第222話 瘴気

 俺は吐いていた。

 いや、吐かなかったのはニーナだけだ。

 王都の入り口が視認できるところまで来たが、薄いが、黒い靄の中に入った途端に胃の中の物を吐き出した。


 急激に気持ち悪くなりその場に倒れ込んだ。


 ニーナが瘴気の外に引きずって瘴気の外に出た。


 ゼェ、ゼェ、ハァ、ハァ・・・


 皆涙を流していた。

 胃の中がぐるぐる掻き混ぜられ、ドブの水を飲んだくらいの気持ち悪さだ。


 ニーナはケロッとしていたが、皆脂汗をかき、アイリーンがポチったペットボトルの水で嗽をしたり、水を飲んで座り込んでいた。


 アイリーンがポチった防護服一式とと酸素ボンベを背負って中に入るとセーフだった。


 それを確認しニーナ以外は完全防護で中に入る。

 門は開け放たれてはいるが、門番はいない。


 人がいるにはいたが、正気ではないとしか言えない者ばかりで、中には倒れていて虫が集っているのもいる。


 死体が散乱していたのだ。

 悪夢としか言えず、生きたまま地獄に入ったとしか思えなかった。


 城には近付けなかった。

 異形の者が見えたので慌てて引き返した。


 取り敢えず生きている者を担ぎ正気の外の物陰に隠れるようにした。

 40歳位の痩せた男だ。

 回復魔法を掛けまくり、回復を祈り、休ませる事にした。


 翌朝になりその男はここはどこだ?と唸りだした。


 念の為縛っており、解いて話を聞く事にした。


 ただ、お腹が減っており、消化に良いお粥をポチり与えた。


 これで事情の分かる者を確保した事になり、安堵した。


 約3週間前に王都がドラゴンの大群に囲まれ、魔王と名乗る者に屈したと。


 あっという間の事で、騎士団も抵抗らしい抵抗も出来ず降伏していった。


 民に制約は掛けられなかったが、段々瘴気が濃くなり、1人また1人と、次々に倒れて行き、立てなくなったと。


 城があったというと、以前城が消えた跡地に魔王城が建てられたと。


 魔王は何かの儀式を行っており、出て来ないと。

 さてどうするか?となったが、先ずはニーナが単身で探ってくる事になり、俺達はニーナを送り出した後は彼女が武事に戻る事を祈るしかなかった。


 また、魔導通信で各地にアーリバンの現状を伝えた。


 不思議なのはニーナだけが平気だった事だ。

 アイリーンが子供が出来ない呪いを掛けられていて、その影響ではないなかと言っていたが、俺もそう思う。


 しかし・・・半日は待たないといけないが、思うのは待つというのは辛い事だ。


 アラームがなったりするのもまずいので、無線は持たせなかった。

 連れて来たおっさんが町に戻りたがったが、何とか説得をした。


 待ち時間は待機している拠点のカモフラージュをする位しかなく、俺は貧乏ゆすりをしまくっていたのであった。

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