トリコロールの恋

羽弦トリス

第1話二学期に現れた春

12月にしては暖かい日であった。

大塚友也は1年5組の教室に入ると、教科書を机の中に入れた。

大塚は最近悩んでいた。2年生になると文系か理系を決めなくちゃならない。

そして、1組だけ選ばれし者が入る特進クラスがある。

先ずは、特進クラス選抜テストで五教科で7点足りず、特進クラスに入れなった。

また、ずっと理系を考えていたが事もあろうか、二学期の12月に行われた数学のテストが7点だったので、文転した。

いつも、80点以上取っていたのに!

この時のテストの事は、成人しても夢に出てくる。


大塚は朝からブルーだった。窓際の席で正門が見えるので、肘をつきながら眺めていると、付き合ってるヤツラが手を繋いで登校している。

以前、スクールバスの中でこう言われた。

「なぁ~、大塚。お前は黙っていればイケメンなのに、しゃべるとバカがばれるんだよな~。もったいない」

大塚は笑って聞き流した。

授業が終わると、帰宅部なので真っ直ぐバスセンターに向かった。

スポーツが大嫌いなのだ。

だから、通信簿は体育は2であった。


1人で帰っていると、大塚を呼び止める声がした。

「大塚君、ちょっと待って!」

声の主は2年生から特進クラスに上がる丸山いずみだった。

「なんだ、丸山か」

大塚がそう言うと、丸山は手紙らしき封筒を渡した。

「返事はいつでも、いいから」

丸山はまた、学校に戻って行った。


大塚はバス停のベンチで手紙を読んだ。


【もし良かったら、彼女にしてください】


YES!YES!YES!YES!


大塚はこの日を待ちわびていた。文転は屈辱的だったが、神様は代わりに彼女を下さった。

丸山に明日にでも、返事しよう。大塚はニンマリしていた。


「お~い、お~つか~」

と、聞き覚えのある女子が僕の肩に手を当てた。

大塚は裏拳でそいつを成敗した。

「あばばばば。ってな~。で、あんた何をニヤニヤしてんの?」

「お、思い出し笑い」

「思い出し笑いするヤツって、スケベなんだって」

こんな事を言うのは、3組だが中学が同じの和田由美だ。

「ガキはあっち行けっ!ブス!」

「うるせ~、変質者!」


今日はいい日だ。手紙貰うなんて。バスが来るまで20分あるから、近くの洋菓子店のトリコロールで、パイシューを2つ買った。

パイシューとは、こぶし大のシュークリームだ。周りはパイ生地。

そして、1個は和田に渡した。

「大塚~、あんた、イケメンで優しいのになんで彼女いないの?」

「オレが知る分けないだろ」

「ま~、変人だからね」

「もうすぐ、彼女出来るよ!」

「あんた、口の周り生クリームだらけだよ!」

「大丈夫。ハンカチあるから。公衆トイレで顔洗う」


大塚は翌日の事を考えるだけで、ワクワクしていたのである。



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