第6話 回想 これからどうしようか
どうしようもないので、学校から離れる。
家には戻らない。
近くをぶらぶらと歩きながら普段は行かない道をいく。
あぁ、これぞ非日常だ。
だが、ここまで日常から離れた生活を送るようになるとは。
神も知らぬまい。
……帰るか。
そう思った瞬間、お前にはまだやることがあるとでも言うように背中をおもいっきり叩かれた。
思わず立ち止まり後ろを向く。
「よ〜う」
ニヤニヤとした笑顔でこちらを見てくるのは同じクラスのお調子者、
「どうした」
「お前も、何も知らないで学校に行った口か?」
話が長くなりそうなのですぐ近くにあった公園の中に入る。
「そうだな」
「だったら、何が起こったかは知らないだろ〜」
天井のある椅子に座り、襟をパタパタと動かし涼む。
「あぁ」
やっぱ日陰は涼しいなどと考えながら曖昧に答える。
「教えて欲しいか?」
「お前が話したいなら話してもいいぞ」
「よし、話して欲しいんだな。よ〜く聴くがいい。ことの発端は昨日の深夜12時半頃、日本の上空に隕石が落ちてきたらしい。大きさは20メートルほど。その隕石が運悪く我らが通う野浦高校に落ちたというわけだ。理由はわかっていないが周囲への被害はなく、無人の学校が壊れたのは不幸中の幸いだろう。ネットニュースより抜粋、だ」
「最後のがなければ拍手を送っていたな」
照治は片手にスマホを持ち、食い入るように画面を見詰めながら話していたので、”最後のがなくても拍手を送らなかいつもりだった”という言葉は飲み込んでおこう。
「それよりも、お前は休校連絡見てなかったのか?」
「アイパッドは学校に着いてからしか見ないからな」
「……家を出る前に見とけよ」
「急に学校が休みになるなんて普通起こらない」
「今日起こったじゃねぇかよ」
「それはそれ、これはこれ、だ」
「は〜、よく回る口だな」
「いいだろ」
「はいはい、そうだな」
そして、はたと気づいた。
「それで、お前はなんでここにきてるんだ。それも制服で」
「そりゃあ、報道陣にマイク向けられるために決まってるだろ」
「……」
呆れた。
呆れて物も言えないとはこのことか。
「おい、今俺のこと心のなかで馬鹿にしただろ」
「馬鹿だという自覚はあるんだな」
「な、なっ、なんだと〜」
流し目でふざけていることを確認し、視線を前に向ける。
「休校なんだろ、俺は家に帰る」
歩き出そうとすると照治が声をかけてきた。
「明日はちゃんと学校の連絡を確認しろよ。プクク」
最後の最後で笑いを噛み殺せなかったようだ。
その罪、万死に値するな。
「何回が良い? 千か万か」
「どっちもやだね」
そう言って俺に背を向け歩き出す。
気障な風に手を振って立ち去っていく姿に空き缶を投げつけたくなったが、実行せず、想像上に止めておくことにした。
それを感じ取ったのか、照治はぶるりと震え、後ろを振り返る。
笑顔で会釈してやると、口元を引きつらせて早足で歩いて行った。
まるで逃げるようだなと思ったが、その元凶が俺であるということに若干の不満を持ちつつ、家へ帰る道を歩くことにした。
日は頭上近くまで上がっている。
一気に、帰る気を失うような日差しに照らされ、帰ったらシャワーをかかろうとそう心に決めた。
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