第39話 サハギン
ザバザバと音を立てて川から上がってくる大量のモンスター。
数は……三十ってところか。
こんなにいっぱい出て来て、ご苦労なことで。
モンスターが近づいて来るのを察知したのか、佐助が戻って来て、そして先制の一撃を繰り出す。
『ニャン!』
佐助の雷攻撃。
攻撃を食らったモンスターは黒焦げになり、川の上を流れて行く。
「速いし強い……」
「で、あのモンスターは?」
「あれはサハギンだよ」
サハギン。
魚のような頭部に人間の体。
腕にはヒレが生えているようで、一言で言えば魚人。
なんだけ気持ち悪いモンスターだな。
「佐助。さっさと倒すぞ」
『ニャン!」
陸に上がっていないサハギンも多数いる。
佐助は川に飛び込み、水の中で稲妻を解放した。
放出することはできないが――稲妻は水を伝う。
関電していくサハギンたち。
その一撃で十匹程が沈没する。
「そんな、反則だよ……」
「反則は向こうだろ。こんな大勢でかかって来てさ」
俺はチェーンソーを取り出し、エンジンをふかす。
機械音に反応したサハギンたちが、俺に向かって一斉に飛びかかって来る。
「ほらよっ!」
大地にチェーンソーを突き刺し、土の力を解き放つ。
地面からいくつもの土の剣が生じ、サハギンたちの体を討ち貫いていく。
「ユキムラも反則だ! 強すぎだって!」
「お前は騒ぎ過ぎだ。こんなぐらいどうってことないって」
フレアが俺の隣で騒ぎに騒ぐ。
もう少し大人しくできないもんかね。
佐助はフレアの声に反応することなく、ひたすらに敵を倒し続ける。
こいつが人間だったら、笑いながら敵を倒す戦闘狂なんだろうな。
絶対に友達にはなりたくないタイプだ。
お前が猫型ロボットで良かったよ。
「グゥ……」
瞬く間に減っていくサハギン。
俺と佐助の前に立つサハギンは、とうとう二匹になってしまう。
「おーい。どうするんだよ。戦うのか、逃げるのか?」
二匹のサハギンに対して俺はそう言うが――どうやら物事を考える思考能力が欠落しているようだ。
モンスターは何も考えていないんだな。
それが今回のことがよく分かった。
一直線にこちらに駆けてくるサハギン。
俺が首をくいと動かすと、佐助が反応し、敵の首を鋭利な爪で斬り落とす。
戦いは終了。
モンスターたちの死体は消え、呆然とするフレアだけがその場にあった。
「え……え……ええ? もう終わり」
「終わり。魚釣りも終わりだ」
「お、終わりじゃないよ。まだ釣らないと」
「だから、終わりだって」
川の上に浮く数匹の魚。
佐助の電撃攻撃で浮いてきたようだ。
フレアは一瞬その魚をポカンと眺めるが、ハッとして素早く回収に移る。
「え? モンスターも倒して魚も獲れて、一石二鳥じゃん」
「一石投じたのは俺と佐助。お前はただ鳥を獲っただけだろ」
「細かいこといいじゃん。報酬はちゃんと折半するから」
折半かよ。
全部俺たちの手柄だというのに。
ま、いいけどさ。
◇◇◇◇◇◇◇
空間移動で町に戻り、フレアは大量の魚を持ってギルドへ入って行った。
俺は佐助とギルド前で待機して、自身のステータスを確認することに。
―――――
雲雀 幸村
ジョブ:家電魔術師
LV 37 HP 3699 MP 1832
攻撃力 1845 防御力 1790 魔力 1845
器用さ 1810 素早さ 1800 運 1770
スキル 家電魔術 家電量販店
―――――
チェーンソー
攻撃力 7400 防御力 1800
能力 属性攻撃 換装
―――――
佐助
HP 1850 MP 850
攻撃力 880 防御力 860 魔力 900
器用さ 860 素早さ 920
能力 経験値共有 雷体術 残像
―――――
「おう! メッチャ強くなってるじゃないか」
いつの間にこんな……
喜び以上に戸惑いが勝る。
そんなに戦ってないはずなのだが……
でも、佐助も掃除ロボも常に稼働しているか。
常に強くなる俺、佐助を見て苦笑いする。
「お前には褒美をやらないとな……って、また狩りがしたいんだろ?」
『ニャン!』
キラキラした目のマークをこちらに向ける佐助。
どこまでも本能で生きてるよな、こいつって。
「んん?」
佐助をボーッと見ていたのだが……視線が集まっていることに気が付く。
周囲にいる連中が、どいつもこいつも俺を見ている。
一体全体、何故俺のことを見ているのかしら?
「皆、ユキムラのことが気になるんだよ」
「気になられたところで、俺は興味ないぞ。特に男にはな」
「恋愛的な話じゃないよ!? ほら、ユキムラ強いし、有名人なんだよ」
ギルドから出て来たフレアは周囲の人たちを見ながら俺にそう言ってくる。
いや、いつから有名人になったんだよ、俺。
もうこの町には来れないかも知れない。
俺は鼻で笑い、そしてさっさと小屋に戻ることにした。
「おかえりなさい、幸村さん」
「ただいまです、カタリナさん」
小屋に戻ると、天使が待っていてくれた。
いつ見ても、毎日見ても、どれだけ見ても飽きない可愛さ。
美人は三日で飽きるなんて誰が言ったんだよ。
「あ、まだご飯の用意は――」
「あ」
カタリナさんは扉を開けてくれたのだが、扉から手を放した瞬間、何故かこちらに倒れてきた。
何も無いのに、どうやってこけたのだろうか。
不思議で仕方がないが、たがこちらに倒れてくるのは事実。
俺の顔に大きな胸が迫り――俺は彼女の体を抱きしめる。
柔らかい……興奮しすぎて全身から血を噴き出しそうになっていた。
七孔噴血なんて言葉を聞いたことがあるが……穴という穴から血が出てしまうのではないだろうか。
それぐらい俺は興奮し、幸福に包まれていた。
もうこのまま死んでもいいや。
「ちょっと、邪魔なんだけど」
後ろからフレアの声が聞こえるが気にしない。
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