第90話 再会とvs?みっちゃん

 1人の少女がアイリーンに飛び付いたのにはイデアも驚いていたが、後から入ってきた者のうち女性達は【あちゃぁ~】といった感じで額に手をやる者、呆気にとられた者もいた。


「ヒィィィ!」


 後ろから抱き着かれたのと、驚きから後ろに体が反れ、やがて倒れた。


「いったー」


 飛び付いた少女が呻く。


 2人はいたたたたと唸りながら起き上がったが、アイリーンに抱き着き、胸に顔を埋めた。


「瑞希だ!瑞希だよ!ゔえええ

 ん!」


「うん。みっちゃん!瑞希だよ!みんな無事で良かった!」


 だが、アイリーンは最初こそ不意打ちで戸惑っていたが、それが誰なのかが分かってからは抱き合っていた。


 アイリーンはそっと抱きしめてあげた。そして涙が頬を伝う。


 この子見覚えがある。確か、俺にどうやって生きろと言うんですかと聞いてきた子だ。


 再会を果たした美少女の抱擁だ。尊すぎる!


 急ぎスマホを出してパシャリ。


 コホン。


 しかし、途中から様子が変わった。


「クンスカクンスカ、ああ、相変わらずたまらん」


 アイリーンの胸に顔をぐりぐりし始めたのだ。羨ましい、じゃなくてけしからん!


 俺はひょいっと首根っこを掴んで後ろに放り投げた。アイリーンは困った顔をしていたが、よくある事?女の子同士のじゃれ合いだったようだ。


「こら!女の子には優しくしろって言われなかった!そんなだと・・・ヒャい!」


 俺はデコピンをくれてやった。


「お前、あれは俺のだ。羨まじゃなく、けしからん事をしおって!アイリーンが困った顔をしているじゃないか!」


「ちょっと?本音がだだ漏れよ。それにアイリーンって誰よ?」


 俺はアイリーンの肩を抱き寄せた。


「この子だ」


「何しれっと肩を抱いているのよ!私の瑞希から離れなさい!それに俺のって何なのよ!」


 2人共【キー!】となっていた。


「ハイハイ。それまで。この子は道村さんコトみっちゃん。それと入り口にいる6人はクラスメイト。みっちゃん、この人が皆を助けてくれたレオンよ。さあ席に着こうよ」


 食事をしながら俺達と、道村さんことみっちゃん達とこれまでの経緯等を話していた。


 みっちゃん達はこの2日間冒険者ギルドにて初心者講習というのを受けていたと。

 そこで困ったのは、パーティーをどうするかだ。


 俺は知らなかったが、パーティーは6人が上限。7人以上でも一緒に行動は出来るが、パーティー編成ができず、魔物を倒したりした時に得られる経験値は、パーティー員にのみに人数割で入る制約があるのだ。


 食事も終わる頃、イデアさんがある提案をしてきた。


「見ての通り、私の所に来たのは7人。パーティーを組むのに1人多いのです。そこで提案ですが、1人をレオンさんのパーティーに入れる事は出来ませんか?」


 すると7人のうち6人がみっちゃんを見た。この6人は男女でペアになっているようだが、付き合い出した直後の初々しいカップルのそれに見えた。なるほどと。


「勿論みっちゃんが来るんだよね?」


 道村さんは俺の方を見る。


 俺が嫌そうな顔をした。


「レオン様!どうか瑞希の親友の私を仲間にしてください!」


 手を取りうるうるして頼んできた。先程の事はともかく、この子も中々可愛らしい顔をしているので、手を握られ少しどきりとした。


 いや、口を開かなければ物凄く愛らしい。


「お、おう。わ、分かったよ。ただ、良いのか?俺達はこれから色々な国を回る事になるんだぞ」


 みっちゃんは頷く。


「ニーナはどうだ?」


「パーティーリーダーはお前なんだからアタイに聞くなよ。レオンが受け入れたらアタイも受け入れるぜ」


 そしてアイリーンはというと、道村さんとハイタッチをするのであった。

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