第7話 回想 我が家に戻って
家へと近づくにつれて太陽がより一層、輝いていくように感じた。
汗が頬を伝い、身体中を蒸されているような暑さを感じる。
家の扉を開け、入る。
「ふぅ〜」
と、一息ついて扉を閉める。
靴を脱ぎ、急いで洗面所へ。
鞄は椅子の上に放り投げ、洗面所の蛇口をひねる。
コップに水を注ぎ、
「ふぅ〜」
と、息を吐く。
ネクタイを外し、洗面台の上におく。
ワイシャツのボタンを一つ一つ外し、洗濯かごに投げ入れる。
ズボンはネクタイと同じく洗面台の上に置き、全裸になって風呂場に入る。
風呂場の扉を閉めて、シャワーを右手に持つ。
冷たい水のままシャワーをかかる。
まるで生き返ったような気分を味わう。
シャワーを止めた後も、余韻で心が澄んだように感じる。
髪を掻き揚げ、風呂場の扉を開く。
棚からバスタオルを取り出す。
髪を特に入念に拭く。
その後、体を拭いて服を着……ようと思い、着替えを持ってきていなかったことに気づく。
しょうがないのでそのまま扉を出て、椅子の上に置いた鞄を取り、二階に上がる。
自室の扉を開け、クローゼットの中から服を引っ張り出す。
着替え終わり、ベッドに腰を下ろすと、どっと疲れが伸し掛かってきた。
それでも、一応確認しなければと、学校から支給されている情報端末を開くと、案の定『お知らせ』というものが来ていた。
内容は、『急遽、校舎が使えなくなってしまったため本日は休校、投稿の再開は未定』だと書いている。
なんで校舎が使えなくなったのかは伏せてあったがすぐばれるだろ、格好の取材ネタだろうし。
他にも長文が書いてあるが休校になったということが分かれば俺にとってはどうでも良い。
そこで、ふと考える。
隕石が落ちたの、俺のせいじゃないだろうな……、と。
あの異能が本当に、万が一にも本当に『全能』と呼ぶに相応しい力を最終的に得るのだとしても、さすがに最初からあの大盤振る舞いのような能力の数々が手に入るなどないと切り捨てていたため遊び半分でやったが……。
「あれ、これやばいやつじゃね?」
魔法も超能力(異能力)もエネルギーを必要とする。
調べれば、もしも、万が一にも、あの『全能』とやらの能力が本物だっらとしたら、俺がやったことだとバレるかもしれない。
いや、本当に『全能』の能力が本物だったら確実にバレるだろう。
「……どうしよ」
「干渉すればいいじゃないですか」
「干渉ってどういう風にだよ」
「それは、落とした隕石が超常の力によっておこったこととバレないように干渉するとか」
「……なるほど」
…………ん?
今、俺は誰と話した?
恐る恐る見上げてみれば、そこには山羊の角に口元に見える長い牙、
代わりに、オウギタイランチョウのような姿をした鳥が一匹、勉強机の上にいた。
ただし、”のような”という言葉からわかる通り、本来の色とは違うようだ。
扇のような冠羽は赤ではなく紫に近い赤で、全体的に黒っぽい色をした羽毛だ。
至って冷静になろうと左腕を右手で抓りながら話す。
「お前が話したのか?」
可能性としてはあり得る。
代表的なのとしては魔女の使役している動物などが挙げられる。
他にも、普段は山の奥にひっそりと暮らしている伝説上の生き物、もしくはそれに類するような存在もいるのだ。
「そうですよ」
「……それで、お前はなんなんだ?」
「私は、『全能』の力を持つ知的生命体のサポートをしてるんですよ。他にも……」
胸を張り、器用に折りたたんだ羽の先を胸につけてそう言っているオウギタイランチョウのような生き物の姿を見て、アニメの表現としてよく使われてるやつに似ているなどと思った。
「ちょっと、聞いてますか?」
「いや、聞いてなかったな」
「なっ、あなたには人の心というものがないのですか‼︎」
「鳥に言われたくはないな」
「なら、言われないようにしてください」
「考えておこう」
「…そこはせめて努力をしようとか言ってくださいよ」
「実を結ばない努力ほど無意味なことはないと思わないか?」
「この人、開き直ってます」
煩いなと視線で訴えてやれば、
「むぅ〜」
と人間らしい反応を返してきた。
「それで、この全能って能力はなんなんだ?」
「よくぞ聞いてくれました。それじゃあ話してあげよましょう」
見るからに鼻歌を歌いだしそうなほど喜びながらオウギタイランチョウーーオウランが話し始めた。
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