第7話

「クソ田川め!マッジでムカつく!」

昼休みにお弁当のご飯に箸をブッ刺して叫んだ私に、亀ちゃんは乙女の顔をして

「田川君、可愛い」

って呟いた。

「可愛い?何処がよ!あの悪魔め!」

そう叫ぶ私に

「じゃあ、質問。それ、長塚君がやったら?」

と、夏美ちゃんに質問された。

「え?長塚君はそんな子供っぽいことしないもん!」

「だから、例えばよ。例えば」

「例えばねぇ〜」

って呟くと、長塚君と同じクラスの理恵ちゃんが

「あ!そうだ。長塚って言えばさ、あいつ普段ぼ〜っとしているじゃない?今日、入口のドアにしこたま頭ぶつけてたよ」

と話し出した。

「やだ!長塚君、可愛い!私、そのドアになりたい!」

そう叫んだ私に、夏美ちゃんと理恵ちゃんは呆れた顔して

「どっちもどっちだよ」

って呟いていた。

「でもさ、あんた大丈夫なの?」

と心配そうに理恵ちゃんが呟いた。

「え?なにが?」

お弁当を食べながら理恵ちゃんの顔を見ると

「あんたと田川、うちのクラスでも仲が良いって噂になってるよ」

そう言われた。

「あ〜……まぁ、友達?」

そう答えた私に

「優里がそうでも、田川はどうかな?」

夏美にポツリと呟かれて、私はご飯を喉に詰まらせた。

「え?何それ?田川君が私を?って言いたいの?」

思わず亀ちゃんの顔を見ると、少し俯いて

「この間さ……、田川君に告白した子が居たんだよね」

と話し出した。

「え?えぇ!」

驚く私に、夏美ちゃんと理恵ちゃんが睨む。

私は口に手を当てて頷くと

「その子さ、『好きな人が居る』って振られたんだって」

亀ちゃんの言葉に、二人が私の顔をジッと見つめた。

「え?だって、前は好きな人居ないって……」

「だから!たまちゃんなのかな?って」

亀ちゃんが不安そうに私を見つめた。

「だって……私には長塚君が居るし」

「田川、知らないじゃん」

そう言われて言葉に詰まる。

「悠里はさ、無自覚で男子の気を引いちゃう所あるからさ……」

と言われてショックだった。

「そんなふうに……思ってたんだ」

ぽつりと呟いた私に、三人は顔を見合わせている。

「そっか……。うん、分かった。田川君には、ちゃんと私には好きな人が居るって伝える。それから、少し距離を置くよ……」

そう答えた私に、三人からの言葉は無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る