第7話 初めてのレベルアップ

 森の中にいるスライムたち。

 数はまだらではあるが、数えきれないほど存在しているように思える。

 というか、増えてないか?


 倒しても倒してもスライムの数が減る気配はない。

 ま、ポイントが稼げるからいいんだけどね。


「お?」


 それはスライムを十二、三匹倒した時のことだった。

 自分の体がポワッと淡く光る。

 何ごと?

 もしかして新種の病気にでもかかったのか。

 そんな不安も感じつつ、ふと気になることがありステータス画面を開くことにした。


 ステータス画面は、チェーンソー、そして佐助のステータスも連動できるようになっており、それらのステータスが一斉に表示される。


 ―――――

 雲雀 幸村

 ジョブ:家電魔術師

 LV 2 HP 199 MP 110

 攻撃力 100 防御力 81 魔力 99

 器用さ 84 素早さ 82 運 71

 スキル 家電魔術 家電量販店

 ―――――

 チェーンソー

 攻撃力 403 防御力 80 

 能力――

 ―――――

 佐助 

 HP 100 MP 50

 攻撃力 45 防御力 40 魔力 50

 器用さ 41 素早さ 55

 能力 経験値共有

 ―――――


 どうやら、レベルが上がったようだった。

 俺の考えは正しかったようだ。

 何も異常が無いのに体が光るなんてありえないもんな。


 レベルが上がったことによりステータスが上昇しているが……しかし現段階でスライムは一撃で倒せるのでどの程度強くなったのかは把握できない。

 漠然と強くなったんだなとぐらいで考えておこう。


「レベルも上がったことだし、この調子でスライムを倒していくぞ。カタリナさんと俺のために佐助も頑張ってくれよ」

『ニャン』


 佐助は従順な様子で俺に頷く。

 頷いたと思うと、いきなりスライムにたいして突撃を仕掛けた。

 

「お、おい! 無茶はするなよ!」


 猫の形をしたただの玩具に、モンスターが倒せるのか?

 俺はそんな一抹の不安を抱くも――それは杞憂に終わった。


 素早い動きでスライムを翻弄し、可愛い前足から飛び出した爪で切り裂く。

 一撃で倒すことは不可能のようだが、しかし数発ダメージを蓄積させたところでスライムは塵となる。


「やるじゃないか、佐助」

『ニャン!』


 佐助は俺の足元に戻って来て、機械の尻尾を振りながらこちらを見上げていた。

 俺が佐助の頭を撫でると、佐助の目が喜びのマークに変化する。

 左右逆の方向を向いている不等号を両目に張り付けたような、そんなマークだ。

 気持ちいいというのだけは分かった。

 いや、機械だから気持ちいいと感じているのかは疑問を持つところだが……喜んでいるのは確かだな。

 うん。それでいいじゃないか。

 細かいことは気にしないでおこう。


 それからも佐助と一種にピクニック気分でスライムを倒していく。

 楽勝。楽勝に次ぐ楽勝。

 ポイントは溜まり続けている。

 この調子ならすぐに買い物に行けるのではなかろうか。

 

 スライムと戦いながら進んでいると、森の中でボロボロの小屋を発見する。

 町からはそれなりに離れた場所。

 以前、誰かが住んでいたのだろうか。

 今も住んでいる可能性も無きにしも非ずではあるが、しかしそんな雰囲気は感じない。

 おそらく誰も住んでいないであろう。


 小屋の扉を開き、中を覗いてみる。

 中は蜘蛛の巣がはっており、誰かが住んでいる気配は感じない。

 うん。やっぱり空き家で間違いないみたいだ。


 中にはテーブルが一つとあるだけで、後は何もない。

 少し埃っぽいが、休憩するぐらいなら問題ないだろう。


 窓を全開にし、扉も開けたままにする。

 外は森。空気は最上級に良いものだ。

 俺は外の新鮮な空気を肺一杯に吸い込み、そしてまた吐き出す。

 空気が美味いってこういうことか。

 森の中での深呼吸がこれほど気持ちいものだとは知らなかった。


「さてと。少しポイントを確認してみるか……佐助」


 俺はテーブル席につき、量販店で使えるというポイントがどれだけ溜まっているのかを調べてみることにした。


 ポイントは自分のステータスからでも確認することができるのだが、佐助からでも見ることができる。

 どうやら【家電魔術】の力で、ポイントを把握する能力まで所持しているもよう。

 どんな能力だよ。


 佐助の目から光が発さられ、現在のポイントが宙に映し出される。


「3500ポイント……スライム一匹につき、100ポイントってところか」


 スライムは35匹ぐらい倒していたような気がする。

 それ以上倒したような気もするし、そんなに倒してないような気もする。

 だけどポイントが一律だったと仮定すると、35匹で間違いないとは思う。


 しかし、3500ポイントってどれぐらいの価値があるんだろう?

 これはあれだな、カタリナさんに確認しにいかねばならないな。

 丁度会う口実にもなるし、うん、彼女に会いに行くとしようか。


 だが少し眠気がある。

 昼寝をしてから、カタリナさんに会いに行くとしよう。


「佐助。暇ならスライムと戦ってきてもいいんだぞ」

『ニャン!』


 佐助の目が喜びのマークを表示する。

 戦うのが楽しいのか、ポイント稼ぎが楽しいのか。

 どちらか知らないけど、まぁ暇をつぶせるならそれでいいだろう。


 小屋から飛び出して行く佐助を見送り、俺はテーブルでうつ伏せになる。

 なんだか、授業中に居眠りをしていたことを思い出すなぁ。

 ここに来てまだ一日も経過していないはずなのに、懐かしい感じがする。

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