。さーせん、さーせん」

「こっち、見てよ……っ」

「え? 今なんて」


 我が家の姉は、こういう事にはよくいちゃもんつけるので対処の仕方には慣れていた。だからただ、オレは空返事の様に謝ったのだが……。

 最後に彼女がボソっとナニカ呟いた為、姉へと視線を向ける─────。


「?」


 そこには、ソファに女の子座りするジト目でコチラを見つめるドスケベヒロイン……っ間違えた、義姉の姿があった。


 更に。


 彼女は立ち上がって。


「……っ、ぶ」

「─────」


 その刹那に何が起きたか理解出来るワケがない。

 一瞬にして黒い影が近づいてきて、唇にある暖かい感触があると気付く事しか出来なかった。


 そして反射的に閉じていたまぶたを開き、ようやく理解する。


 ……あれ、もしかして俺。キスされてる⁉


 眼前にあるのは目を瞑っている菘姉の顔があって。暖かい感触は数秒で終わり、直後にヒヤッとした空気がオレを襲った。

 でもそんな些細なことは気にならない。


 ……あ、え。菘姉?


「こ、これはっ。コーヒーの口直し、だからっ!」

 口を離した後に、彼女はそんな言い訳のコトバを並べていたけれど……そんなの、全部頭には入ってこなかった。


「これは、秘密だからっ♡」

「お、おう?」

「あと─────、私も。卯月に負けないら」

「は、え……ちょっと待て。それってどういう」


 菘姉は頬を程よく紅潮させつつ、そんな事を叫んで……自室へ戻ってしまった。


 コーヒーはまだ残っているんだがな。

 しゃーない、俺が飲み干すか……。というか、なんで菘姉はオレにキスなんかしてきたのだろうか。


 もしかして、恋愛相談ってそういう─────?


「ずず……っ苦⁉」


 多少の困惑がありつつも、オレはなんだか大人にいっぽ近づいたような一日を過ごしたのだった。


 ◇


 私の名前は忽那くずなすずな

 今日、私は昼間にリビングで妹と弟のひ、秘め事……、? みたいな状況を直面してしまった。

 自宅の二階にある自室で勉強していると物音がしたから一階に降り、こっそりとリビング前の扉からソレを私は覗いていたのだが─────。


 聞こえてきたのは、


「取り敢えず、私と付き合う事で決定ね!」


 なんていう驚きばかりの卯月のセリフ。


 は、はわわわわ……。

 口が開いたまま塞がらない。

 まさか気づかぬ内に妹と弟が、両想いになってラブラブデレデレしていたなんて、思いもよらない事態だったから。


 なんでだろうか。

 全く、気付かなかった。


 数年前。私の知っている卯月はドが付く程の人見知りで、一応名義上家族になった弟……忽那乃夜。少年であった彼にさえ対面すると三秒で発熱するレベルだったのに。


 いつの間にか、私が見ない家に妹は大人になっていたのだ。


「えー、ちょっと…………これってアウトなやつじゃ」


 吐息が漏れる。

 手で口を塞いでみるけれど、効果はなさそうだった。


 きっとこっそりとこんな羞恥的な場面を覗いているという状況が関係しているのだろうが……。頬が紅潮していく感じと、共に自分の胸の中である気持ちが膨れ上がってくのを感じてしまう。



 ─────先を越されてしまった。と。



 だから私は彼に対して、アプローチを仕掛けてみようと思う。

 彼は本当に凄い。今まで、陰ながら見てきたけれど……一見、可愛い女の子ばかりが出てくるゲームにしか脳がない男。に見える弟だが。


 実際はそんな事、全然なくて。


 彼は頭もいいし、ゲームも出来るし、会話もちゃんと乗ってくれるし……運動神経はまぁ目を瞑るしかないけれど。


 とにかく、彼は私の自慢の弟であり……憧れの存在だったのだ。


 彼は特別だ。なにせ、あの始めて出会った二年前。受け入れられてばっかだった私を、始めて拒絶してくれた存在だったのだから。


 ◇


 私の名前は忽那くずな卯月うずき


 遂に私念願のお兄ちゃんと付き合う事になった。

 少々荒々しい方法を行使する事になってしまったが、結果が結果なので今回は目を瞑ることにする。

 ウキウキな気分で風呂上がりの髪を乾かす。


「ふんふふーん♪」


 まさか、あのお兄ちゃんと付き合えるなんて夢でさえ想像出来なかった。

 夢見心地。まさに天国!

 ーーせっかく付き合うんだから、デートもしたい。


 テーマパークとか、お家デートとか、買い物に付き合わせるとか。想像すれば溢れるほど願望が浮かんできた。


「あー、こんなこともしたいなぁ。いやいや、あんなことも?」


 思いつける。

 これが乙女心というのだろうか。

 高校一年生ながらも私は、そう理解する。


 ここには義妹だとか義兄だとか、そんな面倒くさい関係は……関係ないのだ。ただ好きだから、好きなのだ。


 細かい理由とか、うっさいだけだから。


 髪を乾かし終えた私はバスルームから廊下に出る。茹でられた髪や肌が、玄関の隙間から入る夜風に冷やされる。

 気持ちがいい。


 ……そんな時だった。

 リビングから物音が聞こえてきたのだ。


「~~~……」


 何か菘姉が話している?

 どうやら相手はお兄ちゃんらしい。私は背徳感より好奇心が勝り、……リビングの扉を薄く開いてソコを覗いてみた。


 ─────の、だが。


「ふぁ⁉」


 そこにはキスをする菘姉と私の彼氏の姿が一つ。


 ちょ、ねねねね、姉ちゃん⁉︎ 人の彼氏に手を出してやがって……。ん?


 ……っっっもしかして、私は浮気されたんどえすか? 私の胸の感情は、羞恥や怒り、驚きといった様々な感情が交錯していて気持ちの整理がまるで付かない。



 だが、まだ……これは何かの、私の手違いかもしれないし?



 私はまだ問い詰める事はせずこの事は自身の胸の内に秘めておく事にしたのだった。


 ◇◇◇


 あれから数か月が経過しただろうか。

 ネット。所謂、掲示板というところにあるスレが立てられた。

『【急募】ギャルゲオタクの俺が義姉妹どちらにも告られたんだけど、これなんてハードモードなエロゲ?』

 と。

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