第12話 追われる女と逃げたい幸村

 佐助にもバイコーンを攻撃させてみたが、難なく撃破しているのを見て、適当にバイコーン狩りを佐助にさせていた。

 本当に楽しそうに狩りをしているので、俺は微笑ましくその様子を眺めるばかり。

 その上、見ているだけでも強くなれるんだから違法レベルの仲間だよな、佐助って。

 いや、本当にありがたい仲間だ。

 

 こちらに向かって来るバイコーン以外は佐助に任せ、俺はひたすら町を目指す。

 俺を襲ってくる奴は、チェーンソーで返り討ちだ。


「やっと到着だな……」

『ニャン』


 ほどなくして、町に到着する俺たち。

 町はそれなりに大きい町のようで、それなりに建物の数が多く、それなりに背の高い建物がいくつかある。

 特徴らしい特徴がない町で、町を行き来する人たちにも特徴がない。

 普通だ……あまりにも普通だ。

 ま、特殊な町の方が異常だし、普通で当然なのだろうけれど。


「しかし、町に着いたのはいいけど、これからどうするかな……」


 全ての買い物はカタリナさんがいる量販店で済ませられる。

 と言うか、あそこ以外で買い物するつもりもないし。

 カタリナさんを見るために、今の俺はポイントを稼せぐために冒険をしていると言っても過言ではない。

 目的なんて一つもないし、カタリナさんが目的でもいいだろう。

 彼女の美しさは目的にするには十分すぎる物だと思うし。

 

 そうなってくると、町に来る必要性が全くないことに気づく。

 買い物するつもりもないし、知り合いがいるわけでもない。

 ただ寄ってみただけ。

 それだけで終わりそうだな。


 やることを見いだせない俺は、とりあえずステータスを確認することにした。

 バイコーンをそれなりに倒したし、レベルもあがっているだろう。


 ―――――

 雲雀 幸村

 ジョブ:家電魔術師

 LV 8 HP 798 MP 377

 攻撃力 400 防御力 320 魔力 399

 器用さ 335 素早さ 330 運 300

 スキル 家電魔術 家電量販店

 ―――――

 チェーンソー

 攻撃力 1600 防御力 325 

 能力 属性攻撃

 ―――――

 佐助 

 HP 400 MP 200

 攻撃力 180 防御力 160 魔力 200

 器用さ 160 素早さ 220

 能力 経験値共有 雷体術

 ―――――


 おお、想像以上に強くなっているではないか。

 佐助が暴れ回ってくれたおかげかな。


「……出るか」


 ステータスの確認を終え、町でやることは終わってしまった。

 ここにいる理由が無い俺は、町を出てさらに南へ向かうことに。

 どの位置にいようが、あの小屋には瞬時に戻れるし、いつだってカタリナさんに会うこともできる。

 さっさと立ち去るとするか……


 そして踵を返す俺。

 だがしかし、そこで何やら女の子の悲鳴が聞こえてきたような気がした。


「……気のせいだろう」


 俺は踵を返したまま、町を後にしようとした。

 だがドタドタと背後から走る音が迫ってきるのが聞こえ、チラリとそちらの方を振り向く。


「……うん。やっぱり気のせいだな」

「気のせいじゃない! 私が逃げてるの見えてるでしょ!」

「全然見えません」

「返事はしっかりするんだ!?」


 トラブルの匂いがし、俺は深くため息をつく。

 俺の旅のコンセプトは、トラブルの無い安全な日々を掲げている。

 面倒事になんて巻き込まれたくない。

 お願いだからあっち行って。


 しかし走る女は一直線に俺を目指す。


「いや、何で俺なの!? 他に人はいるだろ!」

「他に人はいるけど、戦えそうなのは君だけじゃない!」


 町を歩く人々は、まさに戦いとは無縁と言ったようななんでもない服装。

 どこまでも普通な町だ。。

 そして俺は一応は冒険者らしい恰好をしている。

 だが、戦えそうな俺を目指す理由は何?


 走る女を俺は凝視する。

 赤い髪にお下げを二つ作り、目はクリクリ大きい。

 胸も小さく背も低く、動きやすい恰好をしており、下は短いズボンをはいている。

 とても可愛らしい容姿の持ち主らしく、走る彼女に視線を向ける男性が数人いる。


 そして彼女の背後には、彼女を追いかけているのだろう、少し柄の悪い男性の姿が二つ。

 うん。関わりたくない。

 このまま道具を使って、小屋に戻るとするか。


 俺は異空間から道具を取り出し、移動をしようとするが……予想以上に女の足が速く、俺の腕を掴む。


「お、お願い助けて!」

「なんで助けなきゃならないんだよ……誰か知り合いにでも助けてもらえよ」


 怖そうな男二人を見て、俺は内心ビビっていた。

 あんなのからどうやって助ければ……やはりここは、逃走一択だな。


「あの、離してください。痴漢で警察を呼びますよ」

「痴漢って、私女だけど!? それに警察って何?」

「女でも痴漢は成立しますよ。だから離してください」


 ま、元いた世界の法律の話だけど。

 捕まる場合もあるって話だけれど。

 しかしこの世界でそのルールが通用するとは思っていないが、だがこの場を離れる理由としては十分だろう。

 とにかく離れたい。

 カッコよく人助けなんかして、死んだら最悪じゃないか!


「おい!」


 だが、運命は俺を許してはくれない。

 逃げる前に男二人が俺たちの前に立ちはだかる。

 お願いだから、他行ってください。

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