7 エピローグ
「えー。また緑?」
授業中、廊下を歩いているとそんな声が聞こえてきた。
「当然でしょっ。自然の緑、最高だね。この緑が持つ優しさ。みんなもわかるよね?」
嬉しそうに緑語りをしている美愛里先生の声が聞こえる。
扉が閉まっていて、声だけしか聞こえなかったが、凄く楽しそうだった。
「全くわかりませーん」
そんな、生徒たちの声を聞きながら、廊下の前を通り過ぎた。
「あっ、和鶴真先生!」
「美愛里先生!」
生徒たちが給食の準備中、手洗い場の近くに居ると、いつも通り、美愛里先生が来た。
「やっぱり、雨降ってきましたね〜。そういえば、和鶴真先生は、梅雨好きですか?」
「いや…あんまり好きじゃないです。正直、傘持ってくるのだるいし、車の中濡れるし、視界悪いし、暗いし…って感じで、」
「実は、私もあんまり好きじゃないですよね〜、梅雨」
「えっ」
「いや〜だって、自然の緑があんまり映えなくて。雨の緑が好きな人もいるけど、やっぱり私は、晴れてる方が好きで…」
「美愛里先生、本当に緑好きなんですね〜」
「やっぱ、今日廊下通ったの和鶴真先生でしたか!聞こえてましたよね、緑語り」
「気づいてたんですか?」
「なんとなく、人影でそうじゃないかな〜って」
「流石ですね…なんかプロって感じがします」
「そんな大層なことでもないですよw」
そんな他愛ない会話を二人でしていると時間は、刻々と過ぎていく。
やっぱ、美愛里先生と話すのは、楽しくて、嬉しくて、あっという間で…
あぁ、好きってこういうことなのか…
俺は…一生独身と決めていた俺は、この人を好きになっていた。
「美愛里先生、梅雨明け楽しみですね」
唐突に話題が前に戻ったことに美愛里先生は一瞬驚いていたが、
「はい、もちろん!」
今はまだ出来ないけど、いつか必ずこの気持ちを伝えます。
だから、もう少しだけ、待っててくださいね。美愛里先生。(完)
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