第170話 エナリスと朋ちゃん

 俺は隣室に入るなり王にハグをされた・・・


 やめてぇ〜!

 気持ちは分かるけど、男にハグされるのはノーサンキュー!

 どうせなら王女・・・あかん、14歳前後やろ。

 となるとこのマダムか?

 なら許すが、王はひたすら命を救ってくれて有り難うと言ってくる。


 そしてとんでもない事をこのおっさんは言ってのけた。


「今晩この子に子宝を授けてくれませぬか?」


 一瞬言葉を失った。

 アイリーンも固まった。

 これはあれだ、洒落にならない事を言ってはいるが、この国のブラックユーモアか?


「はい?娘さんにですか?」


「不躾な事だとは判っております。この子も先日子を産める14歳になり申した!だから問題ないのです」


 俺は助けを求めてシャルルを見るが、頷いた。

 えっ?抱けって事?

 取り敢えず首を横になり振る。


「俺は政略結婚とか嫌なんです。それに娘さんが嫌がるでしょ。好いた人と一緒になる方が幸せでしょう」 


「勇者様、私を抱いては頂けませんの?」 

 

 俺は更に混乱した。


「うむ。政略結婚ではないのだ。この子の命を救ってくれた勇者様への謝礼にこの子を進呈致すだけの話じゃて」


「へっ?まじで?でも俺には付き合っている彼女がいますから」


「ニーナ殿、この子を母親にするのに貴女の恋人をお借りする。宜しいな?」


「分った。アタイは別に良いぜ」 


 真面目に返事をしているのだが、俺はグイグイ迫る王女に壁ドンをされた。


「ふふふ。ミライの言うとおりですわね。真の勇者様のタイプは押しに弱いそうですわね。ごめんなさい。いつの日かこの日を迎えたらこのようにするとお父様とお母様と決めていたのですわ。ふふふ合格ですわ。改めて私はエナリスですわ」


 俺はホッとした。

 いくらこの世界では合法でも、流石に14歳はない。あかん!


 どうやら俺は遊ばれたか試されたようだ。

 又はやはりこういう歓迎をするお国柄?


「未来ちゃんがいるの?」


 アイリーンが詰め寄った。


「はい。この国に勇者様が6人が来られ、滞在されております。生憎今は冒険者として魔物の討伐依頼に出ており不在なのですわ」


 取り敢えずアイリーンとみっちゃんはこのエナリスと話始めたので、それ以外の者はテーブルに座った。

 改めて挨拶をし、人となりを試した事の詫びを入れてきた。

 ホッとしつつも、娘を貰ってくれと、妾でも良いからと今度は王妃が話してきた。


 どんだけ勇者は人気なんだよ!

 と思うも、俺が本当に真の勇者とやらなのかはともかくとして、あくまでも真の勇者さんになのだ。

 俺の人となりを見て、栃郎ことレオンとして口説かれたり、あてがわれたらコロっと頷く自信がある。


 俺がシャルルやエンピアルに手を出していないのは、エンピアルは奴隷の主として様付けを止めないからだ。

 シャルルの事は俺が王族と深い関係になるというのをまだ拒否しているからかな。

 いかん、頭がぐるぐるする。

 1つ言えるのは、スキルの影響下で皆を彼女にしてしまったが、曖昧な態度がよくないのか?うーん。

 俺のどこが良いのかな?


 話をエナリスに戻さないとだけど、年齢的な事からと、俺のいた世界の倫理観がブレーキを掛けている旨を伝える等やんわり断り、無理に話題を替えた。


「先程の賊はどうされるのですか?」


「うむ。尋問の後処刑が妥当だろう」 


 俺は愕然となった。

 先程のスンバラシイ胸をじゃなく、あの若者を処刑台に送り込むのは忍びない。

 彼女には悲壮感があった。

 己より強い者に捕まり失敗した諦めもあったようだが、それにしても必死過ぎた。

 それにろくに訓練されていない。


 痛みに耐えられなさ過ぎた。

 違和感から俺は少し考えてみる。


「王様、あの2人の事を一旦俺に預けてくれませんか?どうも気になるんです」


「我らの命を救い、賊を捕まえたのも勇者様。分かりました。今この場で尋問なさいますか?」


「ああ。頼む。処刑しちゃあ駄目だと心の中で警笛がなるんです。それにエナリス様と似たような年齢で、ろくに訓練をされていないのが引っ掛かるんです」


 国王は頷き、部下に指示をした。


 賊が連れてこられるまで、この国に高校生は誰がいるのか説明を受けていた。


 そして連れてこられた者を見据えるが、あれ?と思う。なんでこいつら俺の奴隷なんだ?と。


 タイラップを切断してから男の目出し帽を取り、女の方も目出し帽を脱がせたり頭に被っていた物を取るとアイリーンが叫んだ。


「なんで朋ちゃんがいるの?なんて事を!」  


 そう、この女の子、みっちゃんと同じようにロリ系の顔立ちをしており、15歳位と思うも、胸がすんばらしかった事に違和感が有ったが、なるほどと思う。

 俺は助けるべき高校生に拷問じみた事をしたのだ。血の気が引く・・・


 そして国王達はアイリーンの言葉から、捕らえた賊のうち少なくとも1人は召喚された勇者だと分かり、唖然とするのであった。

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