第143話 グリード・ラルク・ハンニバール公爵

 ロンベルの父親は我が物顔だった。


「シャルルよ、確かに剣聖殿とクマーシャルから異世界人を連れてきたようだが、まさか儂に対してそれだけではなかろうな?」


 俺は手を上げてシャルルに代わり話をする。


「えっと、確認だが、あんたがロンベルという者の父親の公爵だよな?自己紹介していないから何と言えばよいか分からん。それと俺は異世界人だが、あんたが捕らえている奴とは同じ国の出身者だと言う以外面識もないから生き死にについてはどうとも思わない。ミス・シャルルが俺のパーティーメンバーのニーナの友人で、そのニーナを頼ってきたからこうやって遠路はるばるやってきたんだ。もっともあんたが捕らえている奴を不問にして開放すると即決するだけの物を用意しているよ。断言しても良いが、間違いなく飛び付く代物だ」


 「ほう。貴様が剣聖の飼い主か。まさか剣聖が人に従うとは思わなんだ。確か師匠以外の者に従わんと聞いていたが、なるほど、見た目と違い肝が座っておるようだな。確かに儂も貴様達の名前が分からぬな。良かろう、その贈物次第だが、貴様の度胸に免じて名乗ってやる。儂がロンベルの父親たるグリード・ラルク・ハンニバール、つまり公爵様だ!」


 そこからもう一度名前のみの自己紹介をした。


 ロンベルの父親はハンニバール公爵家の当主で、爵位を示すのがラルクらしい。で、グリードというのが個人名だ。

 そしてシャルルが耳打ちした。公爵様か嫌ならグリードさんと呼ぶようにと。


「で、グリードさん、俺は長々とやり取りするのは性に合わないんで、駆け引きなしに短期で話をつけたい。俺の体面的に、アイツラを生きて俺の妻達に再会させてやりたい。それと1度クマーシャルの魔法学校とやらに通わせて、きちんと力を付けさせ、その後サルベル国に戻したい。グリードさんも体面的にニーナによるハンニバール公爵家に対する指導を必要とし、異世界人たる俺達から異世界からの恩恵を得たい。その内容次第で妥協して開放するとの認識で良いか?」


「分かっておるではないか。勿論だ。で、レオンと言ったな。その口振りから儂を唸らせるような物を持っておるのであろうな?」


「勿論だ。その前に確認だが、グリードさんは現実問題としてもう子供を、特に男子を増やすと跡目問題がややこしくなると聞いているが、中々女遊びを止められず、身籠った女を無理に堕胎させていて、気に入った妾をそれで死なせてしまったと聞く。因みにこの世界にまともな避妊具はないのか?」


 避妊具について公爵に話す事について女性陣に告知をしていて、かなり恥ずかしいぞと言ってある。


「使ったが破れてな。子種が漏れる事が多いのだよ。その口振りと話の内容だと、ひょっとして異世界の避妊具でもあるのか?」


 早速公爵が話に乗ってきた。


「流石だな。察しが良くて話が早い。勿論異世界の避妊具の話だ。俺の提案というか、贈り物は異世界の避妊具だ!どれほど優れているか今実演するから、まあ見てな。悪い話じゃないぞ!」


 俺は鞄から男性器に見立てたソーセージとコンドームを出して、ソーセージに被せた。ソーセージは後ろに串を刺している。


 公爵を始め、男性陣は皆目を丸くしていた。


「流石に貴婦人方がいるこの場でご開帳という訳にはいかないから、プレゼン用に料理人に作らせたのさ。まあ、触ってみな。それとほら、この通りだ!」


 俺はじゃぶじゃぶとコップの水をコンドームに入れ、水風船にした。それを公爵に渡した。


「こ、これは驚いた。これならば流石に身籠らんな!で、装着感は?」


「これから試したら良いだろう?この世界の避妊具とは段違いなはずだぜ。勿論気に入ってくれたら数年は使える数を渡すよ」


「それ程持っておるのか?貴様、いやレオン殿、儂はどうやら誤解しておった。このような素晴らしい物を用意しておるとは正直驚いた。分かった。ロンベルの件は不問にする。あやつはやりたい放題だったから罰が当たったのだろう。おい、アイツラをこの場に連れてくるのだ。勿論丁重に扱うのだぞ。で、レオン殿、如何ほどあるのか?それと今から使用方法を教えてくれぬか?悪いが見ていてアドバイスが欲しい。あいつなら人が見ていても股を開くでな」


「グリードさん、あんたも胆力が凄いな。普通は他の者が見ている前で女は抱けないぞ」


「そうだな、そういうレオン殿はやれるのか?やれそうだな。うむ。おい、1人用意して、ピーマスの所に連れてこさせろ。レオン殿、交渉成立だ。儂はそなたを気に入ったぞ。剣聖様は明日から指導を頼む。今日はゆっくり旅の疲れを癒やすのじゃぞ。シャルルよ、儂もそなたを誤解しておったようじゃ。何か困った事があれば儂がいつでも力になってやるからのう!大義だった!さあ、レオン殿、早速試しに行くぞ!」


 俺は半ば拉致られるようにその場から退出し、シャルル達に辛うじてサムズアップするのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る