幕間

第⬛︎話 蠢動



 簡素な部屋の中で、一人の男が頭を垂れた部下の報告を聞き、激昂していた。


「ふむ、下級神の権限のはずが上級神が現れた。それを、贄に倒された。そのような戯言が聞こえたのだが。随分とユーモアがあることは認めてやる。だから、もう一度聞く。本当のことを言え」


「わ、私は嘘など一言も言っておりません」


「そうか、お前の無能さが際立っただけだぞ?」


「……」


「ふむ、いいだろう。お前の言ったことが嘘でないというのは分かった」


「それでは‼︎」


 頭を垂れた部下が顔を上げ男を見上げる。


「だが‼︎ それがどうした? お前に課せられた仕事は何一つとして片付いていないではないか?」


「し、しかし、私にできることは全てやり通しました」


「それが、贄を殺そうと勝手に上級神の使用をすることだと?」


「はっ、はい」


「無能め」


「はい?」


「お前はもはや用済みだ」


 男は手元の机に置いてあったベルを振って音を鳴らす。


 扉が開き屈強で、整った服を着た2名の男性が入ってきた。


「連れて行け」


 男がそう言うと、2名の男性の一人は部下の男を肩に担ぎ部屋を出る。


 もう一人の男性が頭を下げ、扉を閉める。


 ふ〜


 男は溜め息を吐き、体を椅子の背もたれに預ける。


 その時、机の上に置いてあった通信機が通知を知らせる。


 そこには、一通のメールが届いていた。


 内容はとてもわかりやすかった。


 失敗


 たったそれだけが書いてあったからだ。


「失敗、か。面倒なことにならなければいいが」


 その声にはどこか悲痛さがにじみ出ていた。


「……言っても変わらないか」


 男は諦めの言葉を吐いて立ち上がる。


 ベッドの上に横たわり、今日はもう仕事をしないぞと思いながら眠りにつくのであった。


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