桜の頃に。

桜の頃に。

『今日、定休日だって…』

須見すみさん、ネタにしますよ。これ…』

 外へ出たものの、本日定休日だったことを店の前まで来て知る事実。

「どうしたの?」

「いや、何でもない…」

 この桜並木を歩きながら、ふと思い出した去年の出来事に思わず顔が緩んでしまったのを隣にいた加登かどが見逃さなかった。

「今年は開いてるかな…?」

「どうだろう、ね…」

 俺、何かと持ってるから…。

「今年も開いてなくても、またどこかで食べましょうよ」

「そうだな…」

 ふと桜へ目をやると、手を振ってる光景が見えた。見覚えのあるメンツが花見をしている、らしい…。

「今日は須見さんと一緒に居たい、な…」

「それは無理じゃない、か…?」

 尋常じゃない手招きをしている…。無視するワケにいかないだろう…。

「ヤダ…」

「そんなにあのお店に行きたいの…?」

「そうじゃなくて…」

「わかってるよ」

 更にもっとギュッと手を握って、加登に近付いた。

「後で、な…」

「はい…」

 そして、移動しようとしたら、

「須見さん、ダメですよ…」

「そう…?」

 絡めた指をそのままにスプリングコートのポケットの中へ入れた。

「行こう」

「………」

 無言で頷いた加登は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑っていた。

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桜の頃に。 @tamaki_1130_2020

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