第16話 刃



 迫る刃。少し頭を傾ければ、避けることができる。まぁ、避けなくても防ぐことはできそうだけど、何が起こるかはわからないので慎重するに越したことはない。


 そのまま、通り過ぎようとする父親に向かって、拳を叩き込む。


 うん、完璧にハマった。


 こっちのスピードは物理的な限界まで上げられるけど、向こうはそこまでできない。


 必然的に、こちらの方が有利なのだ。


 目にも止まらぬ速さで避けて攻撃を叩き込む。


 動体視力がどれだけ速くても、光は追えない。つまり、光に匹敵するほど速く動ける俺には勝てない。


 父親が吹っ飛ぶまでに時間がある。100発ほど、追い打ちをかけようと、両手の拳を固めて、攻撃。


 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100 っと、よっ!


 あ、やべ、101回しちゃった……。


 後悔するも遅し。


 ノリに乗って、思考加速を緩めてしまった俺は200までやればよかったと後悔しながら、父親が吹き飛ばされていくのを眺めていくしかない。


 森の木を何本も折って、大地に打ち付けられる。


 あ〜あ、自然破壊にも程があるのでは?


 ──それは実行者の言うことではないと思いますが


 そう?


 ──そうですよ


 不満げなオウラン。


 だが、それも良い!


 ──怒りますよ?


 ふざけている間に、父親は、起き上がってきている。


 『ふふふ、私に勝てると思うのですか?』と、そう口にしたくなる光景ではないだろうか?


 父親をしたり顔で見下ろす。ははは、人がゴミのようだ!


 ──訴えられますよ?


 おっと、自重自重。


 拳を構えて、再び父親を迎え撃つ。


 多分、次で終わらせられるな。そう思いながら、思考を加速させていく。


「むん」


 父親が剣を振り、斬撃が飛んでくる。


 だが、その何と遅いことか。


 今の俺にとっては、止まってるも同じだ。


 空中を蹴り(蹴る必要はない)、父親に向かう。


 自分的には、少し速い程度だが、人の目には、映らないほどの速さだ。


 さぁ、あと少しで、決着がつく。


 拳を腹まで下げて、振り抜く、そうして──父親は吹っ飛ばされなかった。


 ただ、俺と父親の腹に長剣が刺さっているのが見えた。


 













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