第118話 後始末

 俺は急降下で1番体格の良い奴に向かって一気に接近し、背後から捕まえた。

 そしてそのまま反転し、急上昇して100m程上がっただろうか。


「何しやがる!離しやがれ!」


「分かったよ。お前が離せって言ったんだからな!」


 俺は言葉通りに奴を離した。


「ギャー!」


 絶叫が木霊する。


 俺は地面に激突する直前にキャッチし、もう1度上空に上がる。


「悪かった!悪かったって!」


「こっちの質問に答えろ。嘘を言ったら離すからな。お前達は道村さんのクラスメイトだな?」


「そうだ!そうだよ!答えるから、ちゃんと答えるから、頼むから落とさないでくれ!」


 頭の中にレジストした旨のアナウンスが入る。


「お前馬鹿か?俺にスキルは効かんぞ。皆を気絶させたのを使ったろ?もしも俺が気絶したら、俺諸共お前も落下して、2人共死ぬんだぞ」


「あっ!・・・」


「お前、俺の奴隷だと分かっているのか?」


「すんません!もうしません!もうしませんから許してください!」


「昨夜町で女性をレイプしていたのはお前達だな?と言うか、お前の能力を俺達に使ったろ?俺と道村さんが現れた時にお前達のスキルが効かなかったから、別のスキルを使って逃げただろ?」


「で、出来心なんです!もうしません!もうしません!もうしませんから!」


「信じられんが・・・未遂だったから、その事について今はまあいい。ここで何をしていた?俺達は賊に襲われたんだが、お前の仲間か?」


「知らねえよ。隣町に用事があって向かっていただけだ。お、女が寝ているから犯そうとしただけだ。命まで取るつもりはないんだ!楽しんだら開放するつもりだったんだ。道村がいたのは偶然だ」


「何をしに隣町に向かっていたんだ?」


「そこにいる奴隷商に会いに行く為だ」


「何をしにだ?」


「奴隷を買ってもらう事になっていて、奴隷商に会いに行くところだったんだ!」


「何か隠しているな?他にも用があるんだろ?」


「あんたの奴隷から開放して貰いに行くんだよ。王都の奴隷商には出来なかったんだ。その奴隷商の師匠なら出来るって聞いたんだ」


「なるほどな。もう一度聞くが、俺達を殺そうとした賊とお前らは関係ないんだな?」


「知らねえよ。本当に隣町に向かっていただけだって!」


「分かった。取り敢えず降りるから騒ぐなよ」


「助けてくれるのか!?ほんと悪かった!」


 残りの3人は固唾をのんで見守っていた、いや、想定外の出来事に動けずにいたのだ。


 俺は残り2m位で捕まえていた奴を落としてやった。


「ギャー!」


 短い悲鳴が上がるが、勿論打ち身程度のみで死ぬ事は無いはずだ。まあ、ガタイは良いから、暫くは打ち身で苦しい位で大した事は無いはずだ。


 地上に降りると、俺が捕えた奴と他に仲間の高校生が3人いたが、剣を出して身構えた。

 しかし、又もや何かをレジストした。


「無駄だ。俺にはお前らのスキルは効かんぞ。奴隷の主人として命じる。スキル使用を禁じる」

 4人は唖然としていた。

 

「ちょっとあんた達って5人組でしょ!沢谷はどうしたのよ?」


「っち、あいつ逃げやがったな」


「どう言う事だ?」


「あいつは後ろを見張っていたんだよ!今いないって事は、俺達を見捨てやがったんだ」


「まあいいや。それよりお前らはやり過ぎたようだ。お前らは奴隷として扱ってやる。取り敢えずこの子達を起こさないとだから、俺の半径30m以内で護衛をしろ」


 くそがと唸るが、奴隷紋がある為に逆らえない。先ずはニーナを起こした。彼女が一番強いからだ。

 みっちゃんは自身の本体を起こす。


 起きた者が別の者を起こし、俺は近い方の穴に取り掛かり、その中に気絶しているシャルルを引き出した。

 脚が折れているようなので、起こす前にニーナに治療を頼んだ。


 次にアイリーンを引きずり出したが、彼女も気絶しているが、足を挫いた程度で済んだようだ。

 みっちゃんに託し、取り敢えず後方の道を塞いでいる木を収納に入れ、通れるようにした。


 アウィンを俺の護衛として崖の上の死体の検分だ。エンピアルも行くというので、エンピアル、アウィン、俺の3人で抱き合う形で飛んでいく。


 全部で5人おり、全て潰れていて原型を、つまり人の形を保っている死体はない。


 回収する物だけ回収し、下に降りた。

 次にニーナや護衛が倒した賊の持ち物やカード、死体等を回収していった。


 俺がそうやって死体を回収したりして街道を通れるようにしている間に、ニーナが怪我人を治療してくれていた。

 また、捕えた唯一の賊は取り敢えず縛り上げ、先ずは4人の男子高校生に対して今後の事について命令や指示を出すのであった。


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