第113話 新生レオーネの初戦闘

 前方にオークの群れが見え、向こうもこちらに気が付いたようで、距離が縮まりつつある事が分かった。


 さてどうするかな?と考えるが、前方の魔物に対し護衛の2パーティーが対応し、後方をレオーネが守る。

 数が多いので、実際は俺達は討ち漏らしの為にいる。まあ、何体かはすり抜けて来るだろう。


 流石に戦闘奴隷として売りに出されていただけあり、オーク程度に遅れを取る事もなく、一方的に殲滅していく。

 3匹のみすり抜けてきたが、アウィンがエストックであっさり額を突き、ほぼ瞬殺で始末した。

 俺達はほぼ何もする事もなく、皆の戦闘振りを見守り、戦力評価が出来た。


 アウィンは男装の似合うきりっとした女騎士だけあり、見惚れそうな程格好良かった。俺はいざとなればアイリーンとシャルルを上空に逃がすつもりだったが、それは杞憂に終わった。


 俺はこれなら安心と安堵した。

 実際はニーナには護衛達が危ないと判断した時は、迷わずに介入しろと言ってあった。

 ただ、皆の実際の戦い振りを見たく、やばくなるまでは馬車の護衛のみをお願いした。

 突撃したくてウズウズしていたようだが、それをしない理由を伝え、納得してくれた。


 実はアイリーンは俺の背中に数分ならしがみつける。スカートだったから俺の脚に足を絡めるのが恥ずかしくて出来なかったのだ。スボンや見せパンを履けば出来る事が分かっているので、今飛ぶとしたらシャルルをお姫様抱っこ、アイリーンは俺の背中にしがみつく感じになる。


 また、俺に高所作業用の安全帯であるフルハーネスを渡してきたので、俺はそれを装着した。アイリーンも装着しており、ハーネス同士を付属の安全ロープをお互いに引っ掛けて落下を免れるようにした。


 馬車の中でアイリーンにハーネスを渡されたが、それで漸く彼女のスキルが分かった。

 地球で売っている商品を魔石やお金と引き換えに買えるのだ。

 それを聞いた時に閃き、どういった物が必要かを話し、色々な物をポチって貰おうと考えていた。


 そうそう、この前城で使ったアーチェリーも、咄嗟にポチっただけだと判明。


 魔石を回収し、再び馬車は進み出した。

 暫くすると、シャルルが何かを時折胸元から出して大事そうにしていたのが気になったが、どうやらエチケットブラシのようだ。

 俺の視線に気が付いたのか、アイリーンが質問した。


「シャルル、それってエチケットブラシよね?この世界にもあるんだ!?」


「いえ。これはさくらから頂いた貴重な品です。この鏡は素晴らしいのです。もっと大きい鏡を持っているからと、友情の証としてこのような貴重な品を譲ってくれたのです。会ってからまだ日が浅いですが、さくらは私にとってとても大事な友人なのです。ですから私はさくら達を助けたいのです」


「あのう、高々エチケットブラシに付いている小さな鏡ですよ?それほど感謝する物なのですか?」


「アイリーンはこの世界の事を知らないのですね。さくらも同じような事を言っていましたが、このような鏡を見たのは王妃様の私室でしかありません。しかもこれの半分程の鏡しか見た事が有りません。アイリーンが今持っているその鏡だと、館が建ちますよ。普通は金属を研磨した物となります。庶民は桶に張った水面に映る姿しか見た事が無いと思います」


 アイリーンは手鏡をシャルルに握らせた。


「これなら安いので私の、いくらでもスキルで買えますよ。良かったらもっと大きいのをあげますよ」


 そうやって渡された鏡で自分の顔を見て驚いていた。


「有り難いのですが、私には既にさくらから頂いた鏡がありますから」


「じゃあ、さくらちゃんからのは、普段懐に忍ばせて持ち歩く用にして、これはこれでお部屋に置いて置くようにすれば良いのよ。それと、もう1つ渡すので、売って他の子達の生活費の足しにでもして下さい」


「はい。大事に使いますね。お金には困っていませんから、政治的な駆け引きに使うようにします。勿論さくら達の為にだけ使います。そうですね、さくら達を処罰しようとしている公爵家の当主の奥方に、彼女達の身の安全と引き換えに鏡を渡すからと、公爵を説得できればあるいは?・・・」  


 シャルルの話は、最後は思案しているその内容が口に出ていた。


 俺は今の会話や屋敷の事についてふと思った。鏡を売れば相当儲かると。一度ラフトに相談するとして、アイリーンの感覚のズレを修正しないとだ。


「アイリーン、鏡の事はさくらと言う子がシャルルに渡した事を無下にしないようにね。それと、アイリーンのスキルは今知っている者以外には絶対に言わないように。混乱するからな。それと、俺も欲しい物があるから、ポチってもらっても良い?」


「うん。勿論よ。何が欲しいの?」


 俺はアイリーンに捕まっているさくらという子とその仲間を助ける切札について、話し始めるのであった。

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