第3話 再び魔女の隠れ家 3



「出来ました」


 なんとも素っ気ない言葉と共に置かれた朝食。バターの乗ったトーストに、トマトとキャベツとピーマン、玉葱に誰もが大好きなマヨネーズでえたサラダ。飲み物としてホットミルク。最近よく見る組み合わせだ。


「飽きないのか?」


「はい?」


 ──多分、それが好きなんですよ


 語尾に知りませんけど、とかついてないか?


 ──……ノーコメントです


「は~」


 まったく、これだからオウランは。


「嫌なら食べなくていいですよ?」


 またまた~。冗談だよね?


「そうですね。そんなことを言う方は食べない方が良いでしょう」


 オウラン……。わざわざ桐沼に聞こえるようにしてまで言うか?


「ですよね~」


 姦しいとはまさにこのことか?


 ──聞こえてますよ?


 聞かせてるんだよ。


 考えていることがわかるというだけなので、言っているわけではない。つまり、聞かせているというのは間違いでは? と思わなくもないが、そんなこと脇に置いておく。


「そういえば、そろそろパンがなくなってきてたんじゃないか?」


 とりあえず、話題を強引に変えておく。姦しい奴らに付き合うほどの精神力を持ち合わせてないからだ。わかるだろ? オウラン。


 ──いいえ、わかりません。


 ……


「確かにそうですね」


 ゴソゴソと棚の中を確認していた桐沼が同意してくれた。


 ──同意したのはパンの量についてですよ?


 何を当たり前のことを言ってるんだ。そんぐらいわかってるさ。


 ──そうなんですか?


 疑わしそうにオウランが問うてくる。


「そうでしょ?」


 とりあえず、それを無視して桐沼に返事を出す。


「なくなってたのか?」


 話を聞いていたのか、ナイオラがドアから顔をひょっこり出している。言っては悪いがとても笑える光景だ。外見20代の女性が、ドアに挟まれそうな隙間から顔を突き出している。字面だけでも笑える。


 ──怒られても知りませんよ


 オウラン、告げ口はなしだよ。


 ──そう言われると告げ口したくなりますね。


 良い性格だね。


 ──ありがとうございます。


 誉めてないんだけど……。


「それじゃあ、行ってこい」


「はい?」


 急に話しかけられ、返事をしてしまった、のだが、どこに行けと?


「聞いてなかったな?」


「黙秘します」


「その言葉で充分だ」


 ──自業自得ですね。


 それな。


 ──軽いですね。もっと反省とかはないんですか?


「それで、どこに行けと?」


「買出しにだよ。私は忙しいんだ。どうせ暇だろ? 行きな」


 まさかの命令形……!!??


「……しょうがないですね」


 よっこらせ、と椅子から腰を上げる。


「桐沼も行くか?」


 どうせなので、桐沼も誘うことにする。


「そうですね……。では、行きます」


「わかった。それじゃあ、食べ終わったら行くか」


 並べ終わった朝食を前にし、手を合わす。いただきますなんて、自分しかやってないが、こんなものは気分だ。それに、身に沁みついてるから逆にやらない方が不思議な感覚がする。


 そんなこんなで、朝食を食べた後、桐沼が準備するのを待ったり、その間にナイオラがオウランにちょっかいを出したり、とあったが、無事に朝早くに出発することが出来た。




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