第175話 気が付けば落下なう

 そうそう、タウンドリフトをする直前にペアリング済みのトランシーバーを全員に渡している。


 数キロは飛ぶ強力なタイプだ。

 ずっと会話をし続けない限り、まあ道中位の電源は持つだろうと思う。

 多分ね。


 基本的に繭?の中はふわふわしていて、横になるのにも丁度良いらしい。

 ただ、みっちゃんによると枕が欲しかったと言っていた。枕に関してはさすがにそこまで持たせるつもりはなかったので、各自に着させているコートを脱ぎ、それを丸めて枕にしてもらう。


 その為に毛布を用意してある。

 荷物も各自が抱えていられる量位を一緒に飛ばせられる限界と想定している。


 そして繭の中にいる状態で飛んでいた訳だが、俺は4時間半後にタイマーをセットし休む事にした。

 確かにみっちゃんの言うように、横になると具合がよくとても気持ち良い。

 ほどなくして眠気が来て俺はさくっと眠りに落ちた・・・・


 そして俺は風を感じて目覚めた。いや、落下感を感じていた。

 ついつい目覚めとともにウオオオオー!とパニックから叫んでいた。


 錐揉み状態で落下していたので俺はパニックになったが、翌々考えると俺には飛翔があるから、スキルを発動すれば解決だ!いや違う!

 確かに姿勢は安定する。

 だが、なぜこのような状況なのか?そちらの方が問題だが、現状を把握するのが最優先だ。


 姿勢を安定してから周りを見てみる。

 すると俺が持っていた荷物が浮遊しているのが分かる。

 いや、俺と一緒に落下しているのだ。

 比重や面積等の影響や空気抵抗の関係で落下速度はバラバラなので、点にしか見えないのや、コートとかは多分どっかに飛んでいった。


 とりあえず姿勢を安定させるべく手を広げていて状況を確認しているが、俺以外に落下している者の姿は確認できない。

 そして先日倒したような黄色をしたドラゴンが俺のすぐ近くを落下している。

 頭を下に向け落下して、やや錐揉み状態である事から意識を失っているようだ。


 意味が分からないが、取り敢えずトランシーバだけは回収したが、その時点で地面までま10秒程になっていた。


 先日ドラゴンを倒した時に使った投網は回収していたので、それを投げる。

 取り敢えずドラゴンに覆い被せる事にした。また、ドラゴンの上に岩を出しておくのも忘れない。

 恨みはないが、怪獣や害獣の類らしいので、駆除できるならやっておこう!


 俺はというと、落下している荷物の中からトランシーバーだけは必死になりながら掴みに行ったが、他は大した物がないので諦める事にした。

 だが、トランシーバーだけでは皆との連絡手段に有効かもわからないが試みるたい。


 理由は分からないが俺だけが突然空中に放り出された状況からすると、運悪くこのドラゴンに俺だけが衝突し、お互い落下し始めた。


 ドラゴンの頭にでも繭が衝突したのだろうか。

 ドラゴンはそれにより気絶したと思われる。

 こんなところで同時に落下しているのはそれ以外説明がつかない。

 みっちゃん達も繭を内側から刃物などを使って破壊しようとしなかった。

 勿論刃物など持っているわけがないからだが、拳で叩いたりしたが繭により力を吸収され、上手く外側、つまり外殻に力が伝わらなかったと思うと言っていた。


 しかし、誰も外からの衝撃でどうなるかは知らない。

 飛んだ距離と移動時間から考えると、物凄いスピードで飛んでいるはずだ。

 繭の中に入ると外はぼんやりと見えるが、その外の雲の動きや景色の移り変わりから、かなりの速度が出ていると判断はできた。

 おそらく新幹線位のスピードは出ているのであろう。

 この大陸の地図などは距離感が怪しい。どれぐらいの距離感覚かというのが、馬車で何日ぐらいの距離だとか、そういう曖昧な距離で語られるのだ。

 なのでいまいち国の広さとかが分からない。町の大きさなどから判断するしかないようだが、それでも時速300〜400kmは出ていたはずだ。


 そんなものがゆったりと飛んでいたとはいえ、ドラゴンにぶつかったのだからお互いに無事ではいられない。


 おそらくその衝撃で繭は弾けたのであろうと思う。幸い中にいた俺は無傷だ。但し落下なう!だったが。

 ドラゴンに近付き剣で首を刎ねたかったが、それだけの時間がなかった。


 俺の落下は自由落下ではなく、飛翔による下向きのベクトルが加わっているが、落下速度などは制御できていた。

 その為恐怖はもはや微塵もなかった。


 そして俺は地面から10m位のところで静止していた。


 俺の方が先に地面に近付いていたので、ドラゴンが地上に激突する様を見届けている感じだ。


 ドゴーン!ドゴーン!と2度の衝撃が響き渡る。

 ドラゴンがまず落下し、追い打ちを掛けるように岩が覆い被さるように落下し、立て続けに地響きと凄まじい音が響いた。


 ドラゴンは落下の衝撃により目覚めたようで、力弱く唸っていたが、もはや虫の息だ。


 なぜならば半身がちぎれていたからだ。苦しんでいるので俺はとっとと楽にしてやろうとグラムチャウダーを出し、その首を刎ねる。


 すると魔石とトレジャーボックスを残し霧散していった。


 いや霧散した後のドラゴンの頭があった位置にトレジャーボックスと魔石があったのだ。とりあえずドロップ品や岩と網を収納した。

 お宝は後で確認だ。今はそれどころではない。


 時間を見ると2時間程経過している。

 つまり、まだ目的地までの半分も移動していない可能性がある。

 そうこうしていると俺達が入っていたと思われる繭と同じ姿の物がこちらに向かって来ているのが分かった。

 但し1つだけだ。


 俺の目の前にゆっくり降下したと思うと、地面に当たった瞬間パリンと弾けた。

 そして中からアイリーンが出てきたのだが、彼女はその場に崩れ落ちた。俺は慌ててキャッチしたが、彼女はすやすやと寝息を立てているのであった。

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